長編7
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友情

 

季節は冬。 

散々と雪が降り注ぐ中、 

私は向かっている。 

あの日来たあの場所、 

あの場所へ、 

私は向かっている。 

私の友達に、拓也という名前の男が居ます。 

拓也とは幼なじみで小学校、中学校、高校と同じ学校に進みました。 

しかし、大学へ進学するにあたり、それぞれの夢を持つ私たちは、別々の大学に進むことになりました。 

私は拓也のことを恥ずかしながら、親友と思っています。 

向こうはそんなこと全く思っていないかも知れませんけどね。。。 

そして拓也には特別な力があります。 

それは幽霊を見ることが出来る力です。 

でも本人はとてもその能力を毛嫌いしているようです。 

見たくも無いものを見るのは辛いそうです。。 

そんな拓也と昔から色々な場所に遊びに行っている私は、 

その行く先々で不思議な体験をしています。 

中でも特に印象的な出来事は、今年の夏の出来事でした。 

お盆休み。私はある用事で拓也の住む町に来ていました。 

そして以前教えてもらっていた住所を頼りに拓也の住む家を訪れたのです。 

およそ2年ぶりでしょうか、お互い大学に進学をしてから初めて顔を合わせました。 

私の突然の訪問に拓也はとても驚いてくれました。 

拓也の家にあがり暫く話した後、拓也の車でドライブに行くことになりました。 

2年振りに会った為か、話は弾みに弾み、 

車内でも話題が尽きることはありませんでした。 

そして散々ドライブを楽しみ、拓也の家に戻ろうとした帰り道、 

私達は渋滞を避けるため国道のような大きい道ではなく、いわゆる田舎道を通って帰ることにしました。 

私たちの予想は見事的中し、渋滞もなく早く家に戻れるはずでした、、 

しかし、 

どれくらい振りの信号機でしょうか、 

私たちは赤信号に掴まり停車しました。 

そして信号が変わるのを待っていると、一台の白いバンが、交差点を左折し私たちの前に現れました。 

そして信号が青に変わり、私達は走り出しました。 

私達はその白いバンについて走っていました。なんの変哲も無い白いバンで、良く工事現場に停まっているような車です。 

しかしどうもその車が現れてから拓也の口数が少なくなったような気がしました。 

少し前まではあんなに楽しく話していたのに。 

私が会話を振っても、「そっか」 「ふーん」という返事しか帰って来ず、会話は一向に弾みませんでした。 

そんな調子なので私もいつの間にか黙りこくってしまい、暫く無言の状態が続きました。 

そして、白いバンの後をついて少し時間が経った頃、 

拓也が口を開きました。 

「前を走っている白いバンなんだけど、人を轢いてる。それも多分轢き逃げ。」 

突然そんなことを言い始める拓也に私は驚きました。 

何でそんなことが解るのか聞いてみると、 

「車の下に女がしがみついているんだ。ボロボロの服を着た女。顔までは、はっきりと見えないけど。生きている人間では無い。あれは死んでる。」 

拓也いわく、轢き逃げなどで強い怨みが残ると、その霊は車の上に乗っかっていたり、今回のようにしがみついたりと車に取り憑くことが多いようです。 

そんなことを話しながら白いバンと私達の車は走っていました。 

そして、どのぐらいの確率なんでしょうか。 

暗闇の中、ポツンと見えてきた信号器が黄色から赤に変わり私達の車と白いバンを停車させました。 

拓也は女に近づきたくなかったのでしょう、やけに白いバンと距離を取って停車しました。 

そしてヘッドライトをローにし左折合図を出しました。 

前のバンは直進するようです。 

ここでやっとこのバンと離れられるという思いからか、拓也は安心しているように見えました。 

そして信号が再び青信号になり、ヘッドライトを点灯させたその刹那、 

「やばい!」 

拓也は急にそう叫び、 

タイヤから叫び声が聞こえるほどの急発進で、白いバンを抜き去りました。 

私は突然の出来事に動揺していました。 

「やばい、まずいな、、、」 

拓也は何かに怯えたような顔で呟いていました。 

そして、 

「女と目が会った。」 

「駄目だ、急いで逃げたけど駄目だった!」 

取り乱す拓也に私は何事かと問い掛けました。 

「ヘッドライトを付けた途端あいつと目が会った、そしてあいつは俺が見えていることに気がついたんだ。あいつは車から手を放して俺達の車に向かって走ってきた。だから急いで逃げたんだ。」 

「でも、どうやら逃げきれなかったらしい、、、、トランクにしがみつかれたようだ。」 

「リアウィンドウからこちらを覗き込んでいるのがバックミラーから見える。」 

拓也は怯えた表情を浮かべながらハンドルを握っていました。 

車は早く人通りが多い国道に出たい思いからか、スピードをグングン上げて走っていました。 

「目をあわせたら憑れていかれそうだ。」 

拓也はそう言いながら運転をしていた。 

そして、もう少しで国道に出るところで、 

「居なくなった。どうやら助かったようだ。」 

「俺らが何もしないということを感じたのかもしれないな」 

「最初はトランクにしがみついていたんだけど、さっきまでは俺らの目の前、天井からフロントガラスを覗き込んでいたんだ。」 

「何も無くて本当に良かった。」 

そして私達は無事に拓也の住む町に到着し、私は駅に降ろしてもらい、拓也と別れた。 

こんな感じで、拓也は幽霊を見ることができ、それまで幽霊が見えなかった私を驚かしてきました。 

そう、それまではね、、、、 

実は今回は見えていたんですよ私にも、、、、、 

あのバンが現れてから私も直ぐに解ったんですよ。 

確かにしがみついていたよね。 

そう、拓也は気がついていないかもしれないけど、 

実はさ、俺死んでるんだ。 

今から一年前、 

どうしても生きているのが辛くなってね、 

俺、自殺したんだ。。。。 

だーれも助けてくれないんだもんな。 

本当に辛かったんだ。 

でもね!でもね! 

こっちの世界は最高なんだよ! 

何も苦しむことはないし、悩まなくてもいいんだ! 

だからさ! 

俺思うんだ!!! 

拓也もこっちにくればいいって。 

だからさ、 

今年の夏会いに行ったんだ。 

でも連れて逝くの失敗しちゃったよ。 

変な奴が出てきたせいで。 

あいつ何もせずに消えたけど、俺の存在に気がついたからなんだ。 

俺の思いのほうが強かったんだろうね。 

だから、俺諦めないよ。 

お前は俺の大切な親友だから。 

俺ずっと一緒に遊んでいたいんだよ!! 

拓也だってきっとそう思ってくれるはずだよ! 

だから次こそは必ず。。。ね? 

季節は冬。 

散々と雪が降り注ぐ中、 

私は向かっている。 

あの夏に来た建物へ、 

私は向かっている。 

あの夏に来たドアの前、 

私は今、到着した。 

俺の名前は拓也。 

なんか生まれた時から霊感があって幽霊が見えるんだ。 

もし願いが叶うならこんな体質辞めたいんだ。 

見たくないものが見えるなんて辛いよ。。 

俺には一樹という幼なじみがいる。 

そいつとは小、中、高と同じ学校を進み、 

毎日遊んで、何でも話し合える大切な俺の親友だ。 

向こうはそんなこと思っていないかもしれないけど。 

でもそれでもいいんだ。 

自分だけでもそう思ってるだけで友情って深まるでしょ? 

でも、大学は別々になちゃった。 

やっぱりお互い夢があるから仕方が無いよな。 

何回か会おうと思ったんだけど、慣れない一人暮らしと大学生活で旨くいかなかったんだ。 

そんなこと考えていた今年の夏、 

一樹が俺の家を尋ねて来てくれたんだ! 

すげー嬉しかった!!! 

でも、俺はその日こそ自分の体質を悔やんだことは無いんだ。 

実は、一樹死んでたんだ。 

なんで死んでいるのか解らなかった。 

でも一樹は普通に俺の家に遊びに来て、普通に話しもできた。 

だから最初は俺の勘違いなのかとも思ったよ。 

でも、今までの経験からやっぱり死んでるんだって解るんだ。。。 

なんでこんな事になったのかと思う半面、 

死んでまでも俺のところに来てくれるなんてって考えたら、 

俺、泣きそうだったよ。 

その日は一日中遊んで、昔遊んでいたときのように別れたんだ。 

別れた後俺は直ぐに一樹の実家に電話をした。 

一樹のお母さんに聞いてみたんだ。。 

俺の勘違いなら、俺の間違いなら良かったんだけど、一樹に何かあったんですかと。 

そして自殺して死んだことを知ったんだ。 

色々悩み事があったんだろうってお母さん泣きながら言ってた。 

そして俺にもただ、ただ、ありがとうって言ってた。 

なんで俺は何も気が付かずに過ごしていたんだ! 

一番大切な友達が苦しんでいる時に俺は一体何をしていたんだ! 

大学!? 

初めての一人暮らし!? 

少しでも時間作って連絡すれば良かったんじゃ無いのか!? 

畜生!! 畜生!! 

それから数ヶ月。 

俺は一樹のことばかり考え、悔やんでいた。 

そして次に会えた時は絶対に成仏させてやると心に決めているんだ。 

それが今の俺が親友に出来る唯一のことだから。 

だから次こそは必ず。。。。 

ピンポーン。 

拓也の部屋のチャイムが鳴り響く。 

拓也はドアに向かって歩きだした。 

それぞれの友情の形が、そのドアの向こうでひとつになろうとしている。 

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