短編2
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孤独死2

生前タエさんは、アパート前の路地で野良猫に餌を与え世話をしていた。

鳴き声や衛生問題からアパートの住人に 猫に餌を与えないよう注意されていた。

「飼ってあげたいけど最後まで面倒見れるかどうか」

普段明るいタエさんが言葉を詰まらせていた。

私はこの時

「子猫なら引き取り手が見つかるかも知れない」と言った。

タエさんは首を振り 「老いた子も平等に幸せにしてあげたい」

ぽろぽろ涙をこぼしていた。

軽度の認知症だと後に聞いたが私の知る限りタエさんは、まともだった。

いつも、こざっぱりとした身なりで足腰も元気だった。

野良猫問題で一度だけタエさんの部屋を訪れたことがある。

質素な暮らしぶりだが、室内は明るく清潔に片付けられていた。

だがあれほど自慢していた娘や孫の写真が一枚も飾られていなかった。

変だなとは思ったが 余計な詮索は趣味ではない。

野良猫問題は結局、 解決策が見つからないまま、うやむやとなった。

時折、アパートの裏で野良猫に餌を与えるタエさんが目撃されたが住人達は黙認していた。

夜 帰宅途中、路地裏で餌を食べる猫の背中を撫でるタエさんの姿を何度か見た。

タエさんは小さな背中を丸くして猫に優しく話しかけていた。

私はこの時

家族に愛されて生きている人間だからこそ、弱い生き物に対しても余裕を持って優しくできるんだろうなと思った。

自分は毎日仕事で疲れてヘトヘトだというのに…

すべて言い訳だった。

私は本当の孤独というものをまだ知らない。

辛い時、思い出したい。

自然を愛し、心地良い音楽に耳を傾け、弱い生き物を抱きしめる姿勢…

あるべき姿を見習いたい。

怖い話投稿:ホラーテラー 猫さん  

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