中編4
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初詣の授かりもの

これは今年の初詣で体験したことです。

私達家族は地元の神社でいつものように去年の古い御守りをお返しして、新しい御守りやお神酒をいただき、新年のご祈祷を受けたりしました。

やるべきことを終え、お社から出て帰ろうとしていると、最近自分の言葉でしゃべり始めた娘がお社の上の方を指さして声をあげました。

「おふねにのったひとがキラキラをなげてるよ」

娘の話を詳しく聞いてみると、お社の上で空に浮かぶ船から私達に光るものを投げている人がいるというのです。

娘はいままでも神社などに参拝したときに誰もいない方に向かって手を振るときがあり、何か私には見えないものが見えているのかなと感じることがありました。

船というのはもしかすると宝船のようなものなのかなと思い、娘にその様子を詳しく聞いてみました。

すると、その船に乗っている人、おそらくはこの神社のお稲荷様と思われたのですが、色々なお宝をばら撒いているのではなく、参拝している一人一人に向かって投じて、それが身体の中に溶けるように入っているようでした。

そのお宝も金色の栗や玉、平たいキラキラなど色々なものがあるようでした。

娘自身も何かを授かったようなのでそのことを尋ねてみると、お社の上の方を指してあそこにあるのと同じ『あかいハタ』と答えました。娘の指さした方を見るとお社の入り口に掲げられてある祭礼幕のことのようでした。

どういうご利益があるんだろうと驚きよりも興味の方が湧いてしまいました。そして私には何を授けてくれたのかも聞いてみると、娘は少し考え込みました。

どうやら適当な言葉を探しているようで、やがて『まっすぐなカタナ』という単語を選び出しました。

まっすぐという説明が付いたのは娘が絵本やアニメなどで見る三日月形のサーベルや日本刀と比べたからのようでした。それを聞いて私は神話で登場する宝剣をイメージしましたが、娘と同じでどんなご利益があるのかよくわかりません。

そう思い迷っていたときでした。

「あっ、やっぱりEさん?」

不意に声をかけられて振り向くと、神社の脇にある社務所から見覚えのある女性が出てきました。この神社の娘さんのMさんです。

私はこの神社の氏子さんではありませんでしたが、私の上の娘がMさんの娘さんと友達で、Mさんとは家族ぐるみでお付き合いをしていました。

「何だか困った顔をしてましたけど、何かあったんですか?」

Mさんが微笑みながらも心配そうに問いかけてきました。

「ええと、それが」

仲の良い知り合いとはいえ、人に言うにはちょっと恥ずかしいことだったので、私は少しうろたえてしまいました。

「いえ、実はうちの娘が神様から旗をもらったというものですから、神様なんているかどうかわからないのに……」

恥ずかしさをごまかすためでしたが、口にした後に神社の娘さんのMさんには大変失礼な物言いだったと自分の発言を後悔しました。

「Eさん、神様はちゃんといらっしゃいますよ」

笑顔は崩さないままでしたが、彼女から何か無言の圧力が伝わってきました。

「それと神様がくださった旗は素敵な女性になりますよというご利益です」

「えっ、やっぱりそうなんですね、ちなみに娘によると私は剣をいただいたようなのですが、これはどういう御利益なんでしょう?」

「剣は困難を打破する力を意味します、Eさんに何か困っていることがあればそれを乗り越える力を授けてくれたのだと思います」

驚きました、まさにその通りでした。

ちょうど職場の激務と人間関係で不安のあった私に困難と悪縁を断ち切る宝剣という力を授けていただいたのでしょうか。

長年神社に参拝していたのだから、もっとご利益のことは知っておけばよかったと思いましたが、ふとMさんのことも聞いてみようと考えました。

「Mさんはこの神社の巫女もされていたんですし、神様のご加護は強いですよね」

「そんなことは……実は先日証券外務員の資格試験を受けたのですが、無事受かることができたんですよ、これも神様のおかげです」

「へえ、さすがですね」

試験に受かったことは確かにすごいことでしたが、それはMさんがちゃんと頑張ったからだと私は感じました。

「解答が終わって答案を見直しているときに神様が間違えているところを教えてくれたんですよ、ここ間違えてるよって」

Mさんの思わぬ答えに私は変な声をあげてしまいそうでしたが、彼女があまりに明け透けに話すので、嘘でからかわれているとも思えませんでした。

「もちろん勉強は十分してましたよ、でも最後にそっと助けていただきました」

あっ、これマジなやつだと体の奥底から何とも言い知れない震えが起きました。

そのときでした。

お前の娘は立派になるぞ。

お前はもっと強く物を言っていいぞ。

それは声が聞こえたわけではありませんでした。

頭の中に声が響いたわけでもありませんでした。

ただなんとなく……お告げとも呼べるものがふっと頭の中に浮かんできたのです。

私は驚きながらも込み上げるものを感じながらゆっくりと神社の方に振り返り、そしてあらためて深く一礼しました。

新年の初めから目の当たりにした忘れられない神秘的な出来事でした。

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あっ、寺社の人混みといえば、参拝客が多すぎて神様がご利益を与えるのが間に合ってなかったよとうちの視える家族が教えてくれたことがありました。
※あくまで私周辺の個人的な所見です、宗教的事象を揶揄する意図はまったくありません。

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