中編5
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庄屋様と妖怪

昔な江戸時代はここらへんは田んぼや畑や藪が生い茂っていてな

家の裏山まではそんな感じだった

ある時に旅人が庄屋様の家へ訪ねてきた

まぁいわゆる宿を貸してほしいということだよ

ここらへんは確かに街道筋だった

けれども宿が一つもないという場所だった

家の横の大通りが旧街道だよ

まぁ身なりは長旅のせいかあんまし良くはない

庄屋様もジロジロと身なりを見て(これは・・・)という感じだった

どうしようか迷っていたがお腹もすいてるだろうし疲れもあるだろうということで一泊だけの約束をしたんだよ

その旅人は「ありがとうございます!助かります」と何度も頭を下げていた

一見何の変哲もない単なる旅人だろうと感じたらしい

時刻も夕方になっていた

庄屋様の女中連中が夕食の準備を始めた

その旅人はお釜の火をつける手伝いをした

それを見た庄屋様は感心したそうだ

今まで色々な旅人を泊めたが一度も家事など手伝う者がいなかった

ほとんど囲炉裏の傍に座るか横になってるだけだった

(これはこれは・・・感心なことだ・・・珍しい客を招いたもんだ)と内心庄屋様は喜んでいた

水や重いものも率先して手伝っていた

女中連中もたいそう喜んでいた

夕食の準備も終わり女中がごはんやみそ汁などを持ってきた

旅人は手を合わせものすごい早さで食べていった

庄屋様はよほどお腹が空いていたのだろうと思った

夕食も終わり後片付けも旅人は手伝った

旅人に今夜泊まる部屋へ案内をした

4畳半のそんなに広い部屋ではないが旅人は大いに感謝をした

庄屋様はじめ女中連中もこの旅人に対して警戒心を抱くことはなくなった

文句を言わない

暴れない

節度ある行動をする

今まで泊めた客は態度が横柄な者が多かった

しかし・・・これがこの旅人の計算だったんだよ

人間・・・真面目に動けば誰も疑うことはなくなるということを知っていたんだよ

そう・・・旅人は強盗だった

あちこちでこのような手段を使って家人たちを殺し金品などを盗んでいった

最悪の場合は証拠を消すために家に火をつけていった

今回もこの盗人は同じような手段を使ってドンズラするつもりだった

夜中に目を覚めてこの盗人は蔵まで静かに歩いて行った

蔵の錠はそんなに難しい構造ではなかった

「エヘヘヘ・・・簡単簡単・・・俺様にかかればあっという間よ」と小声でしゃべりながら難なく錠を開けた

蔵の中には小判や大判・・・掛け軸や茶器などが置いてあった

袋にありったけのものを入れて玄関の入口まで足音を立てずに門を出た時だ

一瞬で盗人の首が飛んだ

斬ったのは庄屋様

この庄屋様・・・実は忍びの頭領だった

この村は忍びの里なのだ

朝早くにこの盗人が村へ入ったという情報を庄屋様は聞いていたのだ

忍びの勘が働いたのだろう

女中などに旅人の情報を教えていた

もちろんこの女中もくノ一なのだ

知らぬは旅人・盗人だけ

ところがだ

斬りおとした首が地面に落ちコロコロと庄屋様の前に転がってきた

庄屋様もさすがにギョッとなったがさらに恐怖が襲った

なんとその首が目を開き大きな声でしゃべったのだ

「貴様!!この俺様を斬るとはいい度胸だ!!わしは大釜の入道だ

わしも油断したわ!!まさか人間に斬られるとはな!

まぁいい!!お前の一族はお前を境に子々孫々まで呪ってやるわ

わしは妖怪の世界でも大物じゃでな・・・お前みたいな忍びなどこの指でひねり潰すつもりじゃったわ・・・わしも長生きしすぎたようだ・・・地獄で待ってるぞ」と言った瞬間に首と胴体が消えた

庄屋様の顔から大量の汗が流れだした

えらいことになった・・・妖怪を斬ってしまった・・・不覚だった

これは一刻の猶予もならん

はやく菩提寺へ行き弔いをしなければ

すぐに庄屋様はお寺まで行き和尚に事の詳細を伝えた

和尚も話を聞いていくうちに血の気が引いていった

「なんと!大釜の入道と言ったのじゃな・・・妖怪の世界でも恐ろしい存在として妖怪共にも恐れられてるんじゃぞ・・・それをそなたは斬った・・・供養したところで入道は納得はしまい・・・もう終わりじゃで・・・」と和尚様は下を向いてしまった

庄屋様は和尚の態度をみて半狂乱になってしまった

庄屋様は何がブツブツと言いながら和尚様を真っ二つに斬ってしまった

寺を出て道を走りながら歩いている村人を次々と斬って行った

庄屋様の家に帰り女中を全員斬り殺してしまった

男衆はなんとか抵抗をしたが相手は剣の達人・・あっという間に斬り殺されていった

そのどさくさの間に庄屋様の子供をいち早く抱きかかえ逃げ延びた者がいた

最後に庄屋様は腹を斬り自分の首を斬って自決した

この村の出来事はお上のところにも聞こえて謀反の罪という意味の分からない罪状を叩きつけられ村人全員磔になってしまった

もちろん女や子供も全員だ

それはむごい光景で隣の村人連中が見に行き全員嘔吐するほどだった

処刑が終わり役人が帰った後に隣の村人連中は死体を集めて1か所に埋めた

それがあの例の墓地だよ

あそこ・・・名前のない墓がたくさんあるだろ

あれ・・殺された村人の墓だよ

え・・・逃げ延びた赤ん坊・・・まぁ・・・あれな・・・酒屋のご先祖だよ

酒屋はもともと庄屋の末裔だよ

戦前まではなぜか男子は早死にしてたとか

戦後になってなんとか男子は早死にせずにあの親子が生きてるというわけだ

まぁあいつとは悪友だから・・

おいおい・・・クソオヤジ!!そういうことは早く教えてくれ

あの墓場で何度恐ろしい目にあったか

昼間でも近寄りたくない場所だぞ

あの墓場のせいで商店街まで遠回りをしなくちゃいけない

「じっちゃ・・・あそこの墓場・・・怖いんだぞ・・・話を聞いたらますます怖いんだぞ・・」と葵の目に涙が出ていた

「カナも・・・あそこの墓場を知ってるよ・・・ママが「あそこには絶対に行っちゃだめだからね」と言ってたよ・・・じっちゃ・・・・」と小さな声でオヤジに話しかけていた

カナちゃんも涙が出ていた

「おい!!オヤジ!!!怖すぎだろ!!!どうしてくれるんだ、娘2人泣いちゃったぞ」

「いや・・・怖かすつもりはなかったんだけどな・・・ごめんな・・」とオヤジは2人の娘の手を握って謝っていた

というかここが忍びの里とは初耳だぞ

しかし・・・むごいな・・・村人全員磔とはね

入道とかいう妖怪の呪いだろうな

ますますあの墓場へ近づきたくなくなった

でもどうしても墓場の横を通る場合があるんだよな

嫌だな・・・

Concrete
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