中編4
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優しい看護婦さん

もう17年ほど前に経験した出来事です。

長文・乱文にお付き合い下さい。

当時、学生だった私は体調不良から地元の病院を受診しました。

ところが血液検査の結果、難病の疑いがあるという事で

1時間ほど離れた大学病院に入院する事になりました。

正直その時は、「大した事はないだろう」と思って学校の単位の事ばかり気になっていました。

でも、いざ入院してみるといろんな科を受診させられ検査検査検査の毎日。

病気についての説明も受け、不安な毎日でした。

「治療できないので、治らない」と言われた時は、

「どうせ治らないなら、どうなってもいいや」と半ば自暴自棄な気持ちにもなっていました。

そんな私を見て、担当の看護師Hさんが親身になって話を聞いてくれたり、

気分転換になれば、と友達の女医さんにお願いして大学内(学校のほうです)を

案内してくれるよう頼んでくれたり、

仕事以外でも、夜の病院内を探検したり、

一緒に病院の周りを散歩したり・・・

今思い出しても、Hさんがいなければ、

きっと私は通院もせず

もしかすると今頃死んでいたかもしれません。

検査の結果、みごとに国の難病指定のお墨付きをもらいましたが、

無事に退院、学校の関係で通院は地元の病院でしたが、

1年に1回は、大学病院で検査と療養をしていたので、

Hさんとも会っていました。

しかし、学校を何とか無事に卒業し

5年ほど入院生活から遠ざかっていた時、

病気が急激に悪化、緊急入院をしました。

入院してしばらくは、普通に動く事もまともにできない状態だったので、

「Hさん、見かけないな」、とは思いましたが

移動は珍しい事ではないので誰にも聞く事はありませんでした。

随分と症状が落ち着いてきたある日、

夕食を食べた後、外の景色を眺めていた時、

「たえちゃん」と声を掛けられたのです。

聞き覚えのある声に、嬉しさのあまり「Hさん!!」と大声で答えながら振り返ると

ベッドの横にHさんが笑顔で立っていました。

「久し振りだね~」とか会っていなかった時の話をして盛り上がっていたのですが、

「そういえば、見かけなかったけど別の病棟にいるの?」

と聞いてみたのです。

Hさんは、気のせいか少し寂しそうな感じの笑顔で

「そうなの。でも、時々この病棟にも来る事があるんだよ」

と話してくれました。

1時間ほど話をしていたのですが、

「身体に悪いし、実は仕事抜けさせてもらって来てるから戻るね」

と手を振って分かれました。

ちなみに、私は重症だったので個室でした。

その後、消灯前の検温に来た看護師さん(この看護師さんも、私の事もHさんの事もよく知っています)

にHさんの話をしたんです。

そのとたん、「顔色が変わるって、こういう事なんだ」と関心してしまう程にみるみる顔色が変わり

凄い汗と、手が震えていました。

私のほうがビックリした位です。

「え。。。どうしたの?」と聞くと、

「何でもないよ。。。」と震える声と引きつった笑顔を見せていました。

あまりの動揺っぷりに、私の検温をする事無く、代車をガチャガチャと早足で押しながら、「何かあったらナースコール押してね」

と、私を見る事無く早口で喋って出て行ってしまいました。

数日後、その看護師さんからHさんは前の年に癌で亡くなった、

と教えてくれました。

よくよく考えてみると、

(他の病院ではわかりませんが)

私の入院する大学病院では、他の病棟にたまに勤務につく、という事はないんです。

それに、Hさんが来た時も帰る時も、足音がしていなかった事に気付きました。

Hさんは、よく見るサンダルみたいなナースシューズを履いていたので、

足音は聞こえるはずなのです。

なにより、Hさんが来た時私は夜の街を眺めていたわけですから、

本来であれば、窓ガラスにHさんの姿が映るはずなのですが

どう考えても映っていませんでした。

だから声を掛けられるまで気付かなかったのです。

それ以後、Hさんに会う事はありません。

実は学生時代に入院していた時に知り合った同じ病気の人が2人も亡くなった、

という話を聞いて、「自分もこの先どうなるんだろう」と不安になって外を眺めていた時にHさんが部屋に来てくれたんです。

きっと私の事を心配して、励ましに来てくれたんだと思います。

これからも、辛いこと苦しいことがあると思います。

でも、自分の家族のように私を心配してくれているHさんのためにも、

いつも支えてくれる家族のためにも、

私は、これからも前向きに生きていこうと思います。

怖い話投稿:ホラーテラー たえさん  

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