中編6
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ホテルに巣食う者…Ver.1

初めに…

読んで下さる皆さん本当にありがとうございます。

ホテルに巣食う者の別バージョンです。

誤字、脱字あると思いますが、宜しくお願いします。

7年前、私はアーティストになりたくて上京してきた。

ステージに立ち、人々の注目を集めて、綺麗な洋服に身を包み…

けれど、私のそんな夢と理想はすぐに打ち砕かれた。

『…君には才能がないよ。顔だけじゃないんだ、この業界は。』

 『ルックスだけで勝負できるなら、今頃世の中は沢山のアイドルで溢れかえっているさ。…わかるかな?他の人が持ってないような何かが必要なんだよ。』

4年間、私は夜の世界で働きながら、ダンススクール、ボイススクール、その他色々な習い事をしてきた。全ては自分の夢を叶える為。

たが、夢は叶わなかった。私には他人が持ってないような何かが無かったのだろう。

自慢の顔も、シワが目立つようになってしまった。

夜の世界でも仕事に限界を感じていた私は仕事を辞めた。

もう、今年で28歳になる。

未だに定職にも就けず、コンビニでアルバイトをする日々。

四畳半ほどの狭いアパート。好きな洋服、化粧品すらろくなものが買えない。

恋人もいない。

2ヶ月前に結婚したいと告げたら、

『だれがお前なんかと結婚するかよ!』

と、振られてしまった。

…所詮、彼にとって私は遊び相手だったのだろう。

私は1人…………

〓〓〓ホテルに巣食う者…〓〓〓

 (Ver.1.彼女の人生)

バイトの帰り道。

その日、アパートの家賃の振り込みと、日用品の買い出しを終えた私は1人夜の街を歩いていた。

すれ違う人達は皆幸せそう…

きっと今を楽しんでいるに違いない。

私は…

ふと、路地裏があることに気付いた私。

普段なら気が付かないような狭い路地。

真っ暗な路地の向こうには何か建物がある。

私は、その路地へと吸い込まれていく。

…廃墟と化したホテル。

一体誰が何の目的でこんな場所に建てたのだろう?

もう営業してないくせに入り口のガラスドアには「従業員募集」の貼り紙。

異様な雰囲気のそのホテル。しかし、見ていると何故か引き込まれるものがあった。

悪いとは思った、けれど私はホテルの中に足を踏み入れていた。

以外にも広いロビー、埃まみれのフロント、破れてボロボロになった待合いのイス…。

『…なんかやばそう。』

私がそそくさとホテルを出ようとしたその時。

誰かが私の口を塞ぎ、私の体を抱えて…

『レイプ。』

廃墟と化したホテルの一室で私はレイプされた。

ホームレスだろうか?汚い体が私の上を行き来するのは耐え難い苦痛だった。

私の首にレイプ男の両手が当てられる。

私を殺すつもりらしい。

……………………………。

…レイプ男は満足げな顔で、私の死体を見ている。

『?私の死体を?…!?私は、あんな奴に殺されたの??』

それを悟ったとき、今までに感じたことが無い位の怒りの感情が私の中に込み上げてきた。

気持ち悪いレイプ男。

私を弄んだ挙げ句に殺したあの男!!

私の体はゆっくりと動き出す。

そんな事を知ってか知らずか、私に背を向けて興奮の余韻を楽しむレイプ男。

そんなレイプ男の顔色は一瞬で恐怖の色に染まる。

殺したはずの私が、今起き上がってきたのだから当然だろう。

男 「…………」

言葉も出ないぐらいに驚いている。でも、それは私も一緒だった。

人は一度死んだらそれで終わりと思っていたから…。

けれど、私にはもう一度人生が与えられた。

報復と残虐、支配に満ちた人生が…。

男 「……グエッ!」

…………ブチ、ブチブチ…………ゴトン。

レイプ男の首が部屋の汚れた床に転がる。

『死んだのかな?』

私は憎いレイプ男のちぎれた頭を握りつぶした。

生ぬるい感触とドロドロしたものが私の足元に広がる。

この時、私は自分が今までの自分じゃないことに気付く。

私の心臓は鼓動が止まったまま。

私の心は何も感じていない。

私の体は氷のように冷たいまま。

そして、私はレイプ男の首をちぎっていないし、頭も潰していないし、それどころか男に触れてもいなかったという事。

心の中でそう思っただけ…

なのに、レイプ男の首は勝手にちぎれて転げ落ち、潰れてグチャグチャになった。

…私に与えられた二度目の人生。

まだ、何が出来るかはわからない。

だけど、私には他人と違う何かが確実に与えられていた…

〓〓ホテルに巣食う者Ver.1〓〓

   (続・彼女の人生)

目覚めのいい朝。

今日から私の2度目の人生が始まる。

体は依然冷たいままだが、それはそれで清々しい。

いつもの様にアルバイトに行く。アルバイトが終わればそのまま家に帰って自分の新しい何かに磨きをかける。

この体は物凄く合理的だ。

まず、睡眠が要らない。

そして食事も要らない。

いくら運動しても疲れないし、間違って体を傷つけても痛くも何ともないし血もでない。

更に凄いのは、物を動かしたり、取ろうとした時、頭の中でその様子をイメージすれば勝手に物を動かせること。

私は、素晴らしい体を手に入れた。

私の、他人に無い何かは、この合理的で不思議な力を持った体。

『……何で?どうして?』

数ヶ月後。

…私の体は合理的では無かった。腹部の皮膚が一部、青黒く変色していた。

その変色は次第に体全体に広がり、今では首の辺りにまで広がっている。

そして、どこから湧いて出たのか、無数のウジ…。

私の体は腐っているのだ。生きている筈なのに、2度目の人生が始まってまだ半年も経っていないのに…。この状態ではとてもじゃないが、そう長くは持たないだろう。

だが、今の状態なら外出は問題ない。

私に与えられた何かの内の1つ。

他人の嗅覚・視覚・精神をある程度コントロール出来る事。

だから、今の私は五体満足でいる限り他人には普通の人にしか見えない。

この湧いたウジと、腐敗臭も他人には気付かれない。

けれど、もしも足や腕が取れてしまったら、それは誤魔化しきれない。

青黒い変色が酷くなるにつれて、私の不安も大きくなる。

『何とかしなきゃ。』

焦る私が何かにすがるような心持ちで街を歩いていると、目の前で交通事故が起きた。

20代前半の女性が車に跳ねられ、道路に横たわっている。

彼女はピクリともしないまま、ただ血を流している。

その光景を見ていた私の脳裏に人としてはあり得ない考えが浮かぶ。

野次馬A 「……?!ちょっと、君、大丈夫なのか?」

野次馬B 「今救急車を呼んだから、じっとしてて。」

起き上がった車に跳ねられた女性。

彼女は野次馬達の制止を無視して、無口のままとある細い路地へ吸い込まれていく。

……廃ホテルのロビー。

力無く倒れ込む女性。

その目の前に立っている私は、これから恐ろしい事を始めようとしている。

私は、自分の入れ物を抜け出ると、倒れ込んでいる彼女の中へと侵入する。

事故に遭って内蔵が痛んでいるようだが、問題は無さそうだ。

事故で外傷を負った部分の血を拭き取り、後はそこに私のイメージを植え付ける。

………………新しい入れ物が出来上がった。

脱皮を繰り返す蛇のように、チャンスと安全な場所があれば、私は何度でも蘇る。

だが、やはり死体。

いずれは腐り、ボロボロになっていく。

私には幾つかの自分を入れる入れ物のストックが必要だった。

単純に、その辺の人間に入り込めばいいと思って試した事はあったが、それは出来なかった。

この脱皮には条件がある。

支配することが出来るのは、既にこの世を離れた生物だけ。

そして私は、生きた他人や身近な物を自分のイメージ通りに操る事が出来る能力の本当の使い方を悟った。

……そう、私の新しい入れ物を作る為。だと……

私はこの世界に生きる実体の無い人間。

他人は私にその身を捧げる為に存在している。

『キャハハハ………』

笑いが込み上げる。

余りにも可笑しくて。

自分の思い通りにならなかった1度目の人生。

だけど、2度目のこの人生は、私の一存で全ての人間を操り自分の都合で彼等をどうにでも出来てしまう。

……思い通りの人生。

永遠の命と特殊な能力。

私は、完全に生まれ変わった。

もはや、人間であろうと、化け物であろうと、どっちでもいい。

そのどちらをも超越したのが今の私だと思っているから………。

怖い話投稿:ホラーテラー 匿名さん  

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