短編2
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調理

両親が法事で家を留守にした夜の事。

私と兄は二階で寝ていた。

夜中 兄に揺さぶられて目が覚めた。

誰もいない一階で物音が聞こえるらしい。

裏口のドアの鍵を閉め忘れたのかも知れない。

泥棒…?

ビクつく兄の背中を押しながら私達は忍び足で階段を下り様子を窺う。

台所でゴトゴト音がする。

暗闇でよく見えないが、

人影らしき動く物体は認識できた。

「誰だ」

バットを手に持っていた兄が叫んだ。

咄嗟に私が台所の電気をつける。

人影が、こちらを振り向いた。

見覚えある顔。

隣りの家に住むお爺さんだった。

お爺さんはニターと笑いながら、まな板の上にある黒く大きな塊を両手で掴んでいた。

ふと私は足元を見た。

白くふわふわした綿のようなものが床一面散乱していた。

「それ羽じゃないか?」

兄が言った。私は目を細めてまな板の上にある、まあるい塊を見つめた。

鳩の死骸だった。

その途端

「ぎゃあああああー」

凄い悲鳴を上げたのは私だった。

理性もモラルも吹っ飛び

頭が真っ白になった。

叫び声を上げながら、玄関から外に飛び出した。

驚いたお爺さんが鳩を掴んだまま、私の後を追い掛けてきた。

「やだー!来ないでー!来るなー」

わんわん泣きながら、外で大声を張り上げた。

こんなにひどく取り乱したのは生まれて初めてだった。

近所の通報で警察が、やってきて一時騒然となった。

認知症を患っているお爺さんは、これまでにも、何度か他人の家の裏口から侵入し、冷蔵庫にある食べものを拝借したりと、何かとお騒がせな人物だった。

夜中に出歩いたり、物を持ち運んだりしたのは、今回が初めてらしいが、それはこちらの知るところではない。

警察が到着する頃には、落ち着きを取り戻していたが、恥ずかしいやら情けないやらで涙が止まらなかった。

母から何度も注意されていたのに。

戸締まりは厳重に。

怖い話投稿:ホラーテラー アンさん  

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