短編2
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自販機の間に

夜、近所をランニングしている。

自宅から200メートルほどの曲がり角に2台並列した自動販売機があるんだけど、ある日そこを通過したときに違和感を覚えた。

自販機と自販機の間の隙間に、顔があった。

それは顔というより、うすぼんやりとした小さな楕円形といったほうが正しい。目鼻のある場所が黒い空洞になっているだけの、面のような白い顔。

それがふたつ。縦に並んだ状態で、暗い隙間からこっちを見ていたんだ。

しかも、おれが気づいた瞬間に笑ったんだよ。

暗い空洞なだけの口が大きく開いて。

薄気味悪くて逃げるように速度を上げて走り抜けたんだけど、帰宅してから落ち着いて考えたらやっぱりそんなはずないよ。

ひとが入れるような隙間じゃないし、灯りの少ない道だから何かと見間違えたんだろう。

次の日、明るいうちに自動販売機の隙間を確認した。

そこにはオバケが……ということはなかったけど、空き缶が落ちていた。

いや、落ちていたというより、並べられていた。

それも二つ。

相当に古いのか外側は錆びだらけ、飲料の種類も判らない。

プルトップは外れていて、知っての通りあの飲み口部分、少しひとの顔っぽいんだよね。

昨日の顔に、似てるんだ。ちょうどあんな感じなの。

ちょっぴり気味が悪くて、ふたつとも空きカン用のゴミ箱に入れた。

その日の夜もランニングはした。

出発は自販機とは別ルートを使ったけど、戻ってくるときには変な好奇心が働いて、自販機の前を通ったんだ。

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隙間に顔はなかった。

でも、少し考えてゴミ箱の縦に並んだ投入口のほうに視線がいって……

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そこにも、異変はなかった。

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やっぱり見間違いだったんだと。

ラストスパート。

家に全速力で走っていったら、おれの部屋のカーテンに少し隙間が出来ていて。

灯りの消えたおれの部屋からあの顔が覗いてた。

黒い空洞の目鼻が、縦にふたつ。

笑ってるみたいに口が大きく開いて、それから横にぎゅっと延びた。

Concrete
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