短編2
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護身用です

一年前の夏の夜

田舎に帰省するため夜道愛車を走らせていた。

車内は、ほどよくエアコンが効いてて快適だ。

好きな音楽を聴きながら数年ぶりに帰る故郷に想いを馳せていた。

時刻は夜の8時。

緩やかなカーブを曲がり山道を走っていた。

突然

白い人影が車の前に飛び出してきた。

心臓が止まるほど驚いた。

反射的に急ブレーキを踏んで車を停めた。

もう少しスピードを出していたら轢き殺していたかも知れない。

茶色いボサボサ髪の女が両手を上げて車の前に立っていた。

青白く見えたのは青と白のノースリーブのせいだろうか。

髪は脂汗で顔にべったり貼りつき化粧気はなく肩紐が両肩からずり落ちていた。

スカートにサンダル履き。軽装だった。

一瞬幽霊かと思ったが、早口で「乗せて」と、まくし立てる幽霊は、あまりいないだろう。

よく見たら高校時代の同級生だった。

仲が良かったわけではないが、無視するわけにもいかず助手席に乗せた。

興奮しているらしく彼女は饒舌だった。

話しによると

ドライブの最中男と喧嘩になり口論の末

無理矢理車から引きずり降ろされたらしい。

学生時代は無口で暗い印象があった彼女だが、今はよく喋る。

明るくなったという感じではなく、どこか荒んで見えた。

簡単な近況報告してる最中、彼女の鞄の中から何かが滑り落ちた。

ゴトッと鈍い音をたてて…

キラリと銀色に光る物体が見えた。

それは無造作に新聞紙に包まれた包丁だった。

青ざめた私は車を再び停めた。

彼女は何がおかしいのか黄色い声を上げて笑い出した。

「世の中物騒だからこれは護身用よ」

私は聞いた。

「そんなもの、いつも持ち歩いてるの?」

「男と会う時だけよ。さっきも、これチラつかせただけなのに、あいつビビって可笑しかったわ」

それはビビるだろう。

私も今すぐにでも、彼女を降ろしたかったが、その頃には彼女の家に辿り着いていた。

両親は数年前に離婚し、昔ながらの古い家屋に今は彼女独りで住んでいるらしい。

彼女は言った。

「淋しくはないの。メールだけで簡単に男が釣れるし、より取り見取りよ」

出会い系サイトの男とまた会う気か?

包丁を鞄に忍ばせて…

怖い話投稿:ホラーテラー りんさん  

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