ある日私は会社の仕事で、得意先の人の家へと行った
長丁場になり帰る頃にはすっかり夜になっていた
私は一人でバス停に並びバスを待っていたが、なかなかバスが来ない
しばらくすると一人の女がバス停に並んだ
女はかなり大きなマスクをしており、私はそれを見て
『くちさけ女?(笑)』
と思った
昔学校でかなり話題になったのを覚えている
しばらくそのままバスを待っていると女が声をかけてきたのだ
「あの、すいません。バスはもう来ないですよ。駅まで歩いていきませんか?」
「え?そうなんですか?あ、それじゃ…」
時計を見るといつのまにか0時をまわっていた
バスが来ないわけだ
私はくちさけ女みたいな女性と歩きだした
見た目とはちがい、その女性は気さくに話しかけてくれる
すると突然女性が言った
「あなた、私がクチサケ女みたいだと思ったでしょ」
「えぇ!?…ま、まぁ」
「その通りよ。私はクチサキ女なの」
いきなりそんなことを言うので、変な女だなと思った
すると女がマスクをはずした
心臓がとまりそうになった
なんと口が耳元まで裂けていたのだ
ふたたび女は話し始めた
「アメリカのある大学で研究が行われて、生徒にあるアンケートが実施されたの。それは、『もしあなたがエイズにかかったらどうしますか?」という内容だった。その結果、1割から2割の人は『エイズ撲滅運動に参加する、エイズについて人々にうったえる』という答えだったの。けれど残りの8割以上の答えは『やりまくってエイズを増やす』というものだったの。」
話しを聞いてるあいだ汗がとまらなかった
そういえば、この女、バスが来ないのを知っててバス停に並んだ
それは、おれに話しかけるためだ…
女はさらにつづけた
「人って口では良いこと言ってて、実際にそれが自分に降り掛かると、すぐに自分が大事になるの。私だって人間だもの。こんな姿自分だけなんてズルいわ」
息ができない
体も動かない
「はじめ私があなたに、私のことをなんて言ったか覚えてる?」
「く…くち…くちさけ…おんな?」
そして女は鞄から巨大なハサミを取り出した
「ううん。ちがうわ…わたしは…」
沈黙がつづく
「ク・チ・サ・キ・女」
怖い話投稿:ホラーテラー koh-chanさん
作者怖話