短編1
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鬼の絵

主人の仕事の関係で東北にいた頃に知り合った友人の話。

ドライブで紅葉の見事な渓谷に行った帰り道。

行きは海沿いの道を走ったが、帰りは山道を選んだそうだ。私はその渓谷には何度か行った事はあるが、通るのはいつも海沿いの道で、山道は使ったことがなかった。

私たちの住む町は有名な霊山の麓にあったのだが、その山道は霊山へと続いていた。

出発して間もなく、当時 幼稚園年少だった娘さんの様子がおかしくなっていった。

歯を食いしばり硬い表情で、下を向いたまま何を聞いても一言も喋らなかった。

そして家につくなり、お絵かきノートに何か描き始めた。話しかけても応えようとせず、一心不乱に絵を描き続けた。

しばらくして描き終えたのか、ノートを母親である友人に渡した。

「さっき、こんなのがいた」

そう話すと娘はそのまま眠ってしまった。

渡されたノートを見て、友人は絶句した。

そこに描かれていたのは数体の鬼だった。

その霊山には確か総門の両脇に鬼が立っていたと記憶している。他にも亡者の衣を剥ぎ取り生前の罪の重さを推量する鬼(鬼と言っていいのか不明ですが)がいる。

娘さんはその鬼を見たのか…? それとも昔いたと言われる踊り鬼を見たのか…?

或いは魑魅魍魎の類だったのか…

娘さんの描いた鬼は園児が描くようなものではなく、まさに鬼。眼は鋭く眼光を放ち、睨みつけてくるその様は鬼気迫るものだったそうだ。

Concrete
コメント怖い
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@あんみつ姫さま こんにちは。
実はこの話のあとに投稿した「心霊写真」にでてくるママ友が転勤で去ったあとの社宅の部屋に入居したのが、今回の鬼の絵を描いた娘さんの家族です。
勝手に部屋を変えることはできないし、それなら知らない方がいいだろうと、皆黙っていて一年が過ぎ、あとひと月で転勤することが決まったのに、社宅に住むママ友の一人が皆でランチをしている時に話してしまったんです。
でもさすが霊感がある娘を持つママ。
「そうなんだ」
その一言で終わらせてしまった。
あとから聞くと、ちょっとした怪現象はあったみたいでした。でもそれらにビビることなく、やり過ごす術を身につけているようでした。
キモの座った女ってカッコいい。そう思いました。
あんみつ姫さま、お読みくださりありがとうございました。

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@天津堂さんこんにちは☺️
見えるって嫌ですよね。大人だって怖いのに、その娘さん、本当に怖かったと思います。
それにしてもこの東北で暮らした5年間は、いろいろありました。娘が霊感あるっぽいのは、ここで暮らしていたせいもあるのかな?と思ってしまいます。(霊がみえた私母方の祖母の血も影響しているのかもしれませんが…)
天津堂さん、今回も御読みくださりありがとうございました。

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