長編10
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リゾートバイトⅢ

■シリーズ1 2 3 4 5 その後

まずはじめに言っておくが、こいつは驚くほど長い。

そしてあろうことか、たいした話ではない。

死ぬほど暇なやつだけ読んでくれ。

忠告はしたので、はじめる。

前回からのつづき

次の日、誰もほとんど口をきかないまま朝を迎えた。

沈黙の中、急に携帯のアラームが鳴った。

いつも俺達が起きる時間だった。

Bの体がビクンってなって、相当怯えているのが伺えた。

Bは根がすごく優しいヤツだから、前の晩俺に言ったんだ。

B「ごめんな。俺なんかよりお前のほうが全然怖い思いしたよな。

それなのに俺がこんなんでごめん。助けに行かなくて本当ごめん。」

俺はそれだけで本当に嬉しくて目頭が熱くなった。

でもよくよく考えてみると、「俺なんかより怖い思い」ってなんだ?

実際に恐怖の体験をしたのは俺だし、AもBも下から眺めていただけだ。

もしかしてあれか?俺の階段を駆け下りる姿がマズかったか?

普通に考えて、俺の体験談が恐ろしかったってことか?

少し考えて、俺も大概、恐怖に呑まれて相手の言葉に過敏になりすぎてると思った。

こんな時だからこそ、早く帰ってみんなで残りの夏休みを楽しくゆっくり過ごそうと、

そればかりを考えるようにした。

だがその後のBの怯えようは半端なかった。

俺達がたてる音一つ一つに反応したり、俺の足の傷を食い入るようにじっと見つめたり、

明らかに様子がおかしかった。

Aも普段と違うBを見て、多少びびりながらも心配したんだろう、

A「おい、大丈夫か?寝てないから頭おかしくなってんのか?」

と問いかけながらBの肩を掴んだ。

するとBは急に、

B「うるさいっ!!」

と叫び、Aの腕をすごい勢いで振り払ったんだ。

Aと俺は一瞬沈黙した。

俺「おい、どうしたんだよ?」

Aは急のできごとに驚いて声を出せずにいた。

B「大丈夫かだって?大丈夫なわけねーだろ?

俺も○○(俺の名前)も死ぬような思いしてんだよ。

何にもわかってねーくせに心配したふりすんな!!」

Aを睨み付けながらそう叫んだ。

何を言ってるんだろうと思った。

Bの死ぬ思いってなんだ?俺の話を聞いて恐怖してたわけじゃないのか?

AとBは仲間内でも特に仲が良かったんだが、その関係もAがBをいじる感じで、

どんな悪ふざけにもBは怒らず調子を合わせていた。

だからBがAに声を荒げる場面なんか見たことなかったし、もちろん当の本人Aもそんな経験なかったんだと思う。

Aはこれも見たことないくらいにオロオロしていた。

俺は疑問に思ったことをBに問いかけた。

俺「死ぬ思いってなんだ?お前ずっと下にいたろ?」

B「いたよ。ずっと下から見てた」

そして少し黙ってから下を向いて言った。

B「今も見てる。」

俺「・・」

今も?

え、何を?

俺は訳がわからない。

全然わからないんだが、よくある話で、Bの気が狂ったんだと思った。

何かに取り憑かれたんだと。

そんな思いをよそに、Bは震える口調で、でもしっかりと喋りだした。

B「あの時、俺は下にいたけど、でもずっと見てたんだ」

俺「上っていく俺だよな?」

B「違うんだ・・いや、初めはそうだったんだけど。

お前が階段を上りきったくらいから、見え出したんだ」

俺「・・うん」

本当はこのとき、俺の心の中は聞きたくないという気持ちが大半を占めていた。

でもBは、もうこれ以上一人で抱えきれないという表情で、まるで前の日の自分を見ているようだったんだ。

あのとき、俺の話を最後までちゃんと聞いてくれたAとB、あれで自分がどれだけ救われたかを考えると、

俺には聞かなくちゃならない義務があるように思えた。

俺「何が、見えたんだ?」

B「・・・」

Bはまた少し黙りこみ、覚悟したように言った。

B「影・・だと思う」

俺「影?」

B「うん。初めはお前の影だと思ってたんだ。

けど、お前がしゃがみこんで残飯を食っている間にも、ずっと影は動いてたんだ。

お前の影が小さくなるのはちゃんと見えたし、自分らの影も足元にあった。」

B「それでそれ以外に動き回る影が・・」

B「3つ・・いや4つくらいあった。」

俺は、全身にぶわっと鳥肌が立つのを感じた。

どうかこれがBの冗談であってくれと思った。

しかし、今目の前にいるBはとてもじゃないが冗談を言っているように見えなかった。

むしろ、冗談という言葉を口に出したとたんに殴りかかってくるんじゃないかってくらいに真剣だった。

俺「あそこには、俺しかいなかった」

B「わかってる」

俺「そもそも、あのスペースに人が4,5人も入って動き回れるはずない」

あの階段は人が一人通れる位のスペースだったんだ。

B「あれは人じゃない。それ位わかるだろ」

俺「・・・」

B「それに、どう考えても人じゃ無理だ」

Bはポツリと言った。

俺「どういうことだ?」

B「全部、壁に張り付いてた」

俺「え?」

B「蜘蛛みたいに、全部壁の横とか上に張り付いてたんだ。

それで、もぞもぞ動いてて、それで、それで・・・」

自分の見た光景を思い出したのか、Bの呼吸が荒くなる。

俺「落ち着け!深呼吸しろ。な?大丈夫だみんないる」

Bはしばらく興奮状態だったが、落ち着きを取り戻してまた話しだした。

B「あれは人じゃない。いや、元から人じゃないんだけど、形も人じゃない。

いや、人の形はしてるんだけど、違うんだ」

Bが何を言いたいのかなんとなくわかった俺は、

俺「人間の形をしたなにかが、壁に張り付いてたってことか?」

と聞いた。

Bは黙って頷いた。

口から飛び出そうなくらいに心臓の鼓動が激しくなった。

とっさに、Bが見たのは影じゃないと思った。

影が横や上の天井を動き回るのは不自然だ。

仮にそれが影だったとしても、確実にそこに何かがいたから影ができたんだ。

それくらいバカの俺でもわかる。

ということは、俺は自分の周りで這い回る何かに気づかず、しかも腐った残飯を

モリモリと食べていたってことなのか?

あの音は・・?

あのガリガリと壁を引っかく音は、壁やドアの向こう側からじゃなくて、

俺のいる側のすぐそばで鳴っていたということか?

あの呼吸音も?

恐怖のあまり頭がクラクラした。

そんな俺の様子を知ってか知らずか、Bは傍に立っていたAに向き直り、

B「ごめん、さっきは取り乱して。悪かった」

と謝った。

A「いや、大丈夫・・こっちこそごめんな」

Aもすかさず謝った。

その後なんとなく気まずい雰囲気だったが、俺は平静を保つのに必死だった。

無意味に深呼吸を繰り返した。

そんな中Aが口を開いた。

A「お前さ、さっき今も見てるっていったけど」

BはAが言い終わらないうちに答えた。

B「ああ、ごめん。あれはちょっと、錯乱してたんだわ。ははっ

ごめん、今は大丈夫」

そういったBの笑顔は、完全に作り笑いだった。

明らかに無理した笑顔で、目はどこか違うところを見ているようだった。

関係ないんだが、このとき何故かものすごい印象的だったのは、Bの目の下がピクピクいってたことだ。

こんなん何人かに一人はよくあることだよな?

だけど無理して笑う人の目の下ピクピクは、結構くるものがあるぞ。

話を戻すと、Aと俺はそれ以上聞かなかった。

臆病者だと思われても仕方ない。だけど怖くて聞けなかったんだ。

ちょっと考えてみろ、ここまで話したBが敢えて何かを隠すんだぞ。

絶対無理だろ。聞いたら、俺の心臓砕け散るだろ。

それこそ俺が発狂するわ。

少しの沈黙のあと、広間のほうから美咲ちゃんが朝飯の時間だと俺達を呼んだ。

3人で話している間に結構な時間が過ぎていたらしい。

正直、食欲などあるはずもなく。

だが不審に思われるのは嫌だったし、行くしかないと思った。

俺はのっそりと立ち上がり、二人に言った。

俺「なるべく早いほうがいいよな。朝飯食い終わったら言おう」

A「そうだな」

B「俺、飯いいや。Aさ、ノートPCもってきてたよな?ちょっと、貸してくれないか?」

A「いいけど、朝飯食えよ」

B「ちょっと調べたいことがあるんだ。あんまり時間もないし、悪いけど二人でいってきて」

俺「了解。美咲ちゃんに頼んでおにぎり作ってもらってきてやるよ」

B「うん、ありがと」

A「パソコンは俺のカバンの中に入ってる。勝手に使っていいよ。ネットも繋がるから。」

そう言って俺達はそのまま広間に行った。

後から考えると、辞めるその日の朝飯食うってどうなの?

他人がやってたら絶対突っ込むくせして、俺らふっつーに食べたんだが。

広間に着くと、女将さんが俺らを見て、更には俺の足元をみて、満面の笑顔で聞いてきたんだ。

「おはよう、よく眠れた?」って。

そんな言葉、初日以来だったし、昨日のこともあったからすごい不気味だった。

びびった俺は直立不動になってしまったわけだが、Aが、

A「はい。すみません遅れて。」

と返事をしながら俺のケツをパンと叩いた。

体がスっと動いた。

いつも人一倍びびってたAに助け舟を出してもらうとは思わなかったから、正直驚いた。

そしてBが体調不良のためまだ部屋で寝ていることを伝え、美咲ちゃんにおにぎりを作ってもらえるよう頼んだ。

「あ、いいですよ。それよりBくん、今日は寝てたほうがいいんじゃ」

美咲ちゃんは心配そうにそう言った。

Aと俺は、得に何も言わず席についた。

”もう辞めるから大丈夫”とは言えないからな。

朝飯を食っている間、女将さんはずっとニコニコしながら俺を見てた。

箸が完全に止まってるんだ。「俺、ときどき飯」みたいな。

美咲ちゃんも旦那さんもその異様な光景に気づいたのか、チラチラ俺と女将さんを見てた。

Aは言うまでもなく、凝固。

凄まじく気分の悪くなった俺達は朝飯を早々に切り上げて、女将さん達に話をするため、部屋にBを呼びに行った。

部屋に戻る途中、Bの話し声が聞こえてきた。

どうやらどこかに電話をしているようだった。

俺達は電話中に声をかけるわけにもいかなかったので、部屋に入り座って電話が終わるのを待った。

B「はい、どうしても今日がいいんです。・・・・はい、ありがとうございます!

はい、はい、必ず伺いますのでよろしくお願いします。」

そう言って電話を切った。

どうやらBは、ここから帰ってすぐどこかへ行く予定を立てたらしい。

俺もAも別に詮索するつもりはなかったんで何も聞かず、すぐにBを連れて広間に向かった。

広間に戻ると美咲ちゃんが朝飯の片付けをしていた。

女将さんはいなかった。

俺はふと思った。

あそこに行ってるんじゃないか?って。

盆に飯のっけて、2階への階段に消えていったあの女将さんの後姿がフラッシュバックした。

きっとあの時持って行った飯は、あの残飯の上に積み重ねてあったんだろう。

そうして何日も何日も繰り返して、あの山ができたんだろうな。

(一体あれは何のためなんだ?)

俺の頭に疑問がよぎった。

けど、そんなこと考えるまでもないとすぐに思い直した。

俺は今日で辞めるんだ。ここともおさらばするんだ。すぐに忘れられる。

忘れなきゃいけない。心の中で自分に言い聞かせた。

Aが女将さんの居場所を美咲ちゃんに尋ねた。

「女将さんならきっと、お花に水やりですね。すぐ戻ってきますよ」

そう言って美咲ちゃんは、Bの方を見て、

「Bくん、すぐおにぎり作るからまっててね」

と笑顔で台所に引っ込んだ。

ああ、美咲ちゃん・・何もなければきっと俺は美咲ちゃんとひと夏のあばん(ry

俺達は女将さんが戻ってくるのを待った。

しばらくすると女将さんは戻ってきて、仕事もせずに広間に座り込む俺達を見て

「どうしたのあんたたち?」

とキョトンとした顔をしながら言った。

俺は覚悟を決めて切り出した。

俺「女将さん、お話があるんですけどちょっといいですか?」

女将さんは

「なんだい?深刻な顔して」

と俺達の前に座った。

俺「勝手を承知で言います。

俺達、今日でここを辞めさせてもらいたいんです」

AとBもすぐ後に、

AB「お願いします」

と言って頭を下げた。

女将さんは表情ひとつ変えずにしばらく黙っていた。

俺はそれがすごく不気味だった。

眉ひとつ動かさないんだ。まるで予想していたかのような表情で。

そして沈黙の後、

「そうかい。わかった、ほんとにもうしょうがない子たちだよ~。」

と言って笑った。

そして給料の話、引き上げる際の部屋の掃除などの話を一方的に喋り、

用意ができたら声をかけるようにと俺達に言ったんだ。

拍子抜けするくらいにすんなり話が通ったことに、三人とも安堵していた。

だけど、心のどこかでなんかおかしいと思う気持ちもあったはずだ。

話が決まったからには俺達は即行動した。

荷物は前の晩のうちにまとめてある。

あとは部屋の掃除をするだけで良かった。

バイトを始めてから、仕事が終われば近くの海で遊んだり、疲れてる日には戻ってすぐに爆睡だったんで、

部屋にいる時間はあまりなかったように思う。

だから男3人の部屋といえど、元からそんなに汚れているわけでもなかった。

そんなこんなで、一時間ほどの掃除をすれば部屋も大分綺麗になった。

準備ができたということで、俺達は広間に戻り、女将さんたちに挨拶をすることにした。

ごめん今回で完結するつもりだったんだが、無理そうだ。

というかⅢまで読んでくれてることにまず感謝。

Ⅱから時間の経過がほぼ皆無なんだよな、申し訳ない。

ただ説明することが多すぎて、自分の文才がもう少しあれば上手くまとめられたんにって思います。

てことで次回で完結できると思いますん。

続きま~

■シリーズ1 2 3 4 5 その後

怖い話投稿:ホラーテラー 匿名さん  

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