短編2
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カレーライスの店

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 出先からの帰りに複雑な路地裏に入り込んでしまった。陽はまだあるが、この時間なら直帰しても問題はないだろう。となると────。

 僕は手頃な定食屋がないかときょろきょろしながら歩き回った。最寄りの駅の大体の方角は掴んでいたし、いざとなれば携帯のGPSがある。

 ふと目に入ったのは、小さな立て看板。

『カレー』

 黄色のバックライトに茶色く浮かび上がるその文字を見て、随分とシンプルだなと思った。ビル一階の細長いその店は、外扉からは奥が見えにくくなっていた。しかしなんとなく雰囲気がありそうだったので、ここで夕食を済ませることにした。

「いらっしゃい」

 カウンター席が十五ばかりで、他には取り立てて言うこともない質素な内装だった。客はまだ誰もいなかった。カレーの香りが店内に漂っていて、僕の食欲を掻き立てた。

「カツカレー頼むよ」

「あいよ」

不愛想なおやじの声が返ってきたが気にはならなかった。こういう店は美味しいと相場が決まっている。

「ほい、カツカレーね」

 おやじが差し出したカツカレーのうまそうなこと。こんがりきつね色に揚げたカツに、黒みがかったルーがたっぷりと乗って香ばしい匂いを運んでくる。

 僕はさっそく一口食べて、あまりの美味しさに唸ってしまった。

「美味しいよ、おやじさん」

 おやじがにっこり微笑んで頷いた。一見不愛想だがいい店主じゃないか。やはり外れではなかった。

 瞬く間に平らげた僕はもう一杯欲しくなって、お代わりを所望した。すると店主は自分の頭をぱかりと開けて、そこからたっぷりのルーをついでくれた。これまた絶品だったのだが、一つ問題が発生した。

 店主が倒れてしまったのだ。まあ当然か。頭の中身なんて抜いたらそうなるだろう。仕方がない。

 僕は店主の身を切り刻んで、ヒレカツやソーセージを作り始めた。初めてだったが、やってみると案外なんとかなるものだ。

 そこへふらりと新しい客が現れた。

「おやじさん、ソーセージカレー」

「あいよ」

僕は自分の頭をかぱりと開いた。香ばしいルーの香りが漂ってきた。

Concrete
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