短編2
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Re-Birth

友人から聞いた話です。

お互いを心から愛しあっているカップルがいました。男をA、女をBとします。

Aは会社勤めで真面目によく働いていたので、ある日社長から娘とお見合いをしてくれないかと頼まれました。

Aには結婚を考えている相手がいたので当然断るべきですが、社長の娘との結婚という好条件に目が眩み、考えさせて頂きます、と答えたそうです。

そんなある日、Bと久しぶりのドライブに出かけた彼は、デートスポットととして有名な海に面した道を通っていました。

そしてある断崖絶壁に差し掛かったところで絶景を見るために車を止めました。あまりきちんとした冊が整備されていない危険な場所でしたが、絶景を楽しむのには最高のスポットだったそうです

二人はさらに近くで見るために、冊を越えて足場の悪い所に行こうとしました。その時Bは麦藁帽子を被っていたそうですが、冊を越えようとした時に突風が吹き、帽子が飛ばされてしまいました。Bは急な事に慌てて帽子を捕まえようとしたので、バランスを崩し、崖下に落ちそうになりました。Aは既に冊を越えていたので、すかさずBの腕をドラマのように間一髪掴んだそうです。

お互いに心から安堵し、AはBを引き上げようとしましたが、不意に社長令嬢との結婚話が脳裏に浮かびました。

―ここでこいつが落ちても、事故として話は片付く―

大好きな彼女を前に冷静に判断―

ためらわずに彼女の手を離しました。

Bは涙ぐみながら安堵しつつ引き上げられようとしているところを、急に離され、何とも形容しがたい顔で

―どおしてよおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ―

と叫びながら落ちていったそうです。

その後この話はAが予想した通り事故で片付けられ、Aは周りに最愛のフィアンセを失った気の毒な人としてうつりました。

そして無事に令嬢と結婚、娘も生まれ幸せな家庭を築いていました。

数年後、事件の事を忘れかけていたある日、Aは家族を連れて久しぶりの遠出を楽しんでいました。

しかしふと、あの場所に近づいていることに気が付いたAは、嫌な記憶を思いだしました。

正にその時、娘がトイレに行きたいと騒ぎ始めました。

そのあたりにトイレはなかったのでAは仕方なく、例の断崖絶壁辺りに車を止め、娘を崖近くの草むらに連れて行って用を足させました。

用を足し終えたのか、ふと娘は振り返って

今度は落とさないわよねぇ

怖い話投稿:ホラーテラー 大和さん  

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