中編3
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聞いてください

 

 今から3年前、うちの会社に、事務員さんが入社してきました。

 

 その女性は私と年齢が近く、バツ1、子供2人、しかし気立てのいい、とてもおしゃべり上手の綺麗な女性です。

 ある日、私は会社の駐車場で、その女性と一緒の帰宅時間になり、たわいのない話をしていると、

 「今度花見でも行きたいですね」

 と女性は言いました。

 私は当然、社交辞令だと思いました。

 「そうですね、今度みんなでいきましょうよ」

 

 私はそう言い、その場はそれで終わりました。

 実際、花見の話は流れてしまったのですが、それから約1年くらいにわたり、私はその女性からの、いわば「お誘い」的なものが続いたんです。

 「夏は花火大会とか行くの?」

 「食べ物は何が好きなの?」

 「あそこにおいしいパスタ屋さんができたんだけど・・・」

 いくら鈍感な私でも、

そこまでお誘いが続くと

「私に気があるのかな~」

と、思いざるを得ませんでした。

 これは独身の私にとって、とても嬉しい事なんですが、いかんせん、彼女は私より少し年上、おまけにバツ1という事もあって、私の恋愛対象にはならなかったのです。

 それから1年半後の事です。

 

 もう1人、事務員さんが入ってきたんです。

 年は20代半ばで、少しぽっちゃりしていますが、控えめで周りにとても気を使ういい子です。

 どちらかというと私は恋愛には奥手です。

 そしてインドア派の私にとって唯一、人との接点があるのは職場のみだったんです。

 

 もうそろそろ彼女が欲しいと思った私は、彼女にアタックし、食事のお誘いをしました。

 返事は「OK」でした。

 

 それから事はとんとん拍子に進み、実は今、彼女と同棲しています。

 ある日の事です。

 私は風呂から上がり、彼女に風呂を促がすと彼女はお風呂に入りました。

 そして私がテレビを見ている時です。

 「ピンポン、ピンポン、ピンポン!!!」

 と家のチャイムが凄い勢いで鳴ったんです。

 「ええっっ・・、何!?・・」

 いくらなんでも異常な鳴らし方でした。

 私は恐る恐るインターホンのモニターを見ました。すると

 バツ1の事務員さんが立っていたんです。

 頭がボサボサで、しかも化粧もせずに。

 そしてインターフォンのカメラに向かってこう言ったんです。

 「お前、絶対、許さんからな! 絶対に!」

 そう言い放つと、ドタドタッ、とその場を去っていきました。

 私の体は鳥肌が立ち、怖くて、その場から一歩も動けませんでした。

 結局、その事は彼女には言わず、次の日、普通を装い、会社に出勤しました。

 事務員さんは普通どうりに仕事をしています。

 1日のうちに2回ほど廊下をすれ違うのですが、今までと変わらず、少し笑みをこぼし、会釈してすれ違って行きます。

 「あの夜の出来事は、一体なんだったんだろう」

 今はもう、その事務員さんとは、ただの挨拶社員になっていますが、あの日のことを思い出すと、とても怖いです。

怖い話投稿:ホラーテラー 匿名さん  

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