中編3
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郵便屋さん

 霊感の強い私のイトコが体験した話です。

 イトコが小学生の時、山奥にある公園で友達数人と花火をしていた。

実はこの公園、霊感うんぬんに関わらず『出る』場所ということで地元では有名な心霊スポットだったのだ。しかし田舎のため、近所で格好の遊び場といえばこの公園くらい。故にイトコもその公園でよく遊んだ。しかし、夜その公園で遊ぶのはイトコ含め、友達全員が始めての体験だった。そのため、花火を終えた後の帰り道を怖く感じ、全員で手を繋いで帰ることにした。

 山奥の公園のため、道幅が狭く(周りは深い雑草で茂っているため歩きづらい)、大人一人が通れるくらいの道幅しかなかった。そのため、縦一列になって手を繋いで行くことにした。二人目の子は先頭の子と右手同士で繋ぎ、三人目の子とは左手同士で繋ぐという具合に。そうなると、手を繋ぐ体の向きも左右バラバラになる。そうしてイトコたちは歩きづらい奇妙な行列となって山を降りた。その途中、イトコはふと左側の茂みに人影を見つけた。

 深い緑色の帽子を被り、同色の制服らしきものを着た青年だった。鬱蒼とした茂みの中にぽつんと佇む緑の服の青年は、青白い顔をしてじっとイトコたちを見ていた。イトコはその時、

「(郵便屋さん…?)」

その服装を見てふと思ったらしい。だが、あまりに顔色の悪いその青年を怖く思い、イトコは青年を見ないように、俯きながら歩いた。そして怖がらせないように、友達にもあえて言わなかった。

 やがて山を降りた所でイトコたちは一安心と互いに繋いでいた手を離した。そしてふと、友達の一人が変なモノを見たと告げた。

「なんか、郵便屋さんみたいな人がいたよ。でもすごく青い顔で、気持ち悪いから下向いてずっと見ないように歩いてきたの」

その言葉に、イトコはすぐに私も見たと言った。だがその友達は、郵便屋さんは右側の茂みに立っていたと言うのだ。

イトコはその時右手を前の子と、左手は後ろの子と繋いでいたため、左側の景色を見ていた。が、友達はその逆側で手を繋いでいたため、右側の景色を見ていたのだ。つまりは青白い顔をした青年は一人じゃなかった。両側の茂みからそれぞれイトコの列を挟むようにしてじっと見つめていたのだ。

 その後は特に何の災いが起きるでもなく、それ以来その山の中で郵便屋さんを見ることはなくなったらしい。

 私はその話を、イトコが20代になってから聞かされたのだが、イトコ曰く、子供の頃は郵便屋さんだと思っていたが、今思えばあの制服は、軍服だったんじゃないか、と言うのだ。戦争時代に亡くなった青年が、あの公園付近で地縛霊となって彷徨っているのだろうか。

 そういうわけで、心霊スポットとはいえ、生きている人間に害を及ぼすほどの呪われた土地というほどでもなく、子供たちが楽しく遊ぶ公園として今も親しまれています。とはいえ、山奥の薄暗いその公園はこれの他にもかなりの霊が目撃されているそうです。私のイトコと、イトコの姉も何度かこの公園で様々な霊を見てしまったそうです。

怖い話投稿:ホラーテラー 匿名さん  

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