短編2
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商店街の横路

僕は、とある商店街から徒歩2分のマンションに住んでいます。その商店街は、元々戦後の『闇市』から始まりました。

闇市は、基本的に違法なため、警察の捜査が頻繁に行われていました。その際、商人達が逃亡し易いように、商店街は、迷路のような造りになっています。

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戦後から今まで、ずっと変わらずに続いてきた商店街は、夜になると、昼間の活気も無くなり、元々の闇市の性質もあってか、独特な雰囲気があります。そのような商店街ですので、昔から様々な話が伝わっています。

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僕の父親は、小さい頃に、おばあちゃん(僕の曾祖母)から、『人攫いが出るから、1人で行っちゃダメよ』と口を酸っぱくして言われたそうです。実際に父親の保育園の同級生が、商店街に1人で行ったきり、行方不明になったとか。

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そんな商店街で、僕が体験した話を書きます。僕がまだ大学生だった頃、飲み会で深夜を回り、帰路についていました。小さな豆電球がポツンと点いた路地をおぼつかない足取りで進みます。

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すると、正面右側の路地を黄緑色のキャップをかぶった幼児が、走っていったのを見ました。

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地域柄、ネグレクトが多発していたので、そんなところであろうと思いました。そして、その右側の路地を一瞥しました。そこは、シャッターのしまっている店が並ぶ、袋小路があり、シンと静まり返っています。子供が仮に店に入ったら音が鳴ってもおかしくありません。

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不思議に思いつつも、帰宅を急ぎました。その数日後の昼間に、例の袋小路をのぞいてみました。明るい時間帯に行き、初めて気づきましたが、袋小路の突き当たりの店は、扉に警察の立入禁止テープが貼り付けてあり、上部には、貼り紙がしてあります。

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近づいて見てみると、そこには、『この家への立ち入りを禁ず。 ○○県警 公安部』の文字がありました。

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その家は、元々、北関係の方々が住んでいたそうで、度々警察と、トラブルになっていたそうです。あの夜見た、幼児は何だったのでしょうか? 父親の話との因果関係を感じずにはいられない体験でした。

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