中編6
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アイアン・メイデン

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友人と体験した話です。

友人二人と休日に小田原と箱根湯本へ行く計画を立て、当日は友人が運転する車で自分ともう一人の友人を乗せて目的地に向かいました。

自分以外の二人は普段あまり仲が良くなく、度々喧嘩をする仲なのですがその日は一切揉める事なく過ごす事ができていました。

龍平が運転し、助手席に自分が座り、後部座席に竜一が乗っていました。

龍「最初に箱根湯本に向かうんだよな?」

群「ああ、そこで少し観光して、次に小田原城だね」

竜「龍平、やっぱり運転上手いね」

龍「お前も運転上手いだろ」

竜「どうかな...」

龍「昔はよくお前の運転する車に乗ってたよな、あの時が懐かしいよ」

竜「うん、色々あったけど楽しかったね」

二人が元の仲の良い関係に戻ったらいいな、という期待を込めてこの小旅行を計画したのですが、幸先の良いスタートを切る事ができ内心嬉しく思っていました。

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車内で思い出話をしたり、お互いの近況について話していると箱根に到着しました。

左右にある売店は観光客でいっぱいで、殆どが海外の人でした。

駐車場に車を停めると、温泉街を散策しに歩きました。

歩きながら時々すれ違う海外の観光客の人達から会釈をされ、こちらも会釈し返すという普段あまり体験しないその時間が新鮮に感じ周りの綺麗な風景も相まって、鮮やかで温かい空気に包まれるような心地よさを感じました。

ゆっくり歩きながら普段は気が付かないような空の色や周りの声を見たり聞いたりすると、意外な発見があったり見慣れているものが違って見えたり、歓声が研ぎ澄まされるようでした。

それぞれ行きたい場所を周り終えると、箱根湯本の土産店や飲食店へと歩きました。

龍「何年ぶりだろう、この感じ、懐かしいな」

竜「小腹が空いた、何か食べたい」

群「懐かしい...か、何回か来た事あるけど、毎回温泉まんじゅう買ってたなあ。温泉まんじゅう買ってきていいか?」

それぞれ気になった土産屋に入り用が済んだらここへ集まろうと、温泉まんじゅう屋を集合場所として一度バラバラになりました。

自分は温泉まんじゅう屋に用があったので、待ち合わせ場所であるその店の中で自分用と土産用の品をじっくり見ていました。店主の人と話をしていたら横から女性に声をかけられました。

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sound:29

「それ、いいですよね~美味しそう」

そうですねと相手の方へ顔を向けると、結構至近距離に顔があり思わず声をあげそうになりました。

セミロングの茶髪の女性がニヤァと笑顔で話しかけてきました。

この人、人との距離感が分からない人なのかもしれないな...

こっちが返答する前に1人で捲し立てるように話すので、適当に相槌をうちながら少しずつ少しずつ相手から離れました。

女性はお土産の温泉まんじゅうを手に取るとぶつぶつ呟きはじめました。

気づかれないように店の外に出ると

shake

グイッ

竜「ちょっと、こっち」

龍「...」

群「どうした?」

友人二人が既に待っていたようで、そのうちに1人に腕をひかれました。どうしたのか理由を聞いても車に乗ってから話すの一点張りで、駐車場までの距離はみんな無言で歩いていました。

乗車し小田原城に向かう道の途中にあった蕎麦屋に入った所で二人が話し始めました。

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龍「まず、俺から話す。土産を買って色んな店を周っていたんだ、小腹も好いてたし何か食べようと思ってソフトクリームの店に入った。はちみつがかかってるソフトクリームを見つけて、美味しそうだと思ってそれを頼んで店の横で食べていた。すると突然、怪しい女の人に声をかけられた。それ、いいですよね~美味しそうって。表情や雰囲気からして近寄ってはいけないものがあったから離れようとしたんだ。そうしたら突然腕を掴まれて、あなたの事知ってますよずっと見ていますからぁって」

竜「その人...お前のバンドのファンの人じゃないの」

龍「分からん、腕を掴んできたから振り払ったら、ほほほほって言いながら走って逃げ行った」

竜「俺が会った変な女も、同じ人。腕は掴まれなかったけど、いつの間にか真横に立っていて、耳元で呪文の様な気味の悪い言葉を唱えられたよ。直ぐにその場を離れたから、それだけだけど」

群「なんか、怖いね」

竜「お前に声をかけていた女が、俺達が遭遇した女だった」

龍「そして、もっと怖いのが...その女が今この店内に居る」

竜「怖い事言わないでよ、いるわけない...」

店内を見回すと、龍平が小声で入口に一番近い座敷の席に居る、と言いその場所をそっと見てみると確かにさっき遭遇した女性が座っていました。グラスに口をつけては置く、つけては置くという動作をロボットのように繰り返しているのが見えました。

3人で急いで蕎麦を口に掻き込み素早く会計を済ませ店を出ました。

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小田原城へ向かう車内では、あの女性の事は忘れよう、観光を楽しもうという事になり、竜一がお祓いと称し車内でヘビメタの曲をかけるとどんよりしていた車内の空気が明るいものに変わった気がしました。

現地では気持ちを切り替え、それぞれ観光を楽しみました。天守閣や常盤木門を写真に収めたり、巨松を観たり、本丸売店に行ったり。途中で龍平と別行動になり竜一と周り、一通り周り終えると龍平に電話をかけました。

竜「電話にでないな...携帯が鳴ってるの気がつかないのかも」

群「メールで連絡してみようか」

竜「うん...あ、メールきた。駐車場で会おう、だって。げっ...」

群「どうした?」

竜「さっきの女がここに居るらしい...話しかけられたけど逃げたって...蛇みたいな女だね...」

群「気持ち悪..もう龍平駐車場で待ってるかも、急ごう」

二人で駐車場へと急ぐとそこには、一足早く龍平が立っていました。こちらに気が付くと、車に乗るようジェスチャーで合図しました。

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車に乗り込むと勢いよく発進し、小田原から離れ暫くしてから龍平が小田原城での襲撃の話をしてくれました。 

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単独行動をしてそろそろ合流しようと思っていた時に、不意にどこからかあの女性が現れ腕を掴んできたそうです。周りにはあまり観光客の姿がなかったので、もしかすると人が少なくなるのを待っていたのかもしれないと言っていました。腕を掴みながら必死の形相で、あなたを知っていますずっと見ていますと叫んだそうです。

意外と女性の腕力が強く振り払うのが大変だったようで、左腕には引っ掻き傷がついていました。

周りに助けを求めようと離れた場所にいる観光客の人達を見ても、彼らは目を背けていたので諦めてどうにか振り切って逃げたそうです。

竜一がお祓いしようと言い、再び車内にヘビメタの曲をかけ気持ちを盛り上げて帰りました。

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music:2

帰宅後、PCに今日撮った写真を移していると、龍平から電話がかかってきました。

電話口の声は震え、とても怯えた様子でした。

龍「あいつが来た、あの女が部屋まで来た...姿は無いけど、あの女の声がしたんだよ」

群「車で追ってきたって事か?小田原城から出るとき後ろを追ってくる車はなかった、あの女の人みたいな人は見かけなかったよ、部屋の中に居るってことか?警察呼んだ方がいいぞ、今からそっち行こうか?」

龍「いや、部屋の中で声がしただけだ...今は、大丈夫だ...帰って来て、ほほほって声がして、玄関とベランダに塩を撒いた...そうしたら、今度は耳元で、ずっと見ていますって声がした...大声出したらまた、ほほほって声がして...怖くなって、ヘビメタの曲を大音量で流したら声が止んだ。変な気配の様なものも感じなくなった...多分、もう居ないと思う...ヘビメタって凄いな」

群「うん、凄いな」

この日以来あの女性に遭遇したり、声がするという事はなかったようです。

あの女性が何者だったのか、部屋の中で聞こえた声は何だったのか、今でもわかりません。

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