中編3
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非常食

ここ1ヶ月で日本は激変した。

未知のウィルスが蔓延し、ほとんどの人が亡くなっていく。

もしくは日本だけではないのかもしれない。

しかし、この1ヶ月はテレビの放映はなく、スマホも繋がらない状態だ。

どんなウィルスでも全人類の数%は抗体があるのだという。つまり絶対に死ぬと言われるウィルスでもわずかばかり死なない人がいる訳だ。

では、俺もその一人か?

でも、生きている方がつらいかもしれない。

ウィルス発生直後、色んな人が買いあさり、食料は店頭からほとんど消えている。

都会に育った俺に自給自足など出来るはずもない。

もうスーパーにもコンビニにも人がいないから、好きなだけ盗ってもいいが、そんなに在庫がある訳でもない。

この状況で銀行に泥棒に入っても誰も何も言わないだろうが、お金なんてなんの役にも立たない。

ただ、不思議なこともいくつかある。

電気は供給が続いているし、繋がらない状態が続いているがスマホの電波も届いている。

電気や電波は、ある程度自動運転なんだろう。

しかし、繋がらないスマホなど何の意味もない。

災害時には繋がりにくい状況が起こるからそれで繋がらないのか、他に原因があるのか。

今まで何の疑いもなく使ってきた俺が知る由もない。

俺が本屋から持ってきた漫画もレンタルショップから持ってきたDVDも見飽きてきた時だった。

スマホの着信音がなった。

久々に聞いたスマホの着信音。

それだけで嬉しくなった。

誰からだろうか?

着信の相手を見てみると元カノからだった。

この際、元カノからでも誰からでもいい。

今なら、普段はうざったい母親からの電話でも嬉しくなるだろう。

「もしもし。」

「良かった!出てくれた!!元気にしてる?………はずないね。この状況だもんね。」

「そうだね。どうしたの?…と聞くのも変だね。」

「うん。色んなところに電話したんだけどさ…。」

(失礼だな。と思ったが、そこには触れなかった。)

「あのさ、そっちの食料事情はどう?」

(あぁ。そういうことか…。食料がほしいのか…。)

俺の部屋のストックは1週間分。

近所のスーパーやコンビニからかき集めても2ヶ月だろう…。

でも、ここで邪(よこしま)な考えが浮かんだ。

食料を持って行けば感謝されるし、この状況で男女二人…。本能が子孫を残そうと思って、もう一度男女の仲になれるかも。

それに一人ではやる気しないが、二人なら少し遠くても食料や他の生存者を探す気力が湧くかもしれない。

「分かった。出来る限り持って行くよ。」

「あ…ありがとう!!」

話を聞くと、そこまで遠いところに住んでる訳ではなかった。

俺は車の免許を持っていなくて、車の運転をしたことはないが、この際運転しても誰も何も言わないだろう。

俺は食料を持ち出す前にディーラーに行き、車をもらった。

運転の仕方はゲームセンターやゴーカートと一緒だろうか?

そんなことを考えたがすぐに慣れた。

そして、いよいよ元カノとのご対面。

元カノがいるというアパートの玄関ドアを叩く。

「俺だよ!食料品持って来たよ!」

「ちょっと待って!」

ガチャ

扉が開いたかと思うと、そこには元カノが。

「久しぶり。」

「本当にありがとう…。」

元カノはいきなり抱きついて来た。

久々に直接人と話す温かさ、そして本当の人の温かさを感じて泣きそうになった。

しかし、男が泣いたら格好悪いから…。

ーッ!

そんなことを考えていたらお腹に激痛が走った。

視線を落とすと元カノが包丁を握っている。

「な…なんで?」

「いらっしゃい。私の非常食。」

Concrete
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