長編10
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他言無用の恐怖話

ついにオヤジがやらかしてしまった

オヤジの話は嘘や事実などを混ぜ合わせてしゃべるのでどれが嘘か本当か見分けがつかない

匠と仁はなんとなくわかってきたようなのだが楓と葵はオヤジの話が全て本当だと思って聞いている

オヤジにとってはこの二人は格好のカモである

秋も深まり朝晩が冷えてきた

昼間は陽ざしがあればまだ暖かい

日曜日、快晴

陽ざしが強く昼間はポカポカ

昼食を終え楓と葵とオヤジと私は縁側でひなたぼっこをしていた

葵はさっと立ち上がり庭でいつものごとく雑草をむしりはじめた

オヤジがいきなり「しっ!これから話すことは誰にも話しちゃだめだぞ」と指を口にあてた

「うん・・なになに?じっちゃ」

「葵ちゃんもこっちへおいで」とオヤジは葵を隣に座らせた

「じっちゃ・・・何?」と葵はオヤジの横に座った

「いいかい、これから話すことは誰にも言っちゃダメだぞ!!」

「うん!!」

「うん!」

「これからな、じっちゃがある人から聞いた話を話すからな

その人はな・・・」

と話をし始めた

話がどんどん進んで葵と楓はお互いに手を取り合って

「怖いよ~~じっちゃ!!」

「あたち・・・今夜眠れないんだぞ」

台所で片づけを終えたおふくろとS子が縁側に来た

「おっちーー、終わったんだぞ!!みんな、ここにいたんだぞ」

「おやおや・・・じいさまの話を聞いているんかい・・・」

「うん!ママ、ばっちゃ!!、じっちゃの話は怖いんだぞ」

「そうかい・・・ところで・・・その話は他言無用なんだろ・・・そんな話をしたらもう他言無用じゃないよ・・・」とおふくろが痛いところをついた

「あ・・・」とオヤジの顔が固まった

「あ・・じゃないだろ・・・そんな話をみんなの前で話してどうするんだい

その他言無用は他人に話をしたらどうなるんだね?」とおふくろはオヤジに向かって質問をした

「そのぉ・・・全員・・話した奴、聞いた奴、全員死ぬ・・・」

「おい!!オヤジ!!!なんでこった!!」

「じいちゃ・・・ひどい・・・」

「ひどいんだぞ、じっちゃ」

「あ・・・いや・・・話は途中だからたぶん大丈夫だと思うぞ、アハハハ!!」

アハハハじゃない!

この家は化け物屋敷だぞ

今までとんでもない怪異現象が起きているんだ

「あんた・・・どうするのさ・・・」

「いやぁ・・・」

オヤジは黙り込んでしまった

「パパ・・・私死ぬの?」と楓が心配そうに私の顔を見た

「いやいや・・・大丈夫だよ」

葵も心配そうにこっちを見ていた

「さぁ大丈夫だよ」

ガランガラン

玄関の開く音がした

一同ビクッとなった

「ただいま~~~」

「ただいま~~~」

「あれぇ~~~リビング誰もいないよ、匠兄ちゃん!!」

「ほんとだ」

「また縁側だろ」

ドタバタと足音がした

「あっ!いたいた」

「パパたち、ここにいたんだ」

「あれ?・・・どうしたの?みんな、浮かない顔をしてさ」

「いや・・・そのな・・・」

「さぁさ・・・リビングへみんな行きましょう」とおふくろが催促をした

「うん!!」

「だね」

「オヤジ!!リビングへ行くぞ!!」

「オヤジ!どうした?」

「いや・・・なんでもない」

なんだ・・・普段なら大きな声で返事をするのに

全員、リビングへ

いつものように賑やかになった

「おっと宿題をしなくちゃ」

「仁、2階へ行こうぜ」

「うん、兄ちゃん」

匠と仁はそろって出て行った

「あれ・・・兄ちゃんたち出て行ったよ」

「宿題をするんだよ」

「でも・・・大丈夫なのかな?・・・」

「あの2人はオヤジの話を聞いていないから大丈夫だろ」

「そっかな・・・」

「さぁさ・・・2人とも怖かったらリビングにいればいいよ

ママやパパや私やじいさまいるからね」とおふくろは子供たちにやさしく語りかけてくれた

「うん、ばっちゃ」

「じいちゃ!!大丈夫?」と葵がソファで座ってるオヤジに心配そうに声をかけた

「いや・・・少し気分が悪い・・・俺、自分の部屋で寝てくるぜ」

「じいちゃ・・・わたしも一緒に行きたいんだぞ」

「葵ちゃん、ありがと・・・ここにいればいいぞ」

「じっちゃ・・・」

オヤジは早々にリビングから出て行った

珍しい、体調が悪いと自分から言わないのにな

何かが変だな

「じっちゃ・・・大丈夫かな?パパ」

「少し心配だな・・・後でパパが見に行くからね」

子供たちはリビングでおふくろやS子と一緒におしゃべりをしていた

夕方になりあたりもうす暗くなってきた

私はオヤジが気になり仏間へ行った

オヤジは布団の中で寝ていた

珍しい

こんな早くに布団の中に寝ているのは初めて見た

私はオヤジの肩を少し揺らした

「オヤジ・・・大丈夫か?」

「おお・・・少し熱があるみたいだぜ・・・風邪ひいたかもな

少し寒気もする・・・まぁ・・今晩ゆっくり寝れば治るさ」

「そっか・・・後で風邪薬を持ってくるよ」

「ありがとな・・・」

ありがとう・・・はじめて聞いたぞ!!

こりゃ絶対におかしい

いくら年を取ったからといってお礼を言うとは・・・

とりあえず風邪薬とお茶を枕元に置いてきた

おふくろにこのことを話をした

「なに!あいつがお礼を言ったって・・・こりゃ・・・おかしい・・・F・・

わたしゃ・・・仏間へ行くよ・・」と言っておふくろは出て行った

「パパ・・・じいちゃ・・・熱があるの?」と楓が心配そうに尋ねてきた

「そう・・・寒気を感じるんだって・・・」

「そうなの・・・じいちゃ・・・大丈夫かな・・・」

2階では大きな笑い声や話声が聞こえていた

「兄ちゃんたち・・・うるさいよね、パパ」

「だな・・・注意してくるわ」と私は楓に言った

「うん!!」

2階へ行き注意をしようと思う

ドアを開けた

「え・・・どういうことだ?」

なんと2人とも寝ていたのだ

疲れが出たんだろう

そのままの格好で寝ていた

「おい!匠、起きろ」

「うう・・・パパ、眠いよ」

「いつから寝てたんだよ?」

「うう・・宿題を終えてなぜか眠くなってきたんだよ

えーーと・・・もう午後4時ころかな・・・宿題が終わったのは

え!?・・・いまさっきまで仁とおおきなこえをだしていなかったって?・・・

ううん・・・仁もほぼ一緒に寝たからね・・・全然大騒ぎはしてないよ、パパ」

「そっか・・・疲れが出たんだろう・・・もう寝てたほうがいいな」

「うん」

今午後6時過ぎ

大きな声がしていたのは午後5時から午後6時前まで・・・

その時間帯は匠と仁は寝ていたという

じゃああの声はいったい誰だよ

確かに2階のほうから聞こえていた

大きな声や大笑い

てっきり匠と仁だと思ってた

おかしい・・・

私はリビングへ戻った

S子に話をした

「おっちーー、そうなの?・・・おかしいよね・・・確かに2階から聞こえたんだぞ

てっきり匠君や仁君かと思ったんだぞ

じゃああの声はいったい誰なの?」

「わからない・・・」

「パパ・・・夕食はどうしよう?・・・パパやママは夕食食べるかな?

匠君や仁君は寝てるし・・・」

「とりあえずは4人分だけ作ればいいさ、おふくろに聞いてくるよ」

仏間へ行った

「おふくろ・・・オヤジの様子は?」

「まぁ・・・熱が出てるね・・今さっき体温計ではかったら38度もあったよ

風邪薬は今さっき飲んだからじきに熱も下がると思うけど

夕食?・・・ちょっと離れるのは無理だから私はいらないよ」

夕食は4人で食べた

ドタドタ

廊下を走る音がした

「兄ちゃんたちが起きたよ、パパ」

「だな・・・お腹減ってるだろうな」

「うん!!」

しかし、いくら待っても誰もリビングへ来ない

「おかしいね・・・誰も来ないよ、パパ」

「足音がしたのにな・・・」

夕食も終わり

娘たちとおしゃべりをしていた

ドンドン

勝手口のほうから音がした

「音がしたね・・・酒屋さんが来たのかな?」

「パパ、お酒など注文したの?」

「いや、してないよ」

S子が勝手口のドアを開けた

「あれ?・・・誰もいないよ、パパ」

「え!?・・・」

「パパ・・・外を見たけど誰もいないんだぞ」

確かに勝手口の方から叩く音がした

てっきり酒屋が来たのかと思った

しかし・・・酒屋なら絶対に挨拶をする

それがなかった

これは・・・もしや・・・もうはじまってるんじゃ・・・

「とりあえず・・・飲み物やお菓子などを持って仏間へ行こう」

「うん、パパ」

「じいちゃのところへいくんだぞ」

私たち4人は仏間へ向かった

「とりあえずは廊下の明かりは点けておこう」

「それがいいんだぞ、パパ」

「おやおやどうしたの?」

「とりあえずは全員ここにいた方がいいと思って」

「何かあったのかい?」

今さっきの事象をおふくろに話をした

「そうかい・・・ここが一番いいかもしれないね・・・」

この仏間は結界を張ってある

大抵の霊は寄り付けないはずだ

時計は午後10時をさしていた

「パパ・・・眠くなってきたよ」と楓が目をこすりながら私に話しかけてきた

「布団を敷くからね、ここで寝るといいよ」とおふくろは布団を敷いた

「うん、ばっちゃ」

「ばっちゃ」

「仲良く2人で一緒に寝るんだよ」

しばらくはこっちを見たりおしゃべりしていた

「眠ったね・・・」

「おふくろ・・・この化け物屋敷・・・なんとかしないと」

「化け物屋敷はひどい・・・あいつと私が一生懸命働いて建てたんだよ

まぁ・・・こうも頻繁に怪現象が起きるのはよくないね・・・

ここを出てもねぇ・・・」

「でもな・・・落ち着かないよ、実際・・・・一度和尚さんを呼んでお祓いをしてもらおう」

「それがいいかもしれないわね・・・」

突然、私のスマホが鳴った

「わっ!!びっくりした!!誰だろう?」

和尚様からだ

「F君!!オヤジ殿は元気ですかいの?」

「いや・・そのぉ・・・今、オヤジ、熱を出して寝てるんですよ」

「え・・・そうですかい・・・いやね・・・今さっきオヤジ殿の声が耳元で((くそ坊主!!

俺は今ひどい目に合ってる!!熱が出てよ!!Fに電話しろ))と聞こえてきたんですわい

ですから慌てて電話をしたんですわい」

「オヤジ・・・すいません・・・あ・・・そうだ・・・和尚様、暇なときに家へ来てほしいです」

和尚様に今までの経緯を話をした

「そうですかい・・・確かに・・・わかりもうしたわい・・・来月に行きます・・・

それと今夜・・・恐らくすごい怪異現象が起きると思いますけれど

仏間から出ないようにしてくだされ

・・え・・・昼間にオヤジ殿はそういういわく付きのお話をしたんですかい

これは・・・困りましたな・・・明日は檀家衆との会合があって・・・明後日は・・・

こりゃ・・・あかんですわい・・・すぐに行きたいのだが・・・一刻の猶予もないような気がしますわい・・・

とりあえずは皆さんは仏間にいてください

結界の中なら安全ですから

ただ・・・家族全員だと仏間は狭いと思いますわい・・・・

仏間のドアと客間のドアを開けてお互いに見えるようにしておいてくださればよいかと

そうですわい・・・客間にはF君と匠君と仁君ですわな

後の方は仏間にいたほうがいいですわい」

「わかりました」

私は2階にいる息子たちを客間へ連れてきた

「ええ・・・・じいちゃが・・・そんな」

「そういうことだよ・・こんばんは、客間でいてくれ」

時間が刻々と過ぎていった

午後11時過ぎ

「もう・・・11時かぁ・・・」

「なにもおきないね・・・パパ」

「おっちーー・・・・なんか嫌な空気が漂ってるんだぞ・・・」

「わたしも感じるわね・・・」

何かの気配を感じてるようだ

私は霊感ゼロなのであんまし感じてはいないけれど

ドーーーーン

2階から音がした

「わっ!!!2階からだね・・何か物が落ちた音みたい・・・」

2階から物が落ちたような音だった

ドドドドドッドッ

2階をものすごい速さで走っている音がしてきた

トントントン

2階から何かが降りてくる音

「え・・・パパ・・・階段から音がしたよ」と仁がおびえた声で私に話しかけてきた

「確かに降りてくる音がした・・・」

「ちょい待ち・・・足音がこっちに近づいてきてるような・・・」

「パパ・・・こっちへきてるよ」

たしかに得体の知れないものが来てる

ピタッ

リビングの横の廊下で足音が止まった

「パパ・・・足音が止まったよ」

「うん・・・・」

全員身動きが止まった

「リビングのあたりだよね・・パパ・・・」

「そう・・」

足音がこちらへ近づいてきた

「パパ・・・足音がこっちに来てるよ」

全員廊下あたりを集中的に見ている

仏間からはおふくろやS子がじっとこっちを見ていた

客間からは私と匠と仁が仏間を見ていた

ちょうど私の書斎がある廊下あたりで足音は止まった

「パパ・・・もうそこだよ」

「うん・・・なるべく音を立てるなよ」

「うん・・・」

私はふいに相手の正体を知りたい衝動に駆られた

「よぉし・・・こっちから脅かしてやろう」

「え・・パパ・・・駄目だよ・・止めなよ」

私は意を決して客間から一気に顔を出して大きな声を出してやろうと思った

私は心の中で一斉のえい!と叫んで廊下に顔を出して

「おい!!!化け物!!」と大きな声で怒鳴った

ちょうどタイミングよく相手もこっちを覗こうとした瞬間に私が少し先に出たので

私の顔と化け物の顔がハチ合わせになった

私は怒鳴った反動ですこしのけぞった

相手の化け物も一瞬ひるんだ様に見えた

仏間から「キャアーーーーー」というS子の叫び声

客間からは「うわぁーーー」と匠と仁の驚いた声

化け物はさすがに驚いたのかものすごい速さで廊下を走り去っていった

私の心臓はものすごい速さで鼓動していた

もろに化け物の顔を見てしまった

S子は叫び声と同時に気絶してしまった

おふくろはもう目が点になって固まってしまっている

叫び声、驚きの声で娘たちが起きてしまった

そしてみんな一斉にある一点を凝視した

ない!!!あるはずのものがない!!

そう!!あの能面がない!!!

私はあの能面をまともに見てしまった

あれからあの能面の行方が分からなくなってしまった

Concrete
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