中編4
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地震 デパート 倒壊

 私には変わった友人が多い。

 作品を投稿している間に、東海・伊豆地方で強い地震が発生したようだ。

 そういえば、地震にまつわる話で、友人からこういう話を聞いたことがある。

 むかし地震によりデパートが倒壊した、あの事件のことだけど、友人の知り合いがたまたまそれに巻き込まれて経験したという話。

 地震に巻き込まれてその人が気がついたのは真っ暗闇の中。当時は携帯電話などなかったので、ライト代わりになるものや外部と連絡する手段は無い。コンクリートとコンクリートの間の、上下の僅かな隙間にはさまれているようで、手足もろくに動かせなかったそうです。自分に何が起こったのか、しばらくわからなかった。頭も強く打っている。

 「おーい、誰か! 誰かたすけてくれぇ!」

 声を張り上げても暗闇に消えるだけ。余震があり、いつ自分は潰されるかわからない。

 時間がわからないので、どのくらいそうしていたのかわからない。十数分か1時間か・・・その人は声を出すのを止めた。

 誰かの・・・声がする。

 「うるせぇんだよ! わめくんじゃねぇ!」

 相手も身動きできないらしい。はっきりではないが、言葉は聞き取れる。

 「大丈夫か!? どうなってるんだ! 何が起きた」

 「地震だ ひさしぶりに大きい地震だ。ビルが崩れたのさ。」

 「ビルが崩れたって!・・・イテテッ 頭が痛い・・・血が出ているようだ・・・私達はどうなるんだ」

 「知るかよ! ま、なるようにしかならねぇよ。ハハッ!」

 「嫌だ! こんなところで死ぬのは嫌だ!」

 「しょうがねーべよ! ここはあまり人がこないところだからな。おかげで俺もよ・・・」

 「嫌だ! こんなところで死ぬのは嫌だ!」

 「だから 泣きわめいてもしょーがあんめぇよ! うるせーな! そんなことよりもよ、今日は何日だ」

 「・・・たぶん・・・今日は ○○日・・・」

 「○○日! てめぇ吹かしてんじゃあんめぇな!」

 「どのくらい気を失っていたかわかりませんけど、たぶん」

 「うわぁ やべぇ! 兄貴に殴られちまう! 早く届けねぇと!」

 又聞きなので、詳しくはわからないけど、そんなやりとりがあり、どうやら相手はヤクザ(?)というかチンピラ(?)らしく、誰かから追われていたらしい。

 知人は、チンピラは身を隠している時にこの地震に遭って、閉じこめられたんだな、そう思った。

 こんな漆黒の闇の中で、とにかく誰か人と会話できるということが嬉しかった。助けはなかなかこなかったけど、そのうち 雨? 放水の水? が流れてきて、喉を潤すこともできた。

 水を飲むことができたことが、生還につながったようだ。

 頭が痛い。

 頭が痛かったが、助け出される6日後まで、チンピラとの会話で気を紛らわせることができた。

 知人は心配した。チンピラは、水が飲めないようだ。

 「飲めねぇんじゃねぇ! 飲めねぇんだよ!」

 「そんなに、そこはひどいのか?」

 「だから飲めねぇんだよ! わかんねぇかな!」

 「私も動けないが、手足は少しは動かせる。手を伸ばすから、君も・・・どうだ、とどくか?」

 「ちげーよ! そうじゃねーよ! 手足を・・・縛られてんだよ」

 「縛られている!」

 身を隠したのではなく、捕まっていたのか!?そして、どこかの小部屋に数日閉じこめられていた。だから、先ほどからの会話でどうもかみ合わないところがあると思った。

 声も、よく聞くと、どこかくぐもったような、弱々しい気がする。

 同じこのフロアーにいるのか!?いや・・・よく聞くと・・・もしかして更に地下階に閉じこめられている!?

 余震があった。かなり強い余震で、知人はブロックの圧力で、気を失った。

 次に目を覚ました時、知人はベットに寝ていた。

 倒壊から1週間が経とうとし、救助隊はあきらめかけていたところ、余震で壁が崩れ、助けを求める声がした。声のする方を掘ってみると、知人が埋もれていたそうだ。

 ・・・私は気を失っていたのに?

 そうか! 彼が呼んでくれたんだ!!

 「そうだ! 彼はどうなったんですか!」

 「彼って?」

 「私の同じ、生き埋めになっていた彼ですよ!」

 「・・・ああ、彼ねぇ・・・」

 医者は、けげんそうな顔をしている。

 「私の下の階に埋もれていた、あの人ですよ!」

 「いやぁ、あのビルには、君が埋もれていたあそこが一番下のフロアーだよ」

 「そんなことはありません。私は閉じこめられていた間、ずっとしゃべっていたんですから」

 「そうは言ってもねぇ」

 

 なんだか、歯切れが悪い。

  

 新聞には、遭難者が発見されるとだけ見出しに出ていたけれど、それからしばらくして、体が回復して退院するときに関係者から聞いたそうだ。

 初めは頭部を強く打ったためか、強度のストレスから幻聴を聞いたのか、とにかく知人は疑われていたらしい。おかしくなったと。 

 しかしその後、ビルを解体するために基礎を崩している最中、彼が見つかったそうだ。

 白骨化した状態で。  

 そんな話を思い出した。

怖い話投稿:ホラーテラー るすいさん  

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