中編2
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遊びに行ってもいいか?

友達の従兄弟の話だ。彼のことは仮にY君とする。

ある日の夜中、休日特有の夜更かしで暇をもてあましていた彼は自分の部屋で漫画を読んでいた。親が出かけていることも彼の夜更かしに拍車をかけた。

自慢のたくさんある漫画で眠くなるまで時間をつぶしていた。

 と、携帯がお気に入りの着メロを鳴らした。非常識な時間の電話だが、起きているこっちも非常識。仕方なく起き上がり電話に出た。

 

『もしもし、Yか?』

その声は親友のNのものだった。

 

「おう、Nはどうした?こんな時間に」

どうやらNは親が旅行中で退屈らしい。僕と同じだ、と思ったYは話を進めた。

 

「俺、今漫画読んでんだよ。」

 

『いいなぁ、お前はたくさん漫画を持ってて。なぁ、今からお前んち行っていい?』

こんな時間に突然、そんなことを言われてびっくりもしたが、暇なのはこっちも一緒なので、Nを招くことにした。

 『ありがと。今から行くから、俺が行くまで絶対に家に居てくれよ。絶対だぞ。俺声かけるから。』

 妙に強く念を押されたが、分かった分かったといって電話を切り、漫画の世界に戻った。

 

 一分ほども足ったのだろうか。玄関のドアを

≪バン、バン≫

とたたく音が聞こえてきた。

 (インターフォンを使えよ)

苦笑しながらドアに向かう。

しばらくドアをたたく音は続いていたが、少し意地悪な気分になり、しばらく放っておいた。さすがに悪いかと思った頃、念のため外をのぞく小さなレンズのようなものを覗き込んだ。

 もうドアをたたく音は聞こえていない。

そして、誰も居ない。

ドアを開けようとする手を止めた。

おかしい、Nは帰ってしまったのだろうか。そこで彼は気がついた。

 

『俺声かけるから』

今ドアをたたいた者は声をかけていない。

それに、Nの家からYの家まで1分で行けるとはとても思えない。

 そのとき、携帯がなった。

 

『お前、今、家?』

Nだ。Yは少しNを疑っていた。

僕を怖がらせようたってそうは行かない。

そう言おうとした時、Nが言った。

 

『…良かった…』

なんでだ、と訊けばNは少しためらった後、答えた。

 

『さっき窓の外を見たら、上半身だけの女がすごいスピードで道路を這って行った。

お前の家の方向だったからさ。何もなかったんならいいんだ』

 

上半身だけならレンズを覗いても見えないわけだ。インターフォンも押せないだろう。

 

そこで彼は気がついた。

さっきレンズを覗いた時、一枚のドアの向こうにその女は居たんだ…。

 

「何もなかったもんか」

そう答えてYはNに漫画を今度、全巻貸す代わりに一晩中電話で話しててくれと頼んだ。

同じ会社の携帯を使っていたから通話料が無料だったことに、なんとなく何か大きいものの加護を感じたという。

怖い話投稿:ホラーテラー 椿色の凡人さん  

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