中編3
  • 表示切替
  • 使い方

ビジネスホテルで

数年前に都内のビジネスホテルに泊まった時の話です。

その日、ホテルにチェックインできたのは10時を少し回ったくらい。

パックツアーで選択できる一番安いホテルでしたが、そこそこきれいで古くもなく交通の便も良く、なくなかなレベル。

鍵を受け取り、部屋のドアを開けた瞬間、部屋の中からむわっとした空気が押し出されてきました。

季節が夏だったので、その時は「空調が悪い部屋だなぁ」としか思わなかったのですが、電気をつけ部屋の中に入りベッドの場所を確認した瞬間、違和感を感じました。

最初はその違和感が何か分からなかったのですが、シャワーを浴びてベッドの上でテレビを眺めているときに違和感の正体に気が付きました。

この部屋、飾ってある絵の数が不自然に多いんです。

通常、ビジネスでシングルの部屋は狭いから、絵なんてあったとしても1枚程度が普通です。

でも、この部屋は、窓がある壁以外の3箇所に絵が掛けてあるのです。

妙な違和感はこのせいでした。

見てはダメだと思いつつも好奇心に負けて、まずはベッドの頭側の絵をひっくり返しました…が、なにも無し。続いて、足元側の絵…これまたなにも無し。

期待外れだと呟きつつも、少しホッとしながら、最後にベッドの左側(窓と向かい合わせ)の絵をひっくり返しました。

「………」

そこには1枚のお札が貼り付けられていました。

驚きと恐怖とベタすぎるという思いで硬直してしまいましたが、とりあえず絵を元に戻しました。

既に日付を超えていたし、朝イチでチェックアウトする予定だったので、寝てしまえばいいや!と開き直ってサイドボードの電気だけは点けた状態で、ベッドに潜り込みました。

緊張と恐怖でなかなか寝付けなかったのですが、1時間ぐらいしてようやくウトウト…が、妙な重苦しさがまとわりついてきました。それを振り払うように寝返りをうち、例の絵に背を向けるように横向きになった瞬間、ビリッと痺れたように金縛りに襲われました。

身体は全く動かせず、目も恐怖と眠気で開く勇気はなく…

なかぱヤケに「寝ちゃえばすぐ朝だ!」と眠りに落ちようとした時でした。

nextpage

ガシッ!!と何かが私の左の肩を掴んだのです。

何者かが侵入したのかとも思いましたが、感触があまりに異様だったので、すぐに生き物ではないと分かりました。

それは大きな人間の手のようでもあり、なにか他の生き物の手のようでもありました。強い力で肩に指が食い込みます。

恐怖と痛みで思考はパニック状態。目を開けたくなりましたが、開けたらこれ以上の恐怖が待っていそうで、ひたすら目を強く閉じました。

動かない私に焦れたのか、肩を掴んでいる何かの手が、ぐいっと肩を強く引っ張りました。

なす術もなく私の身体は仰向けにされ、肩を掴んでいた感触が無くなった代わりに、何かが真上から私を見下ろす気配が伝わってきます。

大きくて重く生暖かい気配。人間の男のようなのだけど、もっと獣めいた別のもののように感じました。

じわりじわりと気配が身体に近づいてくるのが伝わってきました。

ヒューっと風を切るような呼吸音が耳を掠め…私は恐怖のあまり、その時点で気を失ってしったのでした…

nextpage

翌朝、セットしておいた携帯のアラームで目を覚ますと、何事もなく朝が来ていました。

ひどく寝汗をかいてあること以外は特に変わった様子もなく、昨夜のことは夢だったんだろうなぁと自分に言い聞かせ、とりあえず汗を長そうとシャワーを浴びました。

汗を流し、着替えるために部屋にもどり、ふと鏡に写った自分に目が止まりました。

「………!」

左肩にくっきりと掴まれたようなアザが残っていたのです。

もうそこからは急いで出発の準備をし、逃げるようにホテルを後にしました。

その後は急いで友人と合流。その日のホテルはその友人とツインでした。一応、部屋の絵は確認してもらいましたが、なにも無し。何も起こりませんでした。

帰宅してからも時々思い出して怖くなることはありますが、特に何事なく過ごしています。

小心者なのでホテルに問い合わせなどはしていませんから詳細は不明ですが、あの部屋に何かがいたことは確かです。

みなさんもホテルに泊まるときはご注意下さいませ。

怖い話投稿:ホラーテラー 匿名さん  

Concrete 59189e6fb4d79119a63e92183ffb92aeb8f46031afd97d5db060811ce15c35e6
閲覧数コメント怖い
25610
  • コメント
  • 作者の作品
  • タグ

無駄な描写や台詞がないだけに、怖いし、読み易くて面白かったです。