短編2
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ぼくの師匠

ぼくのクラスにはすごい奴がいる。霊感が半端じゃない。

彼は、千年はゆうに越える歴史を誇る寺の跡取りで、ぼくの師匠なんだ。

彼の恐怖体験を話すと20話はかるく越えるが、ここでは、彼が多くの心霊体験の中で学んだ事を、紹介しようと思う。

彼は言う、この世の中、偶然というものは一切存在しない、と。 どんな殺人事件も、必ず必然の中で起きているらしい。

最近、「誰でもよかった」ー犯人が口にする無差別殺人が多いが、殺された人には言いずらいが、やはり必然のもとに、殺されているのだとか。

彼が驚いたのは、因縁というものが、如何に正確に、現代社会に反映しているかーという事だった。

愛する妻と子供が通り魔に殺されたー過去の因縁など考えない(ていうか解らない)人は、ただ、その家族が不運だったとしか思わない。でも、殺された家族の先祖が、遠い過去において、通り魔事件の犯人の先祖を、無残なやり方で殺していたーというのは、彼の中では珍しくもなんともない事らしい。

因縁を断ち切るのは、当の本人が、自分の先祖が過去侵した過ちを知らないが為に、非常に難しいらしい。

つまり、過去に酷い殺され方をした霊は、自分への謝罪を求めている。その家族が如何に信心深くて、毎日お墓参りをしたとしても、殺された側からすれば、自分への謝罪はどうしたんだ!という事らしい。

だから彼は言う、自分の先祖を敬う前に、まず、

「先祖が犯した罪をどうぞお許し下さい」と唱えるべきだと。どんな人間でも、過去を辿れば、大変な悪事を働いている先祖の一人や二人、必ず背負っているものらしい。

あと彼はこんな事も言っていた。

最近テレビで、前世があーだこーだ言ってるのをよく見かけるが、彼は今まで、生まれ変わったという人間に出会った事がない、と。

霊界を見渡せば、千年前に亡くなった人もちゃんとそこにいるし、霊が人間になって生まれるなどということが、実際あるわけがないーというのだ。

霊界というものは、亡くなった人の思いが永遠に続くところであって、その思いというものは完全に自由であり、「今度はアメリカ人として生きるのよ」などと、他の何物かに指図されるような世界では根本的にないーと言うのだ。

「今度はアメリカ人になって生きなさいって、一体誰が決めるんだよ」

彼は笑った。

怖い話投稿:ホラーテラー 匿名さん  

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