中編3
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ドレスの女の子

僕が小学生の時に体験した出来事です。当時、札幌のとある小学校に通っていました。

その日は習字の授業があり、課題が出されました。しかし、習字道具を教室に忘れて家に帰ってきてしまいました。

時計を見るとまだ、午後4時頃だったので学校に習字道具を取りに行きました。学校につき、教室のある2階に向かいました。時間としては5時前ぐらいだったと思います。少し日が落ちかけて暗くなる前のギリギリな感じでした。すでに生徒の影はなく、普段にぎやかな場所だけに、人が全くいない廊下の光景は、いつもより広く暗く、少し寂しいような不気味なような寒々しい感じがして少し早足で進んでいました。

このころ既に、怪談話が好きで色んな本を読んでいたり、話を聞いたりしていたので、後ろから誰かついてきたらどうしよう、などということを気にして時折後ろを気にして振り向いたりしましたが当然誰もいませんでした。

そんな風にびくびくしながらも内心少し楽しみながら階段を昇っていると、踊り場の3段下のあたりに居たころ、上から人が下りてきました。段差があったので身長などが正確にはわからなかったですが、150センチくらいあった僕の身長と大して変わらないくらいだったと思います。年齢的には自分と同じか少し上級生ぐらいだったと思います。まさか、人が下りてくるとは思わなかったので少し驚きましたが、その子の格好を見て呆然と立ち尽くしました。

その子は西洋人形が来ているような赤いドレスを来ていたからです。ドレスといっても足首近くまで丈があるようなものではなく、膝上くらいまでの物でしたが、今までの人生で現実に着てる人はは見たことがありませんでした。

不思議とその時は怖いとは全く思わなく、その子が音もなく横を通り過ぎるのを見送り、ずいぶん変わった子だなぁ等と思いながら踊り場を昇り切りましたが、やはり気になって後ろを振り返りました。

しかし、そこにいるはずの少女は影も形もありませんでした。そんな馬鹿なと思いつつ階段を駆け下り左右を見回しましたが、姿はありません。

階段は校舎中央近くにあり、階段の周りには、正面にトイレがあるのと左右には多目的室等の特別教室があるだけで長い廊下が続いていて隠れる場所などありません。多目的室は普段施錠されていますし、実際この時も鍵は掛かっていました。時間的に見てほんの数秒目を離した間に玄関までたどり着くのは不可能ですし、もしそれが可能なほどの足をもっていたとしても、足音は消せません。人のいない学校というのは音がすごく反響します、走れば音が響き渡るし、扉を開ければガラガラと音をたてます。

しかし、その女の子は最初からいなかったかのように姿を消していました。

僕は怖くなり、階段を走りぬけ職員室に駆け込み残っていた先生に付き添ってもらい習字道具をとってきました。先生にもそんな子を見ていないかとたずねましたが、当然のごとく見ていないと言われました。そのまま玄関に送ってもらい、忘れ物するなよ注意されながら家に帰りました。

15年ほどたった今でも鮮明に覚えている出来事です。ドレスの少女はあまりに現実感があり、普通の人間にしか見えませんでした。

ただ、ここまでよく覚えている出来事なのに顔の印象がほとんどない状態です。日本人だったということと髪が肩よりも少し長い位だったということしか覚えていません。今も脳裏に強く刻まれているのはあの赤いドレスです。

色々な話がある小学校でしたが、自分が体験したのは初めてでした。今思い返しても不思議なことだと思います。

長々と失礼いたしました。

怖い話投稿:ホラーテラー rokiさん  

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