短編2
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あり地獄

景色が一瞬真っ赤に染まり、とつぜん僕の前を歩いていた人がズブズブと地面に呑み込まれはじめた。

その際、周りは時間が止まったように静まり返り、人も動物も動くことはなく草木がそよぐ事もない。ズブズブ、ズブズブ、まるでアスファルトがゴムのようで、そこへ人が呑み込まれていく。

もちろん呑み込まれている人は必死で手をバタつかせて、このあり地獄のような穴から抜け出そうともがくけれど、僕が今まで見てきた中で助かった人は一人もいない。

静まり返った世界に彼の絶叫だけが響く。もう胸まできてる。かわいそうだけどこの人はあと数十秒でこの世から消える…

もちろん、助けてあげたい気持ちはあるのだけれど、僕も周りと同じように動けないのでそれは無理だ。

この人は高齢の人だけど、若い人の場合もある。男性、女性、悪そうな人から真面目そうな人まで。

「増えすぎた人間が淘汰されている。」

小さい頃から時折見てきたこの現象を、自分なりに考えた結果、僕はこの考えに行き着いた。

なぜかと言うと、ただ姿が消えるのではなく、人々の記憶からも消えるからだ。中学の時、一緒に歩いていた友人がとつぜん呑み込まれた。小さい頃から仲の良い奴だったから僕は泣いて皆んなに助けを求めたけれど、僕の友人はもともと存在していない事になっていた。

そいつは悪いやつじゃない。いたって真面目で虫も殺せない優しいやつだった。僕はいったいどんな基準で淘汰されたのかを考えた。誰にも相談できない中、おそらく友人がこのまま生きていれば、良くない未来が待っている可能性があるのでは?というターミネーター的な結論にいたった。

もっと消されてもいい人間なんて山ほどいるのに。僕は僕だけに与えられたこの能力に始めのうちは苦しんだけれど、もう慣れてしまった。僕もいつかはあの穴に呑み込まれる日が来るのだろうか?

でも、これ以上僕の大切な家族や友人が呑み込まれて苦しむくらいなら、神様、どうぞ僕を先にこの世から消してください。

Concrete
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