短編2
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想像力

夏場のことだ。おれは歩いて家に帰っていた、喉が渇いたので近くにあった自販機でドリンクを買った。

自販機の側にあるベンチに腰掛けて飲んでいた。するとハットを被ったマジシャンとも取れる容姿の男が声をかけてきた。

「Hi そこのお兄さんこちらをご覧ください」

おれは言われるまま見てしまった。

「痛いでしょう?」

男は手に持っていたカナブンの足を一本引きちぎった。

「いや、僕は痛くありませんが」返事をすると男は

男「人が虫や動物と違うところは何かご存知ですか?」

おれ「いえ、知りません」

男「想像力ですよ。たとえ虫に起こったことであってもひとたび自分の身として考えてしまえば痛みを感じることだってあります」

おれ「そうですか。僕は失礼します」

明らかに頭のおかしな人だと思ったからおれは逃げるように帰った。

その後は虫の受けた痛みなど分かるはずもなく、なんの異変もないまま1日は終わった。

そして再びあの自販機を通った時のこと。あの男が現れることは無かったが、あの日のことを思い出した。

そしておれは「なぜカナブンにしたのだろう?」と疑問を持った。自分ならカナブンなどではなく人形の足を引きちぎるだろうなと思った。その方が見せられた人の想像力を掻き立てると思ったからだ。

その後おれは右足が痛くなった。皮肉なことに自分ならこうすると思ったところから想像力が掻き立てられ、例の男が言った現象を自らの頭で実証してしまったのだ。

痛みはだんだんと強くなっていく、それにつれて苛立ちも増した。近くにいた猫を捕まえ殴りつけた。

虫取り網を持った少年に見られた、大人に告げ口されたら不味いと思いおれは走って逃げた。

いつの間にか足の痛みは消えていた。

おれは内心で「少年は眠れぬ夜を過ごすだろう」と思った。

Concrete
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