短編2
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漫画

溜まった漫画本を見返していたら、買ったおぼえのない一冊がまぎれていた。

その本にはなぜか作者名が記載されておらず、一冊読み切りのようだ。

読んでみると、漫画ばかり読んで勉強もロクにぜず育った主人公が、父親と口論の末に思わず殺してしまい、極中で書いた本がのちに大ベストセラーになるというものだった。

しかし大金をつかんだ青年は金目当てで近寄ってきたりゅうちぇる似の女に金を騙しとられ、精神をやられまくった末に、フラフラと富士の樹海に迷い込み、連れていた猫と一緒に仲良く並んで首吊り自殺するという全くもって意味の分からない、オチも何もない、クソつまらない内容だった。

でもこの漫画を読み終わった俺は、正直、違う意味で焦っていた。

内容のくだらなさや絵の下手さは別として、この主人公がたどっている経緯が俺の人生と酷似していたからだ。

俺も子供の頃から漫画ばかり読んで勉強なんて全くしなかったから、厳しい父親にいつも叱られていた。

なんとか高校には入れたが、出席日数がたらず留年が決定している。

その件で今朝、また父親と口論になり思わず父親が大事にしていた三番アイアンで殴り殺してしまったのだ。父親の死体はまだ台所に転がっている。

慌ててどこか遠くへ逃げようと思ったのだが、道中ヒマだったらいけないのでいくつか漫画本でも持っていこうかと漁っていたらこんなものを見つけてしまったわけだ。

さて、これはどうしたものか…

もし仮にこの先も漫画どおりに事が運ぶのならば、俺は獄中で本を書けば一度は成功するという事になる。

その後の展開は悲惨だが、とにかくりゅうちぇる似の女にさえ用心しておけばなんとかなるのかもしれない。

まあ、正直こんな漫画みたいな話を信じた訳ではないが、手持ち金も少ないこの身の上で、日本中逃げまわったとしてもあっさり捕まるのは目に見えている。めんどくさいし。

ここはこの漫画の漫画みたいな話を信用して、早めに自首した方が良さそうだな…

Concrete
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