短編2
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尋ね人

ある時期、近所に貼り紙が大量に貼られた時期があった。

道路脇の電柱。

通りに面した住宅の壁。

公園の遊具。

ありとあらゆる場所にびっしりと、まったく同じ内容の紙が。

いわゆる《尋ね人》……行方不明者捜索の内容で、フォントの書体や写真もなく、すべて手書きをコピーしたもの。

それも足で書いたような金釘文字で、読解が非常に難しい。《さが×して××いま×っす》というような文字が一際大きく書かれているから、辛うじて尋ね人だと判るんだ。

何よりも目を引くのは、捜索の対象者と思われる人物のイラスト。

彼あるいは彼女は手も足もなく、楕円に頭だけがくっついている姿。

顔以外の線は細くて歪んでいて適当なのに、顔だけが陰影を用いたりしてやけにリアルに描かれていた。

けれども、人間のそれじゃない。

眼には瞳がなく、口が裂けているように大きい。

舌だけはなぜか緑色で着色されているから、それがカラーコピーだと判る。

横にずらずらと並んだ文字は読めなかった。

警察や自治体の連中総動員で剥がして、自分も手伝わされたんだ。大容量のごみ袋が十以上にもなった。

そのときは頭のおかしいイタズラだろうということで済まされた。

けれども、二日後。

また貼り紙は現れた。まったく同じ文面とイラスト、緑の舌の怪物の尋ね人。

また剥がして回収したんだけど、今度は全部の紙の裏側に

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《はがさないでさがしてはがさないでさがしてみていますみていますはがさないではがさないではがさないではがさないでさがしてさがしてはがさないではがさないではがさないではがさないではがさないで》

と延々と改行も無しに、裏面が真っ黒に見えるほど並んでるんだ。

何が厭かって、すべての文章の隆起が微妙に違っていたこと。

よく注意して見てみれば、表側の尋ね人のイラストも本当に細部が、言われなければ気がつかない程度に違ってたんだ。

コピーじゃない。

でも解読不能な文章の筆跡からして同一人物のもの、一人で延々と書いたに違いないんだ。

それが、今度はごみ袋二十になった。

それからは貼り紙はなくなったけど、彼あるいは彼女は見つかったのだろうか?

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たまに夜、近所を歩くのが怖い。

Concrete
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