短編2
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夜に共に喰らう

グッタリと、男は疲れ果てた身体を横たえようとする。

だが、勤務中に満足に休憩をしていなかった為、眠気で無く喰い気………即ち食欲が勝(まさ)ってしまい、苛立ちながら夜食の準備を始める。

炊飯器の白米をよそって、容器に水を張って野菜や肉を入れ込み、電子レンジで温めたのちに袋拉麺(ラーメン)の麺を入れて又温めて、最後に粉末スープを溶かし込む。

ボホーとラジオを聴きながら喰おうとすると、何やら聞こえる。

「グルルル~………グルルル~………」

「怒鳴られたりしてるから幻聴だろ」

欠伸(あくび)をして、湯気の立ち上る味気無い夜食を再びボホーとしながら頂こうとする。

………毛むくじゃらな塊と目が合う。

「!!………」

普通なら食卓を蹴散らして、外に飛び出すのだが、精神的に参っていて、その気力すら失せている男は面倒臭そうに出勤鞄を居間から持って来て、ガサガサとやる。

餡(あん)パンが出て来た。

「………ほい」

仮に怪物に喰われようが、誰も悲しまなかろう………叱るばかりの親も亡くなり、上司に叱られてばかりの日々でグッタリした男は、むしろ無になる事を心の何処かで望んでいる。

「ウガァ」

長い舌をベロリと出して、毛むくじゃらな塊は上手く餡パンを飲み込んでしまい、ボフっと変な音を出して、消失した。

「………有難う位、言ってよ」

無自覚に変な言葉を発した事に気付いた男だったが餡パン一個で救われたなら安いと思って、食卓に目をやる………

「おーい………」

喰いはしたが、完食していなかった筈の即席ラーメンや茶碗に盛られた飯が、見事に平らげられていた───何故か隅に、あの毛むくじゃらな塊が残したとおぼしき毛が、輪ゴムと共に束ねられている。

「ガガァ」

嬉しそうな声がエコーの様に男の部屋全体に低く反響し、男の住むアパートの階段から、ズシリズシリと重み有る足音がして、遠ざかって行った。

Concrete
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天津堂さん、いわゆる無頓着なキャラクターの異形の存在との遭遇で描写して見ましたが、確かにもう少し毛むくじゃらな存在の掘り下げをしても良かったかも知れないよなと、そちらの書き込みを御読みして気付かされました。有難う御座います!

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さかまるさん、それが狙いだったりします(汗)。「あれ?死にたがっていた感じの主人公が、結局餡パンだけ喰われて安心してんじゃん」と打ち終わって、ハタと気付かされたり………書き込み誠に有難う御座います。

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