短編2
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クチサキ女

ある日私は会社の仕事で、得意先の人の家へと行った

長丁場になり帰る頃にはすっかり夜になっていた

私は一人でバス停に並びバスを待っていたが、なかなかバスが来ない

しばらくすると一人の女がバス停に並んだ

女はかなり大きなマスクをしており、私はそれを見て

『くちさけ女?(笑)』

と思った

昔学校でかなり話題になったのを覚えている

しばらくそのままバスを待っていると女が声をかけてきたのだ

「あの、すいません。バスはもう来ないですよ。駅まで歩いていきませんか?」

「え?そうなんですか?あ、それじゃ…」

時計を見るといつのまにか0時をまわっていた

バスが来ないわけだ

私はくちさけ女みたいな女性と歩きだした

見た目とはちがい、その女性は気さくに話しかけてくれる

すると突然女性が言った

「あなた、私がクチサケ女みたいだと思ったでしょ」

「えぇ!?…ま、まぁ」

「その通りよ。私はクチサキ女なの」

いきなりそんなことを言うので、変な女だなと思った

すると女がマスクをはずした

心臓がとまりそうになった

なんと口が耳元まで裂けていたのだ

ふたたび女は話し始めた

「アメリカのある大学で研究が行われて、生徒にあるアンケートが実施されたの。それは、『もしあなたがエイズにかかったらどうしますか?」という内容だった。その結果、1割から2割の人は『エイズ撲滅運動に参加する、エイズについて人々にうったえる』という答えだったの。けれど残りの8割以上の答えは『やりまくってエイズを増やす』というものだったの。」

話しを聞いてるあいだ汗がとまらなかった

そういえば、この女、バスが来ないのを知っててバス停に並んだ

それは、おれに話しかけるためだ…

女はさらにつづけた

「人って口では良いこと言ってて、実際にそれが自分に降り掛かると、すぐに自分が大事になるの。私だって人間だもの。こんな姿自分だけなんてズルいわ」

息ができない

体も動かない

「はじめ私があなたに、私のことをなんて言ったか覚えてる?」

「く…くち…くちさけ…おんな?」

そして女は鞄から巨大なハサミを取り出した

「ううん。ちがうわ…わたしは…」

沈黙がつづく

「ク・チ・サ・キ・女」

怖い話投稿:ホラーテラー koh-chanさん  

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