短編2
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隣のおじいさん

この話は私が入院中に実際に体験した出来事です。

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今から10年程前に頸椎を損傷し手術をしました。手術は成功し入院生活となりました。私が入院していた棟は5階でその階は個人部屋のみで全部で5部屋ありました。

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私は首を手術したので始めの2週間程度は起き上がる事も寝返りをするのにも看護師さんに介助してもらわなければいけない状態でした。入院初日から夜になると隣の部屋からか細い声で「看護婦さーん。看護婦さーん。」と何度も言っているおじいさんの声がしていました。私は自由に動けないのと首の痛みで全く眠る事ができず少しイライラしていたのでその何度も看護師さんを呼ぶ声が不愉快で仕方ありませんでした。不愉快でしたが今日だけだろうと思い我慢しました。ところが次の日もその次の日も夜になると看護師さんを呼ぶ声がずっと聞こえていました。

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さすがに我慢も限界がありますし、枕元にはナースコールもあるので押せば良いじゃん!とイライラがピークに達した夜に寝返りを介助してくれていた看護師さんに隣のおじいさんの話をしました。話を聞いた看護師さんは初め驚いた表情を見せましたが直ぐに「あっ。分かりました。隣の患者さんにやんわり注意しておきますね。」って言ってくれたのでこれでやっと声から解放されると安心しました。

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ところがその日の夜も隣の部屋からか細い声で看護婦さーん。と呼ぶ声が聞こえましたがもう呆れてしまい私が歩けるようになったら直接注意してやると思っていました。次の日にお見舞いにきてくれた母親にこの事を話したら隣の部屋はあなたが入院した時からずっと空き室だよと言われあまりの恐怖に何も言えませんでした。

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その日の夜も声が聞こえていましたが寝返りを介助してくれていた看護師さんに隣の部屋ずっと空き室なんですね。母親から聞きました。と言うと「実は空き室なんです。騙すつもりはなかったのですが私が怖い思いをして入院させるのは申し訳ないと思い言えませんでした」と言われ私も私の事を思っての発言だと感じましたので迷惑かけてすいませんとだけ言い相変わらず声は聞こえましたが我慢しました。

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何日か経ち私も自力で歩けるようになったので隣の部屋を見に行ったのですが空き室でした。そこで冷静になり暫く考えたのですが個室と個室の間はけっこう離れていますし大声を出せば隣まで聞こえますが隣の部屋のおじいさんはか細い声でドアも閉まっていましたので聞こえる筈がないと思うと恐怖でいっぱいになり退院するまで夜になると毎晩聞こえましたが震えて夜を明かすことしかできませんでした。

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声の原因も話のおちもないですが私が入院中に体験した話でした。拙い文章を長々と最後まで読んでいただきありがとうございました。

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コメントありがとうございます。
気付いた日の夜から本当に恐怖でした。声が近づいてこないかなどネガティブな事ばかり考えてしまい余計に恐かったです。
結局声が近づいてくることはありませんでしたが……笑

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