短編2
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ないはずの本

「怪談百夜 第一夜」

ふと、図書館で手に取った。

怪談蒐集が趣味である私は、その手の本に目がなかった。今日も、何か怖い話がないかと図書館の中をうろついていたのだった。

めぼしい収穫がなかったが、帰る前にと、普段はあまり見ない文庫本のコーナーに足を運んだ。そこで見つけたのが、冒頭の書籍である。あまり期待しないままにその本を借りた。

本にはよくある、というか、他愛もない短編の怪談話がちょうど100書き連ねられていた。

ー真夜中に携帯がなり、出ると何もなく切れる。番号を見てみると、交通事故で死んだ友人の番号だった。

ー冷蔵庫を開けると何かかが腐った臭いがする。奥の方をよく見ると人の顔をちょうど額から顎にかけてスライスしたような肉片がある。驚いて戸を閉めるが、もう一度開けると何もない。

ー泊まりに行った旅館で予約が入っていなくて泊まれない。どうしてもと言うと、約束を守れば、と言って一つの部屋に通される。そこでは夜寝る前に必ず床の間に水を供えるようにと言われる。言われたとおりにするが、夜中に「水・・・水・・・」と苦しそうに言う声が聞こえ、金縛りにあう。朝起きたら寝相が悪いせいでコップを蹴飛ばして水をこぼしてしまったらしいとわかる。

などなど。

退屈しのぎにはなったかなと思い、3日位後に、本を返した。まあ、と思い、続巻も借りようかと、文庫本コーナーに行ったがどうしても第二夜が見つからない。

たしか借りたときには第一夜から十夜くらいまであったはずなのに・・・。

首を傾げて蔵書検索をしてみたが、検索にも引っかからない。スマホで検索してみたが、本そのものがヒットしなかった。

著者の名前でネットを検索すると、Wikipediaが正しければ、著者は十年以上前に逝去しており、最後の著作が未完で、タイトルは「怪談百夜」であった。

Concrete
コメント怖い
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8
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@イカスミ
コメントありがとうございます
楽しんでいただけて良かったです!

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本当はない本、、、なんか背なかのほうが冷えてきた気がします、、、笑

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