心霊写真をどうしても撮りたかった男の話

中編4
  • 表示切替
  • 使い方

心霊写真をどうしても撮りたかった男の話

俺の大学の友人にFというやつがいたんだけど、こいつ、牛乳瓶の底みたいな黒淵の眼鏡をかけていて、年がら年中、黒のタートルネックのセーターを着ている変なやつだった

こいつがまた 心霊写真大好き人間で、そのような類いの本やテレビ、ネットなどは常にチェックしていたんだ

もちろん本人も、幽霊が出没するという場所に出向いては、パチパチ撮っているんだけど、残念ながら未だに、いわゆる心霊写真というのは撮れていなかった

nextpage

これは以前、キャンパスで会ったときのことなんだけど、あいつ、こんなことを真剣な顔で言ってたな

nextpage

「実はさ、俺、すごいことに気付いたんだ」

nextpage

「何を?」

nextpage

「今まで、いろんな怖い場所に行っては、いっぱい写真を撮ってきたんだけど、未だに心霊写真が撮れない理由が」

nextpage

「へぇ、面白いな 何だよ、その理由というのは?」

nextpage

「俺が思うに『霊』たちというのは恐らく、すごいビビりで、俺たちの何百倍も敏感な連中だと思うんだ だからさあ、俺のように、写そう写そう、と思って撮っている人間には、写らないように逃げているんじゃないかな」

nextpage

「はあ?何だよそれ?だとしたらさあ、お前のように願望が強いやつには絶対、心霊写真とか撮れないんじゃないか?」

nextpage

「それが、出来るんだよ」

nextpage

「何だよそれ?」

nextpage

「フェイントだよ」

nextpage

「フェイント?」

nextpage

「こっちを撮るぞ、と見せかけて、いきなり反対方向を撮るんだよ ほら、バレーでもあるだろう

こっちをスパイクする、と見せかけて、違うところに打つのが」

nextpage

「お前、真面目に言ってるのか?」

nextpage

「ああ、もちろん! 

実はさ今度の日曜日に、ネットでも有名な心霊スポットに行くんだけど、そこで、このやり方を試してみようと思ってる」

nextpage

俺はF の浅はかな考えに呆れてしまったが、あいつどうやら大真面目だったから、とりあえず、その時は「頑張れよ」と、言ってやった

separator

それから次にF と会ったのは、その2週間後で、学内のカフェだったな

ただあいつ、やけに暗くて何だか元気がなかったんだ

俺は尋ねた

nextpage

「おい、心霊写真は撮れたのか?」

nextpage

「ああ、、、」

nextpage

「ええ!本当かよ じゃあ、見せてくれよ」

nextpage

Fはなぜだか大きくため息をつくと、いつものスマホを出してきて、おずおずと画面を見せてくれた

nextpage

そこには作り物じゃないか、と思うくらいに鮮明な心霊写真が映っていた

写真は3枚あって、その全てに、いわゆる「霊」らしき者が映り込んでいる

nextpage

場所は、一家心中があったという郊外の一軒家で、

1枚めは、ヒビの入った大きな窓の向こう側に、顔だけがあり、

2枚めは、干からびた浴槽の横に立っている

そして、3枚めは、大人の背丈くらいある古時計の隣に、立っていた

nextpage

ただ映っているのは全部、髪を七三に分けて背広を着た、実直な感じの男性で、何だか悲しげな目でF の背中を見詰めているように見える

そして不思議なのは、画面内の情景はカラーだったのだが、この男性には色彩がなく、まるで古い写真のように色褪せていた

nextpage

「すごいな これ全部、例の方法で撮れたのか?」

nextpage

F は黙って頷き、こう言った

nextpage

「悪いけど俺、帰るわ」

nextpage

これが、F の最後の言葉だった

separator

それから、3日後のこと

F は死んだ、、、

nextpage

朝方、遅くなっても部屋から出てこないから、家の人が見に行ったら、布団の中で冷たくなっていたらしい

死因は、突然の心臓発作ということだった

nextpage

俺は友人とともに夜、通夜に行った

畳の部屋の奥に作られた花壇の中には、生前のF の写真が飾られており、その前には布団が敷かれていて、白装束のFが横たわっていた

今にも起き上がりそうな様子で、、、

俺はF の母親と弟に挨拶をし、線香をあげた

それからはもう帰ろうと玄関に行こうとしたときだった

nextpage

「あの、、、」

nextpage

と突然、後ろからF の母親が声をかけてきたので、振り向くと、「お願いですから、もう少し居てやってくださいな」と言う

そんな風に言われたら、俺も断る理由もなかったから、もう少し居ることにした

nextpage

さっきの畳の部屋に戻り、また座布団に座って、出されたお茶を飲んでいると、母親が俺に、F の昔のアルバムを見せてくれた

そこには、幼いころのF や、家族たちの思い出の写真がいっぱい貼ってあった

Fの母親は、ご主人を交通事故で亡くしたらしく、

女手一つで、二人の子供を育ててきたらしい

nextpage

そんな話を聞きながら何ページか見ていると、俺はふと1枚の写真に目が止まった

そして、その写真をまじまじと見た瞬間、冷たい何かが背中を走り、心臓が猛烈に拍動を始めた

nextpage

それは、動物園でのワンショット

nextpage

遊具で遊ぶF に寄り添う背広の男性、、、

それは正に、あのF が最後に撮った心霊写真に映っていた男性だった

separator

そして、それは、F の父親だった

Concrete
コメント怖い
5
6
  • コメント
  • 作者の作品
  • タグ

@山時雨yamasigure 読心術ではなく読解力では?

返信
表示
ネタバレ注意
返信
表示
ネタバレ注意
返信

@山時雨yamasigure 様
怖いポチ、コメント ありがとうございます

返信
表示
ネタバレ注意
返信