中編3
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廃村の横断歩道

 

これは俺と友達(F君)とその先輩(Aさん)で体験したことだ。

俺はこんな感じのことが何度かあるような一種の苦労体質の人間なんだが。

うまいことにあるようでないような話だ。

聞いたことある人はスルーしてくれ。

そこで、そんなことが何回かあったって聞いたしな。

Fが高校なった時に、先輩は短大に行った。

Fが中学の頃はよくつるんでいたらしいが、それっきりあまり連絡を取らなくなった。

暇が出来たFは先輩と久しぶりに電話で会話した。

先輩が「この間、車の免許とったんだよ。一緒にドライブ行こうぜ!」と誘ってきたので、Fは「行きます!」と即答した。

その時、「あ、友達も連れて行っていいですか?」とFは言った。

「いいぜぇ~。お前の友達、見てみたいしな!」と先輩もOKをだした。

そして、俺がFによって巻き込まれたわけだ。

予定通り、俺達は夜にドライブに出かけた。

何故、俺がドライブに誘われたかと言えば、俺の兄貴が車の改造とか好きだからだろう。

もっとも、父親の職業のせいでもあるんだろうが。(車を改造したり、直して金もらってる。)

先輩に連れて行きたいところが在ると言われていたFはかなり楽しみにしていたが、俺はもう、帰りたい気分だった。

これ、普通の軽自動車じゃねぇか!!

俺が好きなのはスポーツカーだっつーの!色は赤が好きだバカヤロウ!!

山道へ入った新車は坂道も楽々と登っていく。

軽だが、結構しっかりしている印象を受けた。

「ここらへんさ、つれてきたかった場所なんだけど、幽霊とか出るらしいんだよね。ほら、村の跡地っていうか。」

「すごいですね・・・始めてみました。廃村ってことですよね?」

Fが窓の外を見ながら言った。

そして俺をチラリと見る。

俺は何度か不気味な体験をしたことがあり、Fにはそれが筒抜けだった。

だからだろうか。期待したような目で見られた。

先輩も先輩だ。

こんな不気味な場所につれてきやがって。

「うーん・・・廃村ってわけじゃないみたい。」

「何でですか?」

俺がそう聞くと、

「幽霊が住んでるから。」

と、まぁ、先輩は懐中電灯であごらへんから照らせば完璧!みたいな顔で言った。

やめてくれ、そういう演出。

「また、変なこと言って、どうしたんすかぁ。」

Fが笑い、先輩も笑っていた。

俺だけ寒気を感じたのはなんでだ。

しばらく走っていて、村の中に入り込んだ。

あぶない。

直感が俺に悪寒を与える。

ここはヤバイ。

「せ、先輩・・・ちょっとまずいとおもうんですけど・・・」

俺は戸惑いがちに先輩に言った。

本当ははっきり言ったつもりなんだが、どうにも嫌な感じがして声にならない。

「ん?だってこっち、戻る近道だし。」

「先輩、こいつ、そういう類の感いいですから、従った方がいいですよ。」

「そっか、んじゃ、飛ばすか。」

そういって速度を上げた。

俺はそんなこと言ってない。

速度を上げろって意味じゃなくて、戻れって意味だ。

そういいかけたとき、車は横断歩道に差し掛かっていた。

その時、なにもない横断歩道を横切ったはずなのに大きな何かにぶつかったような感覚を覚えた。

先輩は反射的にブレーキを踏んだ。

俺はもう、微妙に感ずいてたから、あえて動揺する二人に何も言わなかった。

しばらく、Fが必死に俺に言葉を投げかけていたが、こたえる気にはなれなくて、黙っていた。

俺の言葉の意味を正しく組めなかったお前らが悪い。

そうしたら、二人は勝手に外に出て、勝手に悲鳴らしき情けない声を上げて帰ってきて、車を発進させた。

そのまま、すばらしい速度で車は村中の道を突破した。

俺はやっぱり何も言うことは出来なかった。

次の日、何を車で引いたか問いかけられたFは口をつぐんだまま、首を横に振っていた。

俺が声をかけると同時に、「お前、あんなもん、いつもみてんのか?」と縋り付かれてうんざりしたのは言うまでもない。

いつも見てたら気が変になるだろうが。

俺だってぼやけて見えるのとはっきり見えるのが居るんだよと想いながら、Fを引っぺがした。

まぁ、皆も廃村じゃなくても横断歩道には気をつけたほうがいいかもしれない。

幽霊も元は人間だしな。

 

怖い話投稿:ホラーテラー 零番さん  

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