中編4
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だんご○兄弟!だんご!

もう0時を回ってしまった

一緒にこのバーに来た友人はグスグスと泣きっぱなしだ

きっかけはここの常連さんがおふざけでリクエストした『だんご○兄弟』の曲のせいだった

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この友人、最近妻と娘をなくしており…

ああ、亡くなったんじゃないんだ

妻が不倫の果て離婚して子供まで連れてかれたってことだ

まあ、その娘さんがちいさくて可愛らしい子で、

よく『だんご○兄弟』に合わせて歌ってたのを思い出して悔し泣きってとこだ

泣きながらもチビチビ飲むもんだから中々帰れやしない

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ここはおごってやるから帰ろうか、って言葉を僕が言いかけた時だ

僕の隣に座ってた常連が

「そういや、だんご○兄弟っていや思い出話しがあってな」ってマスターに話しかけた

僕は内心お前がふざけてこんな曲リクエストしなけりゃ……って思った

今はもうバーにはマスター含めて4人しかいない

この常連さんも気が咎めてまだ帰らずにいるんだろう

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常連さんはマスターに話しかけてるテイだけど、友人のグズ泣きと、未だにかかりっぱの『だんご○兄弟』を除けば静かなもんだ

いやでも話が聞こえてきた

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 俺が大学生の頃の話しなんじゃけどな

季節はいまと同じ3月ごろで、卒業も決まって県外の大学から地元に戻って4月1日から就職も決まってたときじゃった

 もうここで飲むのも最後にしようと仲間内で昼から飲んで、1人アパートに真夜中歩いて帰ってたときな

 その頃は今みたいにコンビニなんてなかった

 あの時もたまたま深夜まで開いてるタバコ屋でタバコ買いに行こうと寄ってたんよ

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 そのタバコ屋のおばさんとは顔なじみになってて、もうこれでココに来るのも最後かもな、なんて話しをしてたんよ

 飲み屋街からちょっと歩いたとこにあるそこは街灯なんてロクになくて、おばさんだけ蛍光灯で浮かび上がったみたいになっとった

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 でも、そんな暗がりでエプロン姿の女が電柱の後ろにいたのを見つけて、ちょっとビビってたんよ

 おばさんとも最後か、って話ししてたら、餞別やってビール1缶くれてさ。

 おばさんもビール開けてさ

 あの女は気味わるいけど1杯だけ飲んで帰ろうと思っとった

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ビール2口くらい飲んだとき

いきなり

shake

「助けてくれ〜!」ってスーツ姿の男がこっ

ちに駆け込んで来たんよ

あの女か!って思ってギョッとしてたら違ったんで二重に驚いたなあ

そんで、その後ろからデカいハゲたおっさんが「ウチのヨメになに手だしとんじゃー!」

ってカタナ持って追っかけてきよるんよ

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男はオレに抱きついてすがってくるし、このままじゃオレまで巻き添えやん!?

でも、人間ホンマに驚いた時って固まるんやな。足が感覚なくて動かんかったわ

そうしとったら、電柱の影から

「あの人は悪くないの!!」って女が飛び出してきて

さっきのエプロンのおばんやん!って何が起こっとるかワケわからんかった

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なんか、そっからスローモーションみたいに見え始めて

オレの胸には抱きたくもない男おる

男の真後ろにエプロンおばはんおる

おっさんが斬りかかるんか思うたら、なんか腰だめにしてカタナごと突っ込むみたいになっとる

と、ここまでゆっくり頭回って

アカン!道連れにされる!

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shake

ドン!と無意識に男を突き飛ばせとった

男がおばはんに当たり、おばはんと男のかたまりからカタナが突き出した

どっちの腹も貫通するやなんて、めちゃくちゃな勢いであのおっさん走ったったんやな

なんか、冷静にそんなこと考えてたわ

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その後、タバコ屋のおばさんがいつの間に出てきとって、ビールの瓶でおっさんの頭思いっきりフルスイングして

「大丈夫か!?アンタ!?」

って声掛けられたまでは覚えとるんじゃけど

そっからどう帰ったんかよく覚えとらん

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覚えとるのは、血とクソのむせ返るような臭いと口から泡吹いたったおっさんの背中のもんもんだけじゃな

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そこまで常連さんは語ると友人に向かって

「まあ、あんたさんは良かったよ。まだ娘さんがおるけえ。」

「そんなクソ嫁のとこ出ていつか会いに来てくれる。」

「そんときに迎え入れてやる為にがんばらんとな」

と、熱いエールをくれた

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常連のおっさんがそのまま颯爽と帰ろうとしてるので僕は

「あっ、あの『だんご○兄弟』は!?」

「『だんご○兄弟』要素はどこに?」

と、無粋にも聞いてしまった

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「串刺しになって、結局3人とも死んどるじゃろ?見た目が似とったんよ、そんだけ」

おっさんが帰ったあと

「くだらねー」と僕は呟いた

「本当に」と友人が苦笑いした

もう泣いてはいなかった

Concrete
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