ろっこめ版『よくわかる古事記』⑮

中編7
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ろっこめ版『よくわかる古事記』⑮

『ヤマトタケル』

~何かと強すぎたスーパーヒーロー~

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第十二代景行天皇(けいこうてんのう)には、オオウスとヲウス(またの名をヤマトオグナ)という息子たちがいました。

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ある日、長男オオウスが景行天皇の新しい仔猫ちゃん(何番目かの妻)を自分のモノにし、替え玉に差し替えたので、

ちょっと困った景行天皇は次男のヲウスに

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「かなわんなぁ……ちょっとオオウスにお灸据えたって」

と、お願いします。

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「りょ!」

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父親の命を受けたヲウスは、その強すぎる使命感を振りかざし、

実の兄オオウスをトイレ前で捕まえて押し潰してから四肢を切り落とし、

薦(こも=粗く編んだムシロ)にくるんで崖からポイして殺しました。

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こんな人が学級委員だったら、生きて学校を卒業できそうにありません。

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血も涙もないヲウスの所業に、父親である景行天皇も

「コイツ、ヤベェ!!」

と血の気が引きました。

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やることがジェイソン過ぎる息子が怖すぎて、とても近くに置いておけない景行天皇は、

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「九州の熊曾建(くまそたける=熊曾の国の強いヤツという意味で人名ではない)っちゅう兄弟が、ボク朕の言うこと聞かへんから、ちょっとシバキに行ったって!」

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と、かなりの無茶ぶりをしましたが、ヲウスは二つ返事で九州へ出撃しました。

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ヲウスは九州に向かう際、熊曾建討伐の報告がてら、伊勢にいる叔母を訪ねます。

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当時のヲウスはまだ十代です。

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もしかしたら死ぬかもしれないと思い、顔だけでも見せておきたかったのかも知れません。

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「父上に『熊曾のガキ共にキャーン言わしたってくれ』言われたさかい、

ちょっくら行ってどついて来ますわ!」

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それを聞いた叔母は、

「じゃあ、いいものをあげよう!

女もんの服ー!テッテレー♪(CV:水田わさび)」

と、ヲウスに女性用の着物をあげました。

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何で女物の衣装をくれたのかまでは書いていませんが、何かしらの作戦も授けていたと思われます。

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ヲウスが九州の熊曾建ブラザーズの所に着くと、ちょうどアジトの新築祝いの真っ最中でした。

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これ幸いと、ヲウスは結っていた髪をほどき、

叔母えもんからもらったコスチュームに着替えてロリ少女に化けると、

上手い具合に熊曾兄のそばへ潜入します。

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気分よく酔いが回り、男の娘にだらしなく鼻の下を伸ばしている熊曾兄に、

ヲウスは突如として女装を解いて斬りかかり、

油断しまくりの熊曾兄を見事に討ち取りました。

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そのままの流れで熊曾弟に剣の切っ先を向け、

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「ワイは倭を治める景行天皇の皇子、ヲウス!またの名をヤマトオグナや!!

冥土の土産に、この名前だけでも覚えて逝きさらせ!!(キリッ)」

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と勇ましく自己紹介すると、すっかりビビった熊曾弟は

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「ここより西にゃあ、俺らより強かもんは、おりもはんかった……。

ばってん、東にゃあ、こげなとんでもなか男がおったとね……。

これからは、俺らが呼ばれとったタケルって名前ば使こうてもよかとよ!」

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とタケル使用の許可を出した後、

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ヲウス「言いたいことはそれだけか?

タケルのトコ以外は何言ってるかサッパリわからんかったがな!!」

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と、無事ぶち殺されました。

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華麗なる騙し討ちで目的を果たしたヲウスは、

ここで名前をヤマトタケルと改名し、

お家に帰る道中にいた山の神や川の神、

さらには穴戸の神(あなどのかみ=瀬戸内海の神)までをも、ついでに手にかけちゃいます。

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さらに、立ち寄った出雲国では、ちょっとだけ仲良くなった出雲建(いずもたける)に、

「君の剣、カッコよろしいなぁ……ちょっと交換して手合わせオネシャス!」

と剣を交換し、チャンバラ勝負をしますが、

自分が渡した剣は木で作ったパチもんで、

出雲建は為す術もなく、あっさりバッサリいかれました。

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その時のことを

「出雲のタケルの剣は見た感じはイカしてたけど、刃がないとかカワイソス」

的な歌にしていますが、刃がなかったのは、オマエのせいです。

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父親に褒められたい一心とは言え、

オーダーにないオマケの方が多い名古屋のモーニングみたいなバーサーカープリンスこと、ヤマトタケルに景行天皇はさらにドン引きします。

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何となく気持ちはわからなくもありません。

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そこで、景行天皇は凱旋して間もないヤマトタケルに

「東の方もよろしゅう!」

と休む暇も与えることなく、次のミッションを与えました。

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その際に比比羅木之八尋矛(ひひらぎのやひろほこ)が授与されますが、

これは武器ではなく、権力者として認める証の役割のようです。

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ヤマトタケルは文句も言わずに了承すると、また伊勢の叔母えもんに会いに行きます。

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ヤマトタケルは叔母えもんに、

「父上は、ワイに死んでもらいたいんやろか……」

と嘆きます。

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そんなヤマトタケルを見かねて、叔母えもんは天叢雲剣(あまのむらくものつるぎ=やまたのおろちから採れた剣)と御守り袋を授け、

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「ピンチの時に開けるといいよ♪

うーふーふーふーふー(ダミ声)」

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と送り出しました。

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東国への道中の尾張国で、ヤマトタケルは美しい女性ミヤズヒメに一目惚れし、

「この戦争が終わったら結婚しよう」

と、不穏なフラグを建てながら、ヤマトタケルは相模(さがみ=神奈川県あたり)へ進軍します。

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相模への道中、ヤマトタケルは蛮族に騙されて焼き討ちに遭いますが、

慌てず騒がず叔母えもんからもらった御守り袋を開けました。

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そこに入っていたのは火打ち石です。

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ヤマトタケルは天叢雲剣で周囲の草を薙いで火を退けると、

そのまま相模の蛮族たちを一匹残らず駆逐し、

その死体に火打ち石で火を点けてコンガリ焼いてしまいました。

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ついでのクセがイカついですが、そういう子です。

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これがきっかけで、天叢雲剣を草薙剣(くさなぎのつるぎ)、その場所を焼津(やいづ)と呼ぶようになったそうです。

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そして、相模から上総(かずさ=千葉県あたり)へと船で渡る時、

海は物をねだる3歳児よりも荒ぶっていました。

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そこの海の神のせいです。

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それを鎮めるために、ヤマトタケルの妻オトタチバナヒメは、

愛する夫のためにと、その身を海へと投じます。

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その犠牲のおかげでしょう。

荒れ狂っていた海は、おなかいっぱいでスヤスヤ眠る赤子のように穏やかになりました。

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伴侶の一人を失い、悲しみに暮れたヤマトタケルはその場に残り、

妻を想って泣きじゃくります。

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そんな日を7日も続けていると、妻の形見のくしが対岸に流れ着いたのを見つけたヤマトタケルは、

そこに妻の御陵(ごりょう=皇族のお墓)を建てて丁重に弔うと、気持ちを新たに進軍を開始しました。

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最愛の妻を失った腹いせの如く、ここからヤマトタケルの八つ当たり殺戮ショーが繰り広げられます。

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そのとばっちりは筆舌しがたく、

足柄坂(あしがらざか=神奈川と静岡と県境あたり)にいた白い鹿の神に至っては、

その辺に生えていた葱(ネギ)のようなものでシバキ殺されてしまうといった始末です。

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ネギでの撲殺は、日本の歴史上これだけだと思います。

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悪鬼羅刹の快進撃で父親のミッションをこなしたヤマトタケルは、尾張国で結婚の約束をしたミヤズヒメの所に行きます。

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そして、あれほど悲しんだオトタチバナヒメの死は何処に落としてきたのか、

すぐにミヤズヒメとハッスルタイムを迎えようとしますが、

運悪くミヤズヒメはちょうど月の使者の御降臨(生理)の真っ只中でした。

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それを残念に思い、

「天の香具山を飛ぶ白鳥のような、か細い君のその腕を引き寄せて抱きたいけれど、

その着物の裾から月(経血)が見えているね」

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という、いかにもシャレオツな和歌を詠みますが、

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要するに

『おせっせしたいけど、血が出てるから致せなくて残念だ』

という歌です。

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そんな粋を装ったドシモネタの和歌に、ミヤズヒメも答えます。

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「高く光り輝く太陽の皇子であり、あちこちの国を制圧したバチクソ強い貴方……。

えぇ、そうですとも。

こんなにも貴方の帰りを待ちわびたんですから、

新しく年を迎えるように、

私の着物に月が出るのも当然です」

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という感じの、愛しい人の帰りをけなげに待っていた慎ましい女風な歌ですが、

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結局のところ、

『そっちが気にせんかったら、こっちは別にかまへんよ?』

的なことを遠回しに言っただけです。

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無事にミヤズヒメとマッスルドッキングを果たしたヤマトタケルは、

自分の強さに慢心したのか、はたまた新しい嫁さんにイイトコ見せようとしたのか、

「伊吹山の神なんか、ワンパンやで!」

とイキり、草薙剣をミヤズヒメに預け、丸腰で伊吹山へ向かいました。

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以前に鹿を葱チックなもので殺れた実績もあったのかも知れません。

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ヤマトタケルは伊吹山登山を開始した矢先、バッファロークラスの白い大猪を発見しますが、

「あの猪は、ここの山の神をぶちのめした後で、鍋にでもして食うたろ!!」

と、スルーしました。

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しかし、見た目ほぼオッコトヌシのこの猪こそが、伊吹山の神の正体だったのです。

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これには伊吹山の神も、猪だけにブーイングしたかも知れません。

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神としてのプライドを踏みにじられ、怒り心頭に発したオッコトヌシ激似の神様は、

感動VTRを見た徳光さんの涙をも超える激しい大氷雨を降らせました。

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突然の氷雨に見舞われたヤマトタケルは、

視界を奪われて道に迷った挙げ句、山から滑落して失神します。

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しばらくして意識が戻ったヤマトタケルでしたが、

滑落で大ケガを負ってしまったため、

伊吹山の神討伐を断腸の思いで断念し、山を降りて故郷へ帰ろうとします。

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ですが、思いのほか傷は深く、途中で病気にまでかかってしまい、

三重村(みえむら=伊勢の近く)と呼ばれる場所のあたりでは、

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「ワイの足、腫れたフォルムが、かがみもち」

みたいな自虐の和歌を歌い上げたりします。

だいぶメンタルがやられてたのでしょう。

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そして、能煩野(のぼの=今の三重県あたり)で力尽き、故郷の地を踏むことは出来ず、

短くも波乱に満ちた30年の生涯を終えました。

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その後、ヤマトタケルの魂は白鳥となって、天へと昇ったのだそうです。

続く?

Concrete
コメント怖い
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天叢雲剣って草薙剣につながってるんだ( *゚A゚)
色々勉強になるなぁφ(^Д^ )

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なんかヤマトタケル、イメージと違うぅ〜↘︎↘︎↘︎
ってか
神様のイメージも違うぅ ( i _ i )

ろっこめさまの「たぶんこうだったんじゃないか劇場」はメッチャ面白いけど、
こーゆーご先祖の天皇家って ‥ どーよ?

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