短編2
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明晰夢

 あまり人には言えない話なのだが、昔俺は自分の見る夢を自由にコントロールにするこ

とができた。

 夢を見ているとき余りに非現実的な展開が起こるとふと「あ、これ夢だ」と気付くこと

がある。これを明晰夢と言うらしいのだが、そうするともう好き放題。念じればどんな食

べ物もゲームも出すことができるし、友達を夢の中に登場させて一緒に遊ぶこともできた。

小学生の頃は夢でゲーセンに行ってひたすらゲームしていた記憶がある。夢の中なのにゲ

ームはちゃんと面白かった。

 俺の明晰夢にはコンディションがあって、夢の中でこの眠りが浅いか深いかが何となく

わかった。眠りが深いときの夢はすごいリアリティを帯びる、しかもなかなか目覚めない

ので時間を気にせずに好き勝手できる。眠りが浅いときの夢はあやふやで、コントロール

しようとするとすぐ覚めてしまう。(眠りが深いときは夢を見ないというが多分比較的に

浅い深いがあるのだと思う。)

 中学生になると好きな女の子とSEXしたいという欲望に駆られるようになったのだが、な

ぜかこれだけ夢に見ることができなかった。夢に女の子を登場させることはできるのだけ

どコトに及ぼうとすると眠りが浅くなり真夜中でも目が覚めてしまう。そんなことが何度

もあったのだが思春期の俺はどうしても諦めきれずに挑戦し続けた。

 ある時、ものすごく深く、リアリティのある夢を見た。この夢ならば俺の悲願を遂げら

れる!と思いさっそく女の子を登場させたのだけどそのとき何故か彼女は後ろを向いてい

た。俺は彼女の肩に手をかけたのだが、その瞬間に彼女はすごい勢いで振り向いた。

 知らない女の顔だった。

 当時中学生だった俺は好きな子もやはり中学生だったのだが、それは明らかにおばさん

の顔で母親と同じくらいの年齢だった。しかも振り向いた顔がものすごく怒っているのだ、

俺は夢の中で絶叫を上げた。すると自分の夢が急速に覚めていくのがわかった。しかし、

まなじ夢が深かったばっかりに完全に覚めるまでの体感で十数秒間、夢の中でその女と見

つめあう羽目になった。その顔は今でも忘れられない。そいつは何もしゃべらなかったが、

何故か俺が他の女に手を出しのを怒っているような気がした。

 それ以来、女の子を夢に登場させることはしなくなったし、好きだった女の子もなんか

怖くなってしまった。そして成人するころには明晰夢を見てもコントロールなんて出来なく

なってしまっていた。

 夢の中の女の顔は今でもはっきり覚えていて、はっきりしすぎているのでもしかしたら

現実のどこかで会うかもしれないと思って恐怖することがある。

 だってそいつの怒った顔、本当に怖かったんだもの。

怖い話投稿:ホラーテラー 匿名さん  

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