中編3
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真夜中の新聞

これは忘れもしない今年の2月21日のことでした。

私の住んでるアパートは1階の車道側。

そういうこともあり訪問しやすいのか普段から宗教の勧誘がひっきりなしに来るんです。

決まった団体が何度も訪ねて来たり、また別の団体が次から次へと…

私の部屋に対する宗教勧誘の多さに、私もいい加減辟易していました。

そんな日々を過ごしながらその日はやってきました。

2月21日深夜3時頃…

バイクの音が聞こえ、玄関先で物音がしたので、いつも通り新聞が配達されたのです。

私の家は配達の順番がすごく早いらしく、深夜3時から4時には新聞が届きます。

私はちょうど起きていたのですが、半ばうとうとしかけていて眠い目を擦りながら玄関に向かいました。

その時なんですが、ふといつもの宗教の勧誘が頭をよぎったんです。

なぜなのかはわかりません。

が、「こんな真夜中に宗教の人とかあり得ない」と、その思いを頭から払いのけて玄関に投函された新聞を取りに…

そしていざ新聞に手を掛けたのですが、いつもならいくら分厚くても簡単に引き抜ける新聞が全然引き抜けないんです。

女の力なのでたかが知れていますが、それでも全力と言えるくらい踏張って引っ張っても引き抜けない。

まるでドアの向こう側で誰かが握り締めているような…

そんなことを考えたら急に怖くなり、恐る恐るドアの覗き穴を覗いてみました…

すると覗き穴から見える範囲の下の方に真っ黒なもやのような物が、かすかに左右に動いているのが見えました。

私は怖くなり、新聞は諦めて寝室に駆け戻りました。

そしてベッドに潜りそのまま眠り込んでしまいました。

翌朝目が覚めて、恐る恐る新聞を引っ張ると、普段通りするりとたやすく引き抜けました。

そして翌2月22日。

またいつも通り深夜3時頃に新聞が投函されました。

昨晩のこともあり怖かったのですが、新聞を取るのは日常の当たり前のことなので、なるべく気にせずまた玄関に向かいました。

そして新聞を引き抜こうとすると、やはり抜けないのです。

どんなに力一杯引っ張っても引き抜けません。

一体なにが起こっているのかわけがわかりませんでした。

仕方なくまた恐る恐る覗き穴から外を見ると…

黒髪で髪の長い女性がニタニタ笑いながら新聞を強く握り締めていました。

目は充血しているのか赤く爛々とし、鈍く光って見えました。

あまりの恐ろしさに目を離せずにいたのですが、なにか変なんです。

口はだらしなく開きニタニタ笑っているのですが、目は笑っていないんです。

それに気づいた時、向こうも私が見ていることに気づいたらしく、目が合いました。

こちらはドアの内側なのに。

その女性の顔がだんだんと覗き穴に近づいてきて、それまでニタニタ笑っていた口を裂けるくらいに大きく開いてなにか意味のわからないことを口走りました。

そこからは覚えていません…

気が付いたらベッドの上で朝を迎えていました。

どうやって寝室まで戻ったのかもわかりません。

ただ、それ以来新聞の購読はやめました。

そして、なぜ私の部屋にばかり宗教の勧誘が多いのかもわかった気がしました。

怖い話投稿:ホラーテラー のり子さん  

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