中編6
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友人達

何でも見えすぎる妻と結婚する前。まだ正式に交際をして間もない時の話。

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見えすぎる女の子、レイミと正式に付き合う事になった。

なんでもお見通しの凄腕占いお姉さんに会ってから間もなくの事だ。生まれて初めて占いで様々なことを言い当てられ、ビビりまくった記憶が鮮明に残る。

レイミとの交際のきっかけも、

その占いお姉さんのお陰とも言えるが、またそれは別の機会に。。

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誰もが振り向く程の美少女。レイミ。

彼女はとにかく見える。

見えすぎる。

幽霊は日常的に見え、守護霊やオーラ、更には妖精や鬼まで見えると言う。ハイパースペックなのである。

そんな彼女とはもう何回もデートを重ね、様々な出来事を体験させて貰った。

退屈しないとは正にこの事で、彼女の美貌と相まって俺は彼女に夢中であった。

彼女が俺に対して、刺激が少ないと感じていないか常に不安を抱いて、コンプレックスに成る程だ。

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そんなある日、友人らで集まって夕食を楽しむ日があった。

そのメンバーはカップルばかりなので、いつも参加出来ずにいたが、晴れて俺も仲間入りである。

俺は見目麗しい彼女を鼻高々に紹介できて満足だった。

子供の頃から悪ガキ仲間のユウジ。とても喜んでくれた。

10代の頃一緒にバイクで走り回り、今となっては大声で言えない悪さを共にやってきた仲だ。

ユウジ「いやー、お前に彼女ねぇ。一生落ち着かないと思ってたけど、少しは大人になったんかな?□君。」

だまれ小僧。

レイミを見てから鼻の下延ばしすぎ。

俺は煽った。

「さっきから鼻の下延ばして、チカちゃんの顔が怖いぞ?えぇ、おい?」

ユウジの隣には高校の時からヤツと付き合っている、

チカちゃんが座っていた。うでっぷしに覚えがあったゴリヤンキーのユウジとは対照的に、チカちゃんはしっかり者で委員長タイプ。無知なヤンキーどもの我々を度々救ってきてくれた。

もーほんとに良い子。

ユウジがこの子泣かす日が来たら、県内中の元ヤンがユウジに謀反を起こすだろう。勿論俺もだ。

そんなチカちゃんとレイミも凄く意気投合している。

その癒しの空間は、もう見ているだけでご飯3杯はいける。

ユウジも同じことを思ったのか、目を細め微笑みながらその光景をながめていた。

そしてもう1組のカップル。これが問題だ。

レイミと会わせる事を最も躊躇した二人。

タカヒロとコトミである。

16歳くらいの時、ユウジとバイクで走り回ってた時に、他のチームが喧嘩を売ってきた。

大人数同士で乱闘騒ぎが起こったが、

何故か全員打ち解けて海まで夜明けを迎えようぜと、夜明けの海辺をバイクで大パレードしたアホエピソード。

その時に知り合ったのがタカヒロである。

そしてその時からバイク大好き女子として、タカヒロにくっついていたのがコトミである。

長い付き合いで今でも仲が良いようだ。

何故この二人をレイミと会わせる事に躊躇したか。

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この二人。

見えるんです。

タカヒロもコトミも普段自己紹介で、

「はじめまして~。まぁ見えるんですけどー」

何て言うアホではない。

通常そんな非科学的な発言は、かなりリスクが伴う。

新興宗教的なものを極端に警戒する人もいれば、

ただただドン引きするって人もいるはず。

ただこの二人は見えるくせに、多少の恐怖を覚えている様で、見える時と見えない時があるらしい。怖いのはそのせいだろう。

俺は進んで打ち明ける必要もないかな?

そんな気持ちでいた矢先。

タカヒロ「なぁ、コトミ。確認なんだけどさぁ。」

コトミ「うん?」

タカヒロ「あのカウンターの右端に座ってるおっさんってさぁ。見えてる?」

コトミ「あぁ、あれそうなの?普通の人かと思った。」

タカヒロ「おかしいなぁって思ってさ。ビデオの再生みたいに動きがループしてるし。」

コトミ「なんか今日はクッキリ見える日やん。正直ビビるわぁ。最悪。」

なんて会話を始めた。

勿論俺にはカウンターの右端には誰かが座っているようには見えない。

ユウジが冷静に言う。

「お前らやめろ。」

某アニメの指令のオッサンの様に、机に肘を付き、口の前で指を組む。中々渋い表情だった。

そう。ユウジは喧嘩は強く、逆らえるヤツは少ない。男気もあって頼れる存在である。

だがオバケが怖い。怖すぎるのだ。

喧嘩が強い人は、腕っぷしが通らない存在に恐怖を抱くらしい。

タカヒロ、コトミ、ユウジがちょい怖ムードになっている。

俺はふとレイミを見た。レイミは多少驚いた顔をした後こう言った。

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「お二人さん、見えるんやねぇ。んじゃ、あの右端おっちゃんの横に、赤い服着たおでこの無いお姉さんは見える?」

「私達がお店入ってきてもう1時間半くらい、ずっと目をそらさずにこっち見てるわぁ。」

「あと、これ見えてるの私だけかな。ユウジ君の顔の目の前、10センチ程かな。女の人が無表情で顔だけ浮いて見てるの。もうずっと。」

凍りついた。タカヒロとコトミは目を見開き。色んな疑問が詰まって出てこない感じ。

チカちゃんは、冷静にみんなの顔を見比べていた。

俺はユウジの下りがゾッとし過ぎて動揺していた。

何なん!?それ。

怖すぎる。

目の前にずっといるのか!?

大体近すぎるだろ!?

ってか幽霊もそれ、近すぎて逆に見えてないだろうに。

ユウジが顔を向く方にホーミングして、常に目の前でガンくれてるらしい。

これは怖い。

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ユウジは固まっていた。メモリが足りないのか。

何らかの情報を処理しているのだろう。

その長い沈黙を破ったのは。

…………

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レイミ「あとカウンターのおでこ無いお姉さん。今こっち来てる。あれ、なんでだろ?」

凍りついた場を更にかき乱す。

正にアイスブレイク。

流石にチカちゃんが

「待って待って。ねぇ怖いからお店出ようよ。ねぇー」

涙目である。

ユウジが我にかえり、すぐさま店を出る手配をし、全員で跳び跳ねる様に店を出た。

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レイミ「ユウジ君の顔、やっとまともに見えたよー。あの首が邪魔で邪魔で、あーうけるわぁ。」

爆笑するレイミ。

笑い事ではないが、笑った君は可愛い。

意味合いが違うのに、顔が見れて嬉しい的な事を言われたユウジに嫉妬さえする。

ユウジは側溝で吐いていた。そんなに怖いの?

タカヒロ「レイミちゃん。見える子なん?」

レイミ「右端のおっちゃんは、紺のスーツに赤ネクタイだね?見えてたよ。」

レイミ「それ以外は私だけに見えてたのかな?」

コトミ「私、店出るとき赤い服の女性がみえたかも。それまで居なかったはずなのに。私のすぐ後ろまできてた。うーって唸ってたし!めっちゃ怖い!」

コトミも涙目になっていた。

レイミ「ごめんねぇ。私が認知させたから見えちゃったのかも。」

レイミはいつになく楽しそうだ。

メンバーはとてつもない逸材が仲間に加わった事を再確認した。

今後長きに渡り様々なことを体験する事になるとは、この時誰も予想だにしていなかった。

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その日はカラオケに行って気分をあげた。

何だかんだで皆、レイミを歓迎してくれた。

当然だ。

可愛いもの。

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皆と別れた帰り道。

レイミが横を歩いている。今思えば、お酒が入っているレイミは初めて見た。

顔がほんのり赤くなっている。普段からのんびり喋るレイミだが、酔うと更にゆっくりになる。

色っぽいなぁ。可愛いなぁ。

等と考えていたら、急にレイミが真剣な顔をしてこう言う。

「あのさ。ユーーージ君らけど。」

「うん、ユウジがどうした?」

「結局ぅ、最後までハッキリ顔見えなかったんよねぇ~。」

「えっ?」

俺は動揺した。

「お店出たら顔見えたって言ってたやん、女の首消えたんじゃなかったのかよ?」

レイミ「何かユージくん怖がってたからぁー、消えたことにしたんだぁ。でも、あのホーミング至近距離生首。もーんのすほい形相やったでぇ、うふふ。」

ホーミング至近距離生首。

そのネーミングセンスよ。

レイミ「ずっとズー~っと、ユージ君の顔の前にはガンくれ女の生首ぃ。うふふ、ウチが見てたのずっとその後頭部よ。ウフフ。めちゃうける(爆笑」

いや。うけないです。

めっちゃ怖いっす。

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でも、酔っ払ったレイミが可愛すぎて。

笑ってしまう。

常に顔の前10センチ程に女の顔が睨み付けている。

そんな状況を想像しながら鳥肌がたち、

目の前で酔っぱらうレイミを見て和む。

その後日。例の占い師お姉さんの所にユウジを連れていったのは言うまでもない。

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ネーミングセンスといい、彼女さんは良くも悪くも我が道を行く人ですね。
至近距離生首ですが、僕も思い当たる知人がいます。本命の彼女を家に待たせておいて複数人と浮気を繰り返す男でしたが、誕生日を自宅で本命彼女と祝っていたところ、ハートマーク満載の似顔絵ケーキが自宅に届いたそうです。送り主はもちろん浮気相手です。
僕は全く見える人間ではありませんが、その知人であれば至近距離生首の刑に処されていても不思議ではないなと思いました。
男気のあるご友人はもちろん違うのでしょう。

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