長編10
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誘い~番外編②~

「もしもし?ん?どちら様ですかー、もしもーし?」

そう呼びかけても、電話の相手は何も答えない。誰?あなた。

「聞こえてますー?…電波悪いのかなあ?もしもーし…」

ブツッ!…ツー…ツー…ツー…

「うっそ…切れちゃった…」

「瑠美~どうした?」

バスルームから、恵太の声が聞こえた。まずい…恵太のスマホに勝手に出ちゃった事、気付かれた?

「ううん~何でもない!大丈夫~」

「そうか?瑠美も早くこっちおいで~」

「え~、やだ恥ずかしいよ」

「これからもっと恥ずかしいことするだろ(笑)ほらぁ早く!」

「うん…待ってて」

綾子も、こんな事してるのかな…?もしかしてさっきの番号、綾子から…?

繁華街の、ラブホの一室。もう通い慣れたってくらいに、私と恵太は空いてる時間を見計らっては、足繁く訪れていた。

決して純粋な出会いでも、付き合いでもない。恵太には綾子って本命が居るけど、彼女は大学で研究ばっかりしてて、彼氏の事なんてお構いなしだから…その寂しさを埋めてるってだけ。

もしバレても…そうさせたのは綾子だし、そっちにだって落ち度はあるんだ。

それに…まだうちら、20代前半だし。勉強だって大事なの分かるけどさ、こういう、恋愛や遊びに賭けたって、いいでしょ?

「そういえばさ、聞いた?あいつ夏休みにさー別荘借りるって!俺達も行こうぜ?」

泡で満たしたバスタブの中で、恵太が言った。

「あいつ」ってのは、同じ大学のいつも一緒にいる友達の1人。金持ちで、ほんとならこんなBとかCランクの大学には行ってないみたいだけど…まあ、うちらにしたら、「合宿」で行く宿はいつもいい場所が多いし、行きつけで顔パスのクラブとかもあるし…様様って感じ。

私達がこんな関係になってることはまだ、誰にも悟られてない。聞けば、別荘って言っても、よくあるログハウスみたいなのじゃなくて…もう、邸宅って感じの造りなんだとか。

お部屋も沢山あって、ちょっと行けばいい感じのレストランもあるみたい。

「行きたーい、でもお金どうしよ」

「それはあいつ持ちだから心配ないって!どうせ綾子は、夏休みもゼミだの研究だので俺の事なんかどうでもいいだろうし…瑠美と過ごす方が楽しいよ」

「マジ嬉しい!でも…あんまりくっついてたら、皆にバレちゃうよ…?」

「いいじゃんバレたって!それに…別荘着いたらさ、『良い事』あるよ…」

耳元で恵太が囁いた。

良い事…それは、仲間内の秘密の言葉で、世間でいう「複数プレイ」の事。

私達は、大学で知り合って間も無い頃から、頻繁にこういう事をし始めた。女子の1人なんかは、自宅に沢山連れ込んでヤってるって話も聞く。

でも、あんなのと一緒にはされたくない。だって私は、恵太だけが良いんだもの。あんな猿っぽいのと同類だなんて思われたくない。

「私が、他の男の子にされてても良いってこと…?」

「そうじゃないよ!…沢山部屋があるって言ったろ?俺たちはそこで、あいつらと混ざらずに、2人だけで過ごすの!な…?いいだろ?」

「そうしてくれるなら…行く…ねえ、『アレ』もちゃんと持ってきてよね?出来ちゃったらやだもん」

「わーったよ!まあ俺、瑠美に子供出来たとしてもいいけどな?嬉しいって」

「でも、まだ遊びたいもん…ママになるにはまだ早いの!」

「わかったわかった!(笑)…じゃあ、予行練習だけはちゃんとしとこうな!(笑)」

「なにそれぇ、全然ロマンチックじゃないよ~」

恵太は、言葉を遮るように体を寄せると、私をお姫様抱っこした。

そしてバスタブから出ると、体を拭くのも適当に…私をそのままベッドに押し倒した。

なんか、夢見てるみたい…こんなの、ティーン系のコミックでしか見たこと無かったのに…恵太ってこういうの得意なんだ…だったら、ますます綾子の事、ムカつくな。

「そうそう、思い出した…なんか別荘の近くにも、もっと『良い場所』があるんだって…」

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指定されていた時間よりも少し早く、私は駅に着いた。コンビニでお菓子を買って、ロータリーで待っていると、1台のワゴンが来て…それが恵太だと分かった。

「早いね、待った?」

「ううん!でも、ずーっと電車乗りっぱで、腰ダルい(笑)」

「悪ぃけど、これからもうちょっとかかるから、乗って!」

ワゴンは、麓の道からうねる山道を延々と登って行った。暫くすると鬱蒼とした森の中に、白い壁の建物が見え始めた。大きなガラス窓と、木製のバルコニー。別荘は思っていた以上に、大きく立派だった。

そして裏玄関から家の中に入ると…もうどこかから、嬌声が聞こえていた。本当なんだ。そして私達も…。心臓が高鳴って、何だか足が浮いてるような感覚になった。

「こっちだよ」

恵太に案内されて、真横の赤い絨毯が敷かれた階段を上り、そして2階の廊下の、突き当りのドアを開けた。するとそこには、年季の入った立派な家具と、奥には天蓋付きの…大きなベッドが置いてあった。

「すごい…」

と、言うか言わないかのタイミングで…恵太は早速、私をベッドに連れて体を押し倒した。

それから私と恵太は夢中に体を貪った。恵太が綾子の事を忘れてくれるようにと強く願いながら、多少乱暴でも私は恵太を受け入れた。

私達の事は皆には内緒で来ているから、恵太は存在を隠して行動するよう強いた。少し窮屈に感じたけど…この家で、密かに私達もいるんだってスリルにゾクゾクした。

そして…スリルを感じたい気持ちは、段々とこの部屋だけじゃ収まり切らなくなっていた。

「ねえ…こないだ言ってた、『良い所』って…どこにあるの?」

「良い所…?」

「ほら、ホテルで言ってたやつ!」

「ああ…あそこな?…や、俺さ…ちょっと勘違いしてたんだ…」

「どういう事?」

「あれな…心霊スポットの事言ってたみたいでさ…俺、青姦出来る場所かと思ってて…」

「えぇ…もうやめてよー」

「ごめんな?でも、まだバレてないしこのままでいいよな?」

「でもさ…そこじゃなければ…場所はあるんだよね…?少しで良いから、行きたいな…」

恵太は少しだけな、と言って、私の希望を快諾してくれた。行きの車中では薄暗いと思っていた森の中も、よくよく見れば所々に青空が見えて心地良い。恵太と2人っきり…綾子は、こんなのも知らずにきっと、研究室に籠りっきりなんだろう…

そんな事を考えながら暫く道を下ると…途中で道幅が広くなり、辺りが明るさを増した。

そして、開けた道を更に下ったその先に…突如私達の目の前に、洞窟が姿を現した。

「すごい…こんな所に?」

洞窟だけじゃない。手前には池があって…それは見たことが無い程に澄み切っていて、夕方の、陽の光で照らされた箇所が…青く輝いていた。

「見て!綺麗…恵太!恵太?」

恵太は、何故か呆然とした表情で立ち尽くしてしていた。よく見ると、微かに足元が震えている。

「おい…帰るぞ…」

「え…何で?こんなに綺麗なのに?」

「どこがだよ?お前…よく見ろよ…」

恵太には洞窟も池も、ドロドロと黒く汚く見えるらしい。何で?こんなにキレイなのに…しかも何か私…視界がほわーんとして…気持ち良い…

「ここら辺一体さ、さっき話したけど…心霊スポットなんだって…」

「…そうなの?」

「崎野っているだろ?あいつがどっかから見つけて来たんだよ…マジでヤバい所だって…何で…なんで俺達いつの間に…」

「どういう事…?」

「別荘からでも、車じゃないと行けない距離なんだよ…峠1つ越えた所だって…え…何で…」

「恵ちゃん落ち着いて?ホラ…洞窟の奥…おやしろ?みたいなの見えるよ…怖くないよ私」

「それだよ…!近付いたらヤバいんだって!!帰ろ?な?また部屋に戻ってさ…」

「やだ!何か…隠れてるの飽きたよ…」

「仕方無いだろ?瑠美だってそれを承知で来たんだろ?」

「ねぇ…ここでしよ?」

「はっ…?本気で言ってんの?」

「だって…ここなら、誰にも邪魔されないし大丈夫!ね…?」

何故か分かんない…でも、何故かどうしても、ここでしたくてたまらなくなっていた。何で?

「…瑠美、もしかしてお前、キメてんのか?…目ぇ充血してるぞ?」

「そうなのかな…分かんない…でも、軽いヤツだから大丈夫だよ…」

「…マジかよ…」

「ねえ~早くう…私、もう脱いじゃいたいよお!!!」

「おい!やめろよ!俺、帰るから…あいつらに迎えに来てもらうわ…」

トロンとした意識…脳みそが熱くて溶けそうなのは薬のせいじゃない…だって私を見つめる恵太の瞳…綺麗だもん。しがみついて、離したくない。

「恵太…好き…私、恵太の彼女になりたい…」

「離せ!!!気持ち悪ぃんだよ!!お前もこの場所も!!!」

恵太は、そう言って私の体を乱暴に引き剥がした。

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「恵ちゃん…」

「いつからお前に『恵ちゃん』って呼んでいいっつったよ?」

「ごめん…でも…でも私、ほんとに恵太君の事…」

「そういうのいい!要らない…はーあ、するだけの関係で心地良いって…そう言ったの誰だよ?お前だろ?」

「そうだけど!そうだけどさぁ…なんで?ほったらかしにするような、あんな女のどこがいいの!?」

「うるせぇよ!何で俺の好き嫌いに口出ししようとするの?綾子はさ、男にうつつ抜かす様な、お前みてぇな女と違うんだよ!」

「そうさせたのは恵太じゃん!じゃあ何で誘って来たの?ヤりたいからでしょ!?綾子がヤらせてくれないからでしょ!!!」

「綾子がヤらせてくれないから?ハハッ…マジで言ってんの?てか、何にも知らない訳?」

「え…?」

「マジかあいつ…何にも教えてないんだな…これ、見ろよ…」

恵太が私に、スマホの画面を見せた。そこには…元カレの礼介が書いたメールの文面が写っていた。

私が、「好きなだけ、好きな時間で」ヤらせてくれる…そんな内容の。

「お前は、俺達のダッチワイフだったの!礼介も、お前の事そうだと思ってたから誘ったんだぜ?気付かなかったの?馬鹿だね(笑)」

「そんな…そんな筈ないもん…礼介は、指輪とか買ってくれたんだよ?誕生日に…」

「その指輪、お前どうした?『ダサいから売っちゃった』って話したらしいじゃん…洋子とかから聞いたよ?『大して金にもならなかった』って…」

「……」

「おい!…弁明の余地も無いってか…早く帰れよ、消えろよブス!…まあ、身体だけは良かったよ?AV女優レベルでな!ヤりたいならそっち目指せば―――――」

バキツ!!!ガンッ!!ガンッ!!!ガンガンガン!!!ゴキュッ…パキッ…

さっきまで、ベラベラとまくし立ててた恵太の頭が、ただの「肉の塊」になった。

後ろを向いちゃったのが運の尽きだね?私、怒ると結構、収拾つかないんだよ?そこら辺のちょっと大きめの石で叩いただけで…こんなになっちゃうんだね?あっけない。

横たわった体の、下半身のポケットから金属の小物がはみ出ていた。手に取ると、それはサバイバルナイフで…

「わぁ、ちゃんと細かく刻めるようになってる…恵ちゃんってこういうの、気が利くよね」

ピクピクと小刻みに震えてる恵太の上に跨ると…僅かに、履いているショーツの下で…恵太の性器が膨らんでるのが分かった。猿みたい…死ぬ間際まで、勃起してるなんて。

「しょうがないなぁ…恵ちゃん…私がちゃんと、抜いてあげるね?」

辺りはすっかり陽が落ちていた。月明かりの青い池も…綺麗。そんな中、ポタポタと情けない感じに精液を垂れ流して、果てた恵太の身体…

ちょっと時間がかかるけど、私…腕が細いし重いもの全然持てないから、仕方ないよね…仕方ないもん…

「おーい!崎野ー!おーい!返事しろー!」

誰かの声がする。崎野…ああ、あの女…なんか偉そうな態度の子だよね?何かあったのかな…

「おーい!誰かいるかー!」

「駄目だ!そっちは行っちゃいかん!」

こんな所に来ても、何も無いし。

でも、さっきから何か…後ろの洞窟から風が吹いてくる。冷たい風…肩に当たる度に、背中全体が震える。

「――ァ――ジテ―」

女の声だ。崎野って女?

「――キェ――シ―」

老人みたいな声にも似てるし…男の人の声にも似てる。誰?

「―グ―ウ―シテ――」

何を言ってるの?ごちゃごちゃうるさいなぁ、やっと最後、頭を切ろうとしたのに…

「――ツノ――シテ…クレルナ」

やめてよ…こっちに来ないでよ…!来ないでよおお!

「ヨモツノヒメノキタルルミチ、ケガシテクレルナ」

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「お兄ちゃん!ねえあっちの方って何があるの?」

「あっちは神様の住むところだから行っちゃだめなんだよ」

「なんでー?なんで神様がいるのに、お願いとかしちゃいけないの?」

「こわーい神様なんだって、ばあちゃんも言ってたろ?ミサキ、もう俺たち、今日は沢山遊んだろ、こんな時間まで起きてるって分かったら、また母ちゃんに怒られるぞ」

「え~まだ眠くないのに…」

「バレて母ちゃんに怒られても俺しーらね!…ほら!窓閉めて。また風邪ひくだろ!」

「はぁ~い…もう寝る~…ん?」

「どうした?」

「なんかね、今ね…声がしたの…あっちのほう!神様の方から…女の人…」

「バカ!そんな訳無いよ!」

「したもん!ギャアーって声、大きな声したもん!」

「ミサキ、多分それは山の獣の声だ、猿だよ猿!喧嘩してんじゃね?ほら寝るよ!」

「猿かぁー!変な鳴き声だね!面白ーい!キャハハハ!ギャーオ!ギャーオ!ギャーオ…」

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