神御呂司村の怪奇譚 本編2

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神御呂司村の怪奇譚 本編2

翌朝。俺は告別式に参列した後、遺族に挨拶を済ませて宿へ帰るところだった。清水家の門を抜けたところで思わぬ人物と再会した。

 それは前回、俺が悪鬼に襲われた時に助けてくれた土御門聖歌さんだった。相変わらず黒い衣装は似合っていたがいつも同じなので私服なのか喪服なのか分からない。

 ──なんでこの人がここに?

 俺がそんなことを頭の中で思ったのとほぼ、同じタイミングで彼女の方から声をかけてきた。  

 「あら、稲生君。こんなところで会うなんて奇遇ね」

 「お久しぶりです。この前はお世話になりました。俺は清水家の人と縁がありまして……土御門さんは?」

 「ちょっと、仕事でね」

 土御門さんは清水の祖母・カネさんからある呪物を探して欲しいという依頼を受けたのだと教えてくれた。その呪物とは「呪いの壺」であるらしい。

 依頼人のカネさんによれば清水家では代々、男子が早死にするという呪いが続いているという。それと同時に一族が保有する壺があるらしく、その関連性を調べた上で呪いを解いて欲しいというのが当初の依頼だったようだ。

時を同じくして孫の康介が変死した。カネさんはそのことも壺による災いではないかと危惧して「あれは邪悪で危険な壺。すぐに見つけないと大変なことになる…」との理由で早急に依頼を達成して欲しいようだ。それを受けて土御門さんがカネさんを訪ねたところだったのである。

 「それにしても土御門さんは全国的に解呪師として有名なんですね」

 「どうしてそう思うの?」

 「だって、こんな深い山奥の村の人にまで知られているなんて凄いじゃないですか」

 「それがよくわからないのよ。清水カネさんはどうやって私のことを知ったのかしらね。いきなり手紙が届いたの」

 「そうなんですね。なら、本人にどうして知ったのか訊けばいいんじゃないですか?」

 「それが尋ねても覚えてないって言うのよ」

 「まあ、ご高齢なら物忘れしたのかも」

 「そうかもしれないわね……ところで稲生君。もし、私の仕事に興味があったら手伝ってもらえない?」

 「……まあ、多少は興味あります。清水康介が何故、死んだのか知りたいですし」

 「そう。良い返事が聞けて嬉しいわ。私はこれからカネさんに壺についてお話を聞かせてもらうから、稲生君は図書館とかでこの村に壺の伝承があるか調べてみて」

 「分かりました」

 「それじゃあ、明日、郷土資料館で待っているからその時に調べたことを教えてちょうだい」

 土御門さんはそう言った後、颯爽とした足取りで屋敷の方に歩いていった。

 俺はひとまず宿に戻って着替えてから坂口と図書館へ向かうことにした。

 古めかしい村の中で図書館や村役場などの現代風の建築物は不釣り合いに見えた。

電信柱がなければ江戸時代にタイプスリップしたような印象を受けてしまうこの場所に鉄筋コンクリートで築かれたものは違和感さえある。

 さすがに図書館は公共施設なので車椅子でも問題なく入ることができた。都市部にあるような大きなものではなかったがそれなり書籍は揃っている。

 俺は歴史コーナーに向かった。本棚にびっしりと並んでいる本を眺めながら移動していたら「神御呂司村 村史」というタイトルが目についた。坂口に頼んでその本を取ってもらった。ページを開いてみると面白くもない記事が延々と続いていたが一つだけ気になる項目を見つけた。それは神御呂司村で行われてきた祭りについて記されたもので『ミサゲ祭り』とあった。

 本文タイトルの真下に白黒の写真が印刷されていた。写真に写っていたのは草木が鬱蒼と生い茂る山の入り口であり、その両側には神社にあるような石灯籠が立っていた。その間には注連縄が張られていて、いかにも侵入を拒んでいるように見えた。

 写真の下には小さな文字で『大正十四年、ミサゲ山入り口にて撮影』とあった。

 さっそく、ページをめくって本文に目を通すことにした。

Concrete
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