中編4
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坂道

その日Aは友人のB、C子、D子と一緒にドライブをしていた。友人同士の気楽な旅立った。運転手はB。Aは運転席のすぐ後ろの席に座っていた。

Bは、助手席のC子と恋人同士だった。D子はC子の友人で、AはBの友人だった。こうなると、自然とBはC子と、C子はD子と話すことが多くなり、B、C子、D子で盛り上がるようになるわけで、最初はAも話題についていこうと一生懸命話しをしていたが、そのうちだんだんと外の景色を見ていることが多くなってきた。

窓を開けると、5月の山の爽やかな空気が入ってくる。運転をしているBには悪いけど、とても気分がよく、ウトウトとしてしまう。

Aは一瞬の睡魔に負けて寝入ってしまった。おっと、いけないと思い、目を覚ますと、あたりはだいぶ薄暗くなっていた。いつの間にか山道を抜けて、森のようなところを走っていた。BやC子、D子も話疲れたのか、静かにしていた。

静かな中、エンジン音だけが響く夕暮れの森、というのも悪くはない。ふと、時間が気になったAはBに尋ねた。

「今何時だ?」

すると、Bは妙に小さい声で

「3時24分だ」

と答えた。

なんだろう?自分が寝ている間に、C子と喧嘩でもして機嫌が悪いのだろうか。

Aは最初、そう思っていた。

ふと横のD子を見てみると、D子はじっと前を見ている。そして、しきりに左手をさすっているようだった。

「D子ちゃん、手、どうかしたの?」

Aが尋ねると、D子は

「・・・ないの」

とこれもまた小さい声で答えた。

『何でもないの』といったのだろうか?それにしてもみんなが元気がないので、Aは妙に居心地が悪く感じていた。

道は下り坂に入っており、森が深いのか、まだそんなに暗い時間でもないだろうに、道はどんどん暗くなっていくようだった。行き先を見てみると、とても暗いのが気になった。

Aは妙な胸騒ぎがした。どういうわけか、「このままこの車に乗っていていいのだろうか?」と思えてならない。何か取り返しの付かないことが起こっているのではないかと感じるのだ。

数分間は我慢していたが、思い余ってBに車を止めて欲しいと言った。

「なんでだ?早くしないと・・・行っちゃうだろう?」

Bの言葉の意味が少しわからなかった。行っちゃうとはどういう意味だろうか?いよいよ気味が悪くなってきたAは助手席のC子に声をかけた。

「これどのへんなの?」

しかし、C子からの返事はなかった。聞こえてなかったのかと、不思議に思ってもう一度声をかけようとすると、Bが

「『サカ』だよ」

と言った。何坂だよ、とAは思いながら外を見る。外はますます暗くなっているようだった。山だから日が落ちるのが早く感じるのだろうか?

Aは次第にそわそわしだし、Bに再度車を停めるように言った。気分が悪くなったーと嘘をついた。

Bは渋々といった感じでやっと車を止めてくれた。車から降りると幾分ホッとした。車の行き先を見ると真っ暗で、いま来た道の先は若干明るい気がした。なぜかわからないけど、そちらに戻らなければと思った。

Aはフラフラと坂を登り始めた。すると、Bが

「お前、一人でどこ行く気だ!?」

と声をかけてきた。

ああ、たしかに、こんな山の中で一人で歩いていたら危ないよなー

と思い、振り返るとC子が車の脇に立っているのが見えた。しかし、妙なことに顔が見えない。顔のところがまるでモザイクがかかったような、放送が終わったあとのTVの砂嵐のような状態になっている。目をこすってみてみたが、同じだった。戸惑っていると、Bが運転席から降りてきた。

「おい、早く・・・」

降りてきたBを見て、息が止まりそうになる。Bの首が90度横に折れ曲がっていた。

Aはヒッと声にならない悲鳴を上げ、坂を駆け上り始めた。後ろからD子が追いかけてくる。D子は右手を振り回しながらAを捕まえようとする。振り返ると、もう寸でのところで追いつかれそうなところまで走ってきていた。Aはもつれる足を必死に立て直して、走った。息が切れて、もう走れない・・・と思った。

Aが病院のベッドの上で目を覚ましたのはこの時だった。

頭が痛く、足がしびれていた。起き上がろうとすると肩も痛い。

此処から先はAが看護師さんに聞いた話だ。

Aたちが乗った車はあの日の3時ごろ、山道でカーブでスリップをおこし、崖に衝突する事故を起こした。

Bは頚椎を骨折してほぼ即死、

とっさにBがハンドルを切ったせいでC子が乗っていた側は崖にもろにぶつかり、C子は顔面を原型を留めないほど損傷し死亡、

D子は左半身を潰され、これもまたほぼ即死状態だったそうだ。

Aだけは奇跡的に軽症で済んだが、事故後丸3日間目を覚まさずに脳の損傷が疑われていたところだったという。

首が90度折れ曲がっていたB

喋らなかったC子

左腕が「ない」と言っていたD子 ・・・

Bが言っていた『サカ』を降りきっていたら、自分もここにいなかったかもしれない。

そうAが教えてくれた。

Concrete
コメント怖い
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@イカスミ
コメントありがとうございます。
また投稿しますので、ぜひ読んでいただければと思います。
他のお話もお暇があれば読んでみてください。

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怖すぎです、、、
これからもこわーい話をたくさん出してくれることを期待してます!

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