短編2
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踏み切り

我が家の傍には、踏み切りがある。自分は小学一年からこの家に住み、残念な事だが、踏み切りでは今までに何件か飛び込み自殺がある。

 あらかじめ言っておくが、私には霊感のたぐいが一切なく、前述の祖母しか見た事がない。

 踏み切りのすぐ横が掃車場になっており、踏み切りではあるが無人ではないと言える。思えば、踏み切りと掃車場は不思議だった。踏み切りの手前には、遮断機と同じポールが手動で上げないと通れないようになっている。

 これは現在も存在し、私が引っ越して来る以前にシンナーで意識朦朧になった暴走族の男が飛び込み自殺をした後に設置されたのだと聞かされた。真意は知らないが。確かに、飛び込もうという人間は何をしてもするかもしれないし、あったから防止になるとは限らない。実際、その手動遮断機があっても自殺はあった。

 掃車場には、今はないが真っ赤な階段があった。よく、町で見かける歩道橋みたいな物だが、それはとても異質に見えた。なぜなら、線路の上を飛び越えて線路を挟む道をつなぐのが歩道橋の役目だと思うのだが、その歩道橋は掃車場の中に下りるようにできていて、途中に鍵のかかった扉があり、通れなかった。掃車場の事務所は、歩道橋の真反対の方向にある。おそらく、意味はあったのだろうが意味がなくなったのだろう いつの間にか撤去されていた。

 個人的な事だが、離婚して実家に帰って、仕事のない休日…窓からはいつも電車が走る音は流れて来る。

 踏み切りと掃車場があるため、徐行する電車からは、警笛?ではなく、メロディが流れる。

 そう、窓からメロディが聞こえる事はあった。

 その日は違うものが聞こえた。キヒィィィィと軋む何かの音、メロディ、警笛、全部がない混ぜになって耳に投げ込まれるみたいに聞こえてきた。

 軋む何かの音には聞き覚えがあった。徐行してくる清掃中の電車がたてるブレーキ音に似ていた。それよりずっと長く、大きく、引きずるようなブレーキ。

もしかすると…

 しばらくして、ガヤガヤと人の声やパトカーが到着した。誰かが飛び込みをしたのだ。

 翌日、私はすっかりそれを忘れてその踏み切りを我が家に向けて渡った。もちろん、何も感じない。

 幼なじみには疑われた。よく通れたね!と。幼なじみは嘘かまことか見えないが、感じるという。今も誰かたくさんの人間が、踏み切りをウロウロしているのだ、と言います。

怖い話投稿:ホラーテラー ダンタリオンさん  

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