(隣街に、美味しいラーメン屋がある。)
そんな噂を聞いて、僕もそのラーメン屋に行って見た。
店内は、常連客らしき人達がいっぱいで、確かに繁盛していた。
僕は、その店のオリジナルラーメンを注文した。
出てきたラーメンは、味も見た目も何処にでもあるような、強いていうなら、チャーシューが厚くて、柔らかい、それくらいしか特徴がない普通のラーメンだった。
僕は、期待外れにがっかりして店をでた。
ところが、一週間ほどすると、僕は、またあのラーメンが無性に食べたくなってしまった。近くに美味しいラーメン屋はいっぱいあるのに、僕は、わざわざ隣街まで足を運んだ。
そんなことが続き、僕は週末にはその店に行く常連客になっていた。
店に行ったある時、僕は、店の店主のオヤッサンに話しかけた。
僕
「週末になると、いつもここのラーメンを食べたくなるんですよ。不思議てすね。」
初老のオヤッサンは、髪に白いものが目立つ。苦労を重ねてきた証拠だ。
右腕には、刺青がある若いころは、ヤンチャだったんだろう。
オヤッサン
「お客さん、俺はねぇ、ラーメンに精一杯の気持ちを入れてんだ。だから、何度でもこのラーメンを食いたくなるんですわぁ」
精一杯の気持ちか!
僕は、なんだか楽しい気分になり、スキップしながら家路についた。
次の週末、いつものように店に行くと、店は閉まっていた。
あんなに繁盛していた店がやってないなんておかしいな、そう思いながら、店の前で座っていると、向こうからフラフラと顔見知りの常連客が歩いてきた。僕は、常連客に聞いてみた。
僕
「今日は休みですかね、珍しい。」
常連客は驚いた顔で言った。
常連客
「お前知らないの、この店のオヤッサン、覚醒剤をいっぱい持っててさ、警察に捕まったんだぜ。」
そして、僕に近づき小声で言った。
常連客
「だけどよ、オヤッサンの体からは、薬が検出されなかったんだってよ。」
常連客は、にやりと意味ありげな笑いを残し、又フラフラと立ち去った。
精一杯の気持ちねぇ…
僕の体が、オヤッサンのラーメンを求める理由が、今はっきりと分かった。
怖い話投稿:ホラーテラー 匿名さん
作者怖話