斎場の斉場(シーズンⅡ) 完結

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斎場の斉場(シーズンⅡ) 完結

令和2年4月4日 14時2分

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「古澤さん、、、その恐ろしい体験というのは、いつのことなんですか?」

斉場は最後まで気になっていたことを、思いきって聞いた。

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古澤が両手で頭を抱えたままで、答える。

「2016年、、、ちょうど今から4年前だ」

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「そして、今日が4月4日、、、

あの日から4年後の4月4日に、崇邑は蘇我に、地獄に落とすと言ったんですよね」

そう言って斉場が緊張した面持ちで、ごくりと唾を飲み込んだ。

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「昨日、仕事が終わって、炉を掃除していたら、聞こえたんだよ、、、あの崇邑の叫ぶ声が、、、

小窓を叩く音が、、、

そして夜は、、、恐ろしい悪夢を見たんだ」

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「どんな?」

斉場は緊張しながら、尋ねる。

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「それは畳一畳くらいしかないだろう、下水道のような冷たくて狭いところだった

そんなところに俺はなぜだか裸で、座っていた」

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「とにかく怖くて心細くて、何度も何度も大声を出すんだが、誰も助けに来てくれない、、、

正面に一ヶ所だけある小さな小窓を見つけて、懸命に外を覗くのだが、見えるのは暗闇だけで何も見えない

そうしているうちに、鈍い機械音が鳴り出したかと思ったら、いきなり両側から青い炎が吹き出してきた、、、

もちろん、どこにも逃げるところなどない

俺の身体は、あっという間にが炎に包まれたんだ

狂ったように悶えながら、転がり回った

髪が燃え、皮膚のあちこちは爛れ、溶けていき、今まで体感したことのないような猛烈な痛みが全身を駆け抜け続けたんだ

そして意識を朦朧としながらも、小窓の方に目をやると、暗闇の中に二つの目があるのに気がついた」

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「崇邑だった」

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「崇邑が、炎に包まれてのたうち回る俺の姿を、二つの目で冷静に見ていたんだ」

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「俺は必死に奴に助けを求めたのだが、無駄だった

やがて意識が消えて無くなりだし、いつの間にか暗いトンネルのようはところをさ迷い歩きだしたかと思ったとき、いつものこの部屋の布団の中にいた

ほっとしながら起き上がったのだが、身体中に鋭い痛みが走る

慌てて電気を点けてみると、この有り様だった」

そう言って古澤は、ひどい火傷を負ったような顔や腕を、斉場に見せた

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令和2年4月4日 22時10分

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神戸南の埠頭近くにあるモダンなラブホテルの一室

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白で統一され、余計な調度品を省いたシンプルな室内。

普通に利用するには十分すぎるくらいの広さの華美なダブルベッドには、二人の男女が寝ている。

男は上半身だけを起こし、静かにタバコを吸っていた。肩から二の腕にかけて、鮮やかなT A T O O が見え隠れしている。

色白のその顔は整ってはいるのだが、表情というものがほとんどなく、薄情な印象だ。

年齢は40代後半くらいだろうか。

隣には女が背中を向けて寝ている。ライトブラウンの長い髪に、目鼻立ちのはっきりとした顔立ち。年齢は30代前半くらいか。一見して堅気の女性にはない垢抜けた雰囲気を醸し出している。

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男はタバコの煙に目をしかめながら、テレビのリモコンを手に持つと、スイッチを入れる。すると、正面の壁に設置されている巨大な液晶テレビに映像が現れた。

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スタジオで、女性のアナウンサーがニュースを読み上げているようだ。

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「それでは、たった今入った速報です。

本日、深夜零時ころ、神戸市〇〇区の商業ビル4階にある関西系の暴力団山田組の事務所で、火事があった様で、警察、消防が駆けつけて鎮火活動が行われ、たった今、火は消し止められたもようです」

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「ねぇ、今度の週末だけど、、、」

女が甘ったるい声で、男に話しかけた。

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「静かに!」

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男は険しい表情で女の言葉を遮り、テレビの音量を大きくする。

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「焼け跡から男性二人の焼死体が発見されましたが、遺体は損傷がひどく身元はまだはっきりとは分かっておりません」

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女が心配げに声をかける。

「どうしたの?何かあったの?」

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男は無言のまま携帯を手に取り、素早く操作すると、耳に当てた。

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「ああ、わたしだ。今、テレビで見たんだが、どういうことだ?」

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男は深刻な表情で会話を続けている。

すると、

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shake

ドン!ドン!ドン!ドン!

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どこからか、何かを叩く音が聞こえてくる。

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「え!?何⁉️」

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驚いて女が上半身を起こして、周囲を見回す。

男も携帯を耳に当てたまま、あちこち首を動かす

すると、

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shake

ドン!ドン!ドン!ドン!

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また、聞こえてくる。

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男はガウンを羽織ると、ベッドを降りて、部屋の中を歩き回り、音の在処を探し始める。

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shake

ドン!ドン!ドン!ドン!

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それは、西側にある等身大のサッシ窓からのようだった。

男は窓の前に立つと、カーテンに手をかけ、一気に開ける

窓の向こうは、海の見えるバルコニーになっている。

男はロックを開けて、ゆっくりとバルコニーに出た。

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パラソルのついたテーブルと、椅子が二脚。

後は、鉢植えの観葉植物が二つあるだけだ。

男が首を傾げながら、部屋に戻ろうとしたときだ

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「蘇我、、、」

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誰もいないはずのバルコニーから、声がする。

驚いて男が振り向くと、そこには、

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大人の身長くらいの巨大な青白い火柱が、蜃気楼のように揺れていた

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