中編3
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ドライブレコーダー

20XX年9月X日、N県のダムに1台の乗用車が転落し、中に乗っていた男女3人が死体で発見された。

この事件を操作していたN県警察本部P警察署では、深夜にキャンプ地に向かっていた同車両が、林道で道に迷い、工事中で未完成の道路を直進し、そのまま真っすぐにダムに転落していた。深夜で暗かったこと、ブレーキ痕がなかったこと、特に三人に目立った外傷等がないこと、自殺する動機もなかったことから、同県警察本部では道に迷った同車両が誤って転落したものと見て捜査を進めている。

P警察署の交通捜査係室内。A巡査部長は回収されたドライブレコーダーの画像を見ていた。

ドライブレコーダーには暗闇の林の中、車が直進し、突如として前に傾いて転落する様子が記録されていた。

暗くて、道が途切れているのがわからなかったんだろう。音声がないから詳細はわからないけど、特に車内で変わったことが起こった様子ない。

「こりゃ事故だな」

Aは独り言のように言った。

「ん?」

気になって、Aは画像を巻き戻した。落ちる寸前、画面がさっと白くなった瞬間があった。

ノイズかな?

Aは更に検証するべく、コーヒーを入れ、深夜の警察署でレコーダーの画像を見続けた。

1時間ほどドライブレコーダーを巻き戻す。

午後9時頃、繁華街のスーパーに一旦駐車する。全員で買い出しをしたのだろう。買い物を済ませた被害者の一人がレコーダーに写っていた。にこやかな表情まで見て取れる。この買物をした食料品などは車のトランクに入ったままだった。

車は発車し、K山へのルートを取る。

しばらくすると、街を抜け、住宅も抜けた。いつの間にか林道に入る。まだ舗装はされているが、次第に対向車もいなくなり、道も細くなった。

キャンプ場の入り口を示す看板のある道を入ると、いよいよ簡易舗装の簡素な道が続く。

車は若干揺れているようだった。

ここで、急ブレーキをかけた。

目の前をイヌがよぎったのだ。イヌはこちらを見る。両眼がヘッドライトの光を反射して光る様子はこの世の生き物ではないかのような印象すら覚える。

車は再び発進した。

しばらく進むと、道が二股に分かれていた。車はここで一旦停止した。

どうやらウィンドウを開けているようだが、特に車から誰かが降りている様子もない。

数分すると、ウィンドウは閉じられ、車が走り出した。道を右に進む。

「ここが本当は左だったんだがな・・・」

ドライブレコーダーには右手の道にかかっている「工事中 進入禁止」との看板が写っている。

これが運転手には視えなかったらしい。一旦止まってまで確かめたのに、なぜ?

このあとは、先程見たとおり、そのまま車は冷たい水に突っ込むことになる。

Aは一旦ビデオを止め、巻き戻し、落ちる瞬間をまた流した。全く速度を緩める気配がない。

おかしい・・・

道の先は暗いは暗いのだが、ヤブがある。ヘッドライトでヤブが照らされている。視えないはずがない。

誤って落ちたとしても、ハンドルを切るなり、ブレーキを踏むなりしても良いのに、全くその気配がない。

もう一度見る。やはり同じだった。

ふと、気になって、今度はスロー再生にしてみた。ヤブに突っ込む瞬間、白い影がよぎる。

そこで更に遅くする。

「あ・・・」

Aの手は止まり、震えだした。

そこには画面いっぱいに目が黒く落ち窪んだ女性が笑っている顔が映されていた。

まるで、彼らが死ぬのを喜ぶかのように。

Concrete
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