怖い話に関する短い話 七

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怖い話に関する短い話 七

亜沙美さんは新古書店のチェーンでアルバイトをしているのだが、ときたま買い取り希望で持ち込まれる商品に不気味なものがある。

二〇〇四年に刊行されている、ある子供向けの《怖い話の本》なのだが、一年で二十冊以上は同商品が持ち込まれた。

持ち込むのはすべて、共通項のない別人たちである。

単なる評価の低い本だと考えることはできるが。

ひとつだけ、判らないこと。

本の最後のページ、奥付の部分に

《さがむらみよこがしにますように》

と、印刷ではないたどたどしい文字で書かれている。

同じような筆跡で、赤色の筆記用具で。

その本に限り、すべてにである。

恐らく人名であり、その死を願っているようだ。

収録された怪談には《さがむらみよこ》が登場するものはなく、また本の制作者にもその名はない。

書き込みのある本は売買できないが、どんな状態であろうと買い取り拒否はせず無料で引き取り、処分品にする決まりである。

今日も続々とその本は持ち込まれ続け、むしろその数は増えていっている気がするという。

Concrete
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