魔法のランプを見つけた。
間違いない。重さ、大きさ、そして細部の彫刻にいたるまで、十六世紀に書かれた本の説明と一致している。
アラビアで見つけた、この魔法のランプを、俺は日本に持ち帰った。そして、ランプを擦って魔人を呼び出した。
その擦り方は独特で、右掌を軽く内側に曲げ、そこに親指を添えて輪っかを作り、その輪っかの中にランプの注ぎ口を通して、しこしこと前後に動かすのである。
伝承の通り、青い肌をした巨漢が現れた。
「私を呼んだのは、お前か。何が望みだ?」
「日本の一万円札を百万枚お願いします。勿論、番号は全部違えて下さい」
俺は言った。
「叶えよう。ただし、出そうで出ないの責苦を、三十日間、耐えてもらうぞ」
「出そうで出ないの責苦? それは一体、何でしょう……?」
「質問は受け付けん。責苦に耐えられなくなったときには、もう一度、私を呼ぶことだ。すぐに解いてやる。その代わり、望みを叶えることは出来んぞ」
そう言って魔人は消えた。
出そうで出ないの責苦とは、一体、何だろう……? 魔人は悪魔のような性悪ではない。どちらかといえば善人なのだ。耐えられなくなったときには解いてくれるそうだし、きっと大丈夫だ。
あ。くしゃみが出そうだ。と、思ったが出ない。
ひょっとして、これが出そうで出ないの責苦なのか?
小便がしたくなってトイレに入った。──出ない。
出そうで出ないの責苦の正体が分かったような気がする。
責苦に耐えられなくなったのは、魔人を呼び出した四日後だった。
もう膀胱が破裂しそうだ。大の方も大変なことになっている。
このままでは死んでしまう。金は、あきらめよう。
が、
ランプを擦っても、魔人が出そうで出ない……。
作者いも
お待たせいたしました、お待たせし過ぎたかもしれません。