中編2
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覆面狂時代

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化学物質過敏症に於ける重度の患者は洗剤さえ扱えない。

Chemical Sensitivity.

煙草が一般的に嫌がられるのは当然のことだが、

CSを持つ者はその数万分の一の微量な毒物にも拒否反応が表れる。

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この病気は今のところ、世間一般にあまり知られていない。

アスベストが昔は問題視されなかったように、知られていない。

消化器系の機能の減衰や皮膚のかゆみ、

呼吸の苦しさや目のかすみなど、症状は人によって様々だ。

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私の場合はCSではなく心因性のものだけれど、

ある特定の整髪料には頭痛の発症と耐えがたい不安を感じる。

満員電車には乗れないし、

愛する映画も映画館で観ることはできない。

クライマックスでどうしても我慢できずに抜け出して、

トイレで嘔吐していたら映画が終わっていたなんて経験があなたにもあるだろうか?

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化学物質過敏症(CS)の妻を持つ男性のブログを読んでいた時期がある。

彼の奥さんはどこへ行ってもこの症状を理解されず、飛び降り自殺を試みた。

マンション階段の踊り場から身を乗り出した奥さんを助けようとして脚を抱えたけれど、

支えきれずに彼女は落ちて亡くなった。

いわゆる状況証拠から、

なんと彼は自殺幇助で有罪の判決を受けた。

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CSについて理解を広めようと書かれていたそのブログは、

ある日、唐突に、更新を停止した。

最後の記事は彼の友人が打ったもので、

彼が自宅の浴室で亡くなっていたという内容だった。

詳細は明示されていなかった……。

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“触覚防衛”についてあなたは御存知だろうか?

小さな刺激にも強いストレスを受けてしまう症状のことで、

これもあまり知られていない。

この特徴を持つ人々は、

マスクの着用がどうしても出来ない場合がある。

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つい最近、マスクをしていない一人歩きの幼い女の子に対して、

公衆の面前で成人男性が恥ずかしげもなく恫喝したという事件があった。

それが大人のすることか?

それが日本の正義なのか?

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コロナ鬱なんて鬱を知らない暇人どもの造語を広めるより先に、

専門家気取りで混乱を産むだけの週刊紙の噂話よりさらに以前に、

いい歳のくせに買い占めで人に迷惑をかけるよりもっともっときちんと、

語られるべきことがあったはずだ。

守られるべき人々がいるはずだ。

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今後、様々な症状でマスクの着用ができない方々の存在が浮き彫りになってくるはずです。

その時あなたはそれらの方々に「引きこもれ!」と罵声を浴びせるかもしれません。

例えばその人がほんとうに部屋に引き籠もってしまって、誰にも理解されず世界から拒否された場合、

次にどんな行動を選ぶでしょうか?

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その時あなたは自分自身が、

新型ウイルスと同じ人殺しになったことを知るでしょう。

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