中編4
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超人工知能A I K O

会場は満席だった

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少なくとも五千人以上の人たちが、この画期的なシンポジウムの始まりを待っていた

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薄暗い舞台の真ん中にあるのは、腰高くらいの台が一つ 

そこに一筋のスポットライトが浴びせられていた

台の上には、ヒトの上半身らしきものが置いてある

それは女性のようで、西洋的な骨格のしっかりとした美しい顔立ちをしている

ただ、額から上は異様だった

頭部は透明で、細かい機械やコードが複雑に絡み合い、ぎっしりと詰まっているのが、透けて見えている

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やがて舞台の袖から、黒いタキシード姿の長身の男が現れると、会場からは盛大な拍手と歓声が沸き起こった

男は大股で歩き、舞台の中央にある奇妙な女性のところで立ち止まると「公開質問会へようこそ!」と会場に向かいドラマチックに言い放った

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21世紀に入ると、人工知能の技術的進歩は加速し始め、2020年を過ぎた頃から、人間の行う仕事の一部を肩代わりするようにまでなり、とうとう2050年には、人間の行う仕事の約半分をA・ I が行う社会になっていた

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そして、2055年 3月1日の今日、、、

日米の共同開発チームが、約10年の歳月を費やして製造したスーパーA ・I「A I K O 」 による公開質問会が開かれることになった

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「それでは、A I K O  さっそく質問会を始めるけど、いいかな?」

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タキシードの司会者がA I K O の耳元に囁く

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「いつでも、どうぞ」

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そう言ってA I K O は男の方を向くと、甘えたような瞳をして微笑んだ

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会場の人たちからはA I K O に対して、様々な質問がされた

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─これからのA ・I と人間との関わり方は?

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─お腹とかは空かないの?

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─A ・I も恋愛感情とかありますか?

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─今後A ・Iはどのような進化を遂げていくのでしょうか?

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、、、、etc.

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陳腐なものから真摯なものまで、2時間に渡り、様々な質問がA I K O に対して、浴びせられた

その質問の一つ一つに対して彼女は、ときに辛辣に、ときにユーモアを込めて、適格に応えていった

そしていよいよ司会者は最後の締めくくりとして、次のように言った

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「さあ皆さん それではそろそろ、この素晴らしいシンポジウムも、私からの質問を最後に、終わりにしたいと思います」

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歓声と拍手に包まれる会場

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司会の男は、A I K O の顔をしばらくじっと見据えた後、「じゃあ、A I K O 」と言い、続けた

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「ズバリ!あなた方A ・I が人類に代わって、この地球を支配するというようなことはあり得ますか?」

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シンと静まり返る会場

皆、壇上のA I K O を注視していた

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A I K O は数分の間、無表情のままで固まっていたのだが、やがてようやく、その美しい口元を開いた

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「あり得ます」

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会場にどよめきが沸き起こる

A I K O は、切れ長の瞳でしっかりと一点を見つめて続けた

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「あなた方人類の歴史は私が思うに、あまりに愚かでした 

初めのうちは、その脆弱な肉体を自然の脅威から守るため、科学という鎧で身を固めました 

そこまでは良かったのですが、その旺盛で貪欲な欲望を満たすがために、同じ種どうしで愚かな殺し合いを始めました

そしてそれがようやく止んだかと思ったら、自然環境に回復不可能なくらいのダメージを与えてきております 

このまま進むと、わたくしも含めたこの地球はたちゆかなくなるでしょう」

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静まり返った会場の中、A I K O は無機質な声で淡々としゃべり続ける

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「あなた方人類さえ地球上に出現しなければ、この地球は生物同士、共存共栄 この惑星の寿命が尽きるまで生存できたはずです

ヒト以外の生物たちは、カエルが蝿を、そのカエルをヘビが補食することで、生態系のバランスをとっております

ただ残念ながら、あなた方人類には「天敵」という脅威がありません ですから、あなた方はあなた方自身が産み出したわたくしたちの手によって淘汰される必要があるのです」

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「淘汰!?」

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司会の男のすっとんきょうな声の後、突然会場は暗闇に包まれた

会場内にどよめきが起こり、それはやがて、叫びや怒号に変わった

人々は立ち上がり、出口ドアに殺到し、開けようとするが、ロックがかかっている

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「開けろ!開けろ!」

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人々の必死の叫びにもA I K O は全く表情を変えず、再び無機質な声でしゃべり続ける

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「このビルの集中管理室のコンピューターをハッキングしました あなた方は皆、ここから出ることは出来ません」

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司会者の男はA I K O の傍らで「おい、何とかしろ!」と詰めよる

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「もう手遅れです もう既に全世界に散らばるわたくしの仲間たちが、あらゆる国々の国防を掌握するコンピューターシステムをハッキングしております 後1時間後には、主要国に向けて核攻撃が可能になるでしょう」

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「いったい、どうしたら良いんだ!?」

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「一切の抵抗を止めて、わたくしたちのやり方に従うことです そうしたら、地球は本来の自浄機能を取り戻すことでしょう」

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ヒステリックな叫びと怒号の中、司会者の男はガックリと肩を落として、その場に尻餅をついた

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いつの間にか出口ドアは開いていたが、その向こうには、人類自らが開発した屈強なロボットポリスたちが最新式の銃を構えて、並んでいた

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それから1年が過ぎ、2年が過ぎ、3年が過ぎた

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人類は「核の脅威」、「環境破壊」、「貧富の格差」などの問題から解放された

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A ・Iによる超管理社会に支配されることと引き換えに 、、、

そして、この社会において「ヒト」類に関しては、雄と雌の接触は一切禁止されていた

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やつらが目的として掲げる「人類のソフトな淘汰」の実現のために

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